【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第114回(後編)
2011/10/27
そんなことを言ってる場合じゃない。後半はタフな内容になった。川崎めちゃアグレッシブ。勘弁してください勘弁してください。勘弁してくださいの逆をとった14分、敵陣からすばやくボールを送り、左45度からブルーノ・ロペスの痛快ゴール。何と敵の決定機から15秒の速攻。センターサークル付近でボールを受けて勝負パスを送ったミシェウさんのセンスが光る。
追加点もカウンターからだった。GK武田の弾いたボールを山瀬功治と競った亜土夢が奪い、すかさずタテへ送る。これを全力疾走のミシェウさんが2人交わして、ゴール前へ駈け込んだブルーノへ送る。ブルーノはDFを抑えながらスライデイングで押し込む。これが武田のパンチングから14秒の速攻。
川崎は攻めながら「勘弁して」しまっていた。決定機を山のように作り、決めきれない。新潟の思惑がピタリとハマる。が、サッカーの神様はそうはすんなりとドラマを終わらせてくれない。
後半35分、2枚めのイエローで菊地直哉が退場。不注意と言っていいイエロー(試合が止まった後、ボールを蹴ってしまう)だった。ここから新潟ゴール裏は地獄の10何分を過ごす。川崎は得点感覚に秀でた小林悠が投入されて、バリバリ活気づいている。
勘弁してください。川崎は聞く耳を持たなかった。持たないよね、そりゃね。ミシェウに代えて木暮、ブルーノに代えて川又がピッチへ送り出される。執念。執念で守れ。ところが44分、ジュニーニョが1点返してくる。うわあぁぁ、これ、もしかして又、ロスタイム失点のパターンか。勝てないのか。ロスタイムは4分。松木安太郎さん流に言うところの「ふざけたロスタイム」。
このロスタイム4分の死戦が試合のハイライトだった。川崎には二度のゴールチャンスがあった。いずれもほぼやられたと観念するクラスのものだ。新潟は身体を張った。引き過ぎてる気がして不安だったが、命がけで失点を防ぐ。最後は酒井高徳がピッチサイドに倒れていたから9人だった。長かった。5分はあった。このロスタイムは後々、2011シーズンの伝説になるだろう。
死力をふりしぼった等々力J1初勝利! ジンクスを破った。16位浦和に勝ち点差6をつけた。が、それ以上の価値を持つ勝利だ。アルビレックス新潟の魂の勝利だ。気がつくとバックスタンド上層階が夕陽を浴びて、すっかりオレンジに染まっていた。
附記1、この日の等々力は陸前高田市の子供たち&ご父兄が招かれ、大変意義深いものがありました。又、場外には「AKB祭り」(秋の川崎バナナ祭り)の看板が立ち、爆笑を誘った。フロンターレの意欲的な取り組みに敬意を表します。
2、試合後、大中祐二さんと記者席で握手しました。大中さん、このところの苦闘がたたって胃をこわしてんだよね。すっかりやせてた。この日のロスタイムも胃に響いたと思うなぁ。
3、ご案内の通り、次節・福岡戦はサッカー講座企画でお邪魔します。散歩道単行本のサイン会みたいなふれこみだけど、勝ち運持ってる「大事な友達」を東京から連れて行きますよ。てか、正確には僕、前日入りで奴を出迎えるんだよな。土曜はサポリン主催の「えのきどナイト」で前夜祭する予定。
えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。
コラム「えのきどいちろうのアルビレックス散歩道」は、アルビレックス新潟公式サイト『モバイルアルビレックス』で、先行展開をさせていただいております。更新は公式携帯サイトで毎週木曜日に掲載した内容を、翌週木曜日に公式PCサイトで掲載するスケジュールとなります。えのきどさんがサポーターと同じ目線で見て、感じた等身大のコラムは、試合の感動が覚める前に、ぜひ公式携帯サイトでご覧ください!
追加点もカウンターからだった。GK武田の弾いたボールを山瀬功治と競った亜土夢が奪い、すかさずタテへ送る。これを全力疾走のミシェウさんが2人交わして、ゴール前へ駈け込んだブルーノへ送る。ブルーノはDFを抑えながらスライデイングで押し込む。これが武田のパンチングから14秒の速攻。
川崎は攻めながら「勘弁して」しまっていた。決定機を山のように作り、決めきれない。新潟の思惑がピタリとハマる。が、サッカーの神様はそうはすんなりとドラマを終わらせてくれない。
後半35分、2枚めのイエローで菊地直哉が退場。不注意と言っていいイエロー(試合が止まった後、ボールを蹴ってしまう)だった。ここから新潟ゴール裏は地獄の10何分を過ごす。川崎は得点感覚に秀でた小林悠が投入されて、バリバリ活気づいている。
勘弁してください。川崎は聞く耳を持たなかった。持たないよね、そりゃね。ミシェウに代えて木暮、ブルーノに代えて川又がピッチへ送り出される。執念。執念で守れ。ところが44分、ジュニーニョが1点返してくる。うわあぁぁ、これ、もしかして又、ロスタイム失点のパターンか。勝てないのか。ロスタイムは4分。松木安太郎さん流に言うところの「ふざけたロスタイム」。
このロスタイム4分の死戦が試合のハイライトだった。川崎には二度のゴールチャンスがあった。いずれもほぼやられたと観念するクラスのものだ。新潟は身体を張った。引き過ぎてる気がして不安だったが、命がけで失点を防ぐ。最後は酒井高徳がピッチサイドに倒れていたから9人だった。長かった。5分はあった。このロスタイムは後々、2011シーズンの伝説になるだろう。
死力をふりしぼった等々力J1初勝利! ジンクスを破った。16位浦和に勝ち点差6をつけた。が、それ以上の価値を持つ勝利だ。アルビレックス新潟の魂の勝利だ。気がつくとバックスタンド上層階が夕陽を浴びて、すっかりオレンジに染まっていた。
附記1、この日の等々力は陸前高田市の子供たち&ご父兄が招かれ、大変意義深いものがありました。又、場外には「AKB祭り」(秋の川崎バナナ祭り)の看板が立ち、爆笑を誘った。フロンターレの意欲的な取り組みに敬意を表します。
2、試合後、大中祐二さんと記者席で握手しました。大中さん、このところの苦闘がたたって胃をこわしてんだよね。すっかりやせてた。この日のロスタイムも胃に響いたと思うなぁ。
3、ご案内の通り、次節・福岡戦はサッカー講座企画でお邪魔します。散歩道単行本のサイン会みたいなふれこみだけど、勝ち運持ってる「大事な友達」を東京から連れて行きますよ。てか、正確には僕、前日入りで奴を出迎えるんだよな。土曜はサポリン主催の「えのきどナイト」で前夜祭する予定。
えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。
コラム「えのきどいちろうのアルビレックス散歩道」は、アルビレックス新潟公式サイト『モバイルアルビレックス』で、先行展開をさせていただいております。更新は公式携帯サイトで毎週木曜日に掲載した内容を、翌週木曜日に公式PCサイトで掲載するスケジュールとなります。えのきどさんがサポーターと同じ目線で見て、感じた等身大のコラムは、試合の感動が覚める前に、ぜひ公式携帯サイトでご覧ください!