【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第119回(前編)
2011/12/1
「生身のサッカー」
J1第32節、新潟×G大阪。
Jリーグも最終コーナーにさしかかった。「無事、J1残留を決めたい新潟」と「勝って(翌日、試合の組まれた首位・柏に)プレッシャーをかけたいガンバ」の一戦。ということでもあるが、事態に複雑な味わいを加えているのは両チームがともに天皇杯3回戦を敗れたばかりという点である。ガンバはJ2・水戸に敗れて、もうリーグ優勝以外の目標がなくなった。どうも遠藤保仁が内転筋の故障から復調してきたらしい。
僕はこの日、スタジアム内コンコースにて単行本サイン会を準備していただいていた。だもんで午前中の新幹線に乗ったんだが、試合についてはものすごく心配していた。一体、中2日でダメージから回復しているだろうか。気がかりなのはもちろん心理的なものだ。僕らはカンタンに「切り替えろ」なんて言葉にするけれど、サッカーは生身の人間がやっている。
ことによると惨憺たるさまを見ることになるかもしれない。そうであったらチームの生命が終わるときだ。監督さんが交代するような大事になり得るし、チーム作りを根本から見直さなくてはならない。アルビは死んだのか。生きているのか。大袈裟な物言いで恐縮だけど、煎じつめるとそういうことになる。新潟側から言えば試合のテーマは残留ではない。全く違う。「プライド オブ ニイガタ」を守ることだ。チームの魂を示す戦いだ。
試合前、サイン会に来てくれたサポーターのひとりひとりに、その意味を込めて「今日は勝ちましょう」「絶対勝ちましょう」と声をかけた。その程度しか僕にできることはない。目をまっすぐ見て気持ちを伝える。プロスポーツはもちろん全試合、勝利を目指すのが大前提だが、本当に何を失っても頑張らなきゃいけないときがある。それが今日じゃないかと思うのだ。「腕が折れても投げぬく」と野球のピッチャーが言うようなやつだ。
試合開始。たのむぜアルビレックス! と、これが実にテンションの高い、いい入りなんよ。見た瞬間、ホッとした。びりびりしびれるくらいの状態だ。ケータイで言えば全員、アンテナ3本立ってる。中盤つぶす。ブロックがつぶす。つぶすつぶす。つぶしまくって25分過ぎまで両軍、1本もシュートがなかったくらいだが、これは新潟の試合だ。又、オリンピック予選召集で酒井高徳、鈴木大輔欠場のところを内田、菊地がばりばりやっていた。特に菊地は(今季のガンバがカウンター狙いなので)超目立った。
得点は前半ロスタイム。カウンター気味に田中亜土夢に入れて、戻したところで三門雄大のミドル炸裂! 雨のビッグスワンがどっかーんと沸騰する。ゴールの後はみんな並んでゆりかごのパフォーマンス。このチームが死んだ? 1ミリもそんな気配ないじゃん。まぁ、天皇杯の敗戦は各々、本当に思うところあったのだと思う。それがあらわれた前半だった。これも又、生身の人間がやってることだなぁと思う。サッカーは奥が深いね。
後半もいい感じが続く。ガンバは選手を2枚代え、途中でシステムを3バックにする等、手を施してくるが、新潟の高い集中が切れない。それどころか3バックにしてあいまいになったキム・スンヨンのウラを亜土夢が狙っていた。ライン際をタテに送り、村上がしぶとくクロスを入れる。それが後半25分、ブルーノ・ロペスのヘディングゴールに結びつく。2点先制! ガンバの足元が崩れ、優勝が遠ざかっていく。
−後編に続く−
J1第32節、新潟×G大阪。
Jリーグも最終コーナーにさしかかった。「無事、J1残留を決めたい新潟」と「勝って(翌日、試合の組まれた首位・柏に)プレッシャーをかけたいガンバ」の一戦。ということでもあるが、事態に複雑な味わいを加えているのは両チームがともに天皇杯3回戦を敗れたばかりという点である。ガンバはJ2・水戸に敗れて、もうリーグ優勝以外の目標がなくなった。どうも遠藤保仁が内転筋の故障から復調してきたらしい。
僕はこの日、スタジアム内コンコースにて単行本サイン会を準備していただいていた。だもんで午前中の新幹線に乗ったんだが、試合についてはものすごく心配していた。一体、中2日でダメージから回復しているだろうか。気がかりなのはもちろん心理的なものだ。僕らはカンタンに「切り替えろ」なんて言葉にするけれど、サッカーは生身の人間がやっている。
ことによると惨憺たるさまを見ることになるかもしれない。そうであったらチームの生命が終わるときだ。監督さんが交代するような大事になり得るし、チーム作りを根本から見直さなくてはならない。アルビは死んだのか。生きているのか。大袈裟な物言いで恐縮だけど、煎じつめるとそういうことになる。新潟側から言えば試合のテーマは残留ではない。全く違う。「プライド オブ ニイガタ」を守ることだ。チームの魂を示す戦いだ。
試合前、サイン会に来てくれたサポーターのひとりひとりに、その意味を込めて「今日は勝ちましょう」「絶対勝ちましょう」と声をかけた。その程度しか僕にできることはない。目をまっすぐ見て気持ちを伝える。プロスポーツはもちろん全試合、勝利を目指すのが大前提だが、本当に何を失っても頑張らなきゃいけないときがある。それが今日じゃないかと思うのだ。「腕が折れても投げぬく」と野球のピッチャーが言うようなやつだ。
試合開始。たのむぜアルビレックス! と、これが実にテンションの高い、いい入りなんよ。見た瞬間、ホッとした。びりびりしびれるくらいの状態だ。ケータイで言えば全員、アンテナ3本立ってる。中盤つぶす。ブロックがつぶす。つぶすつぶす。つぶしまくって25分過ぎまで両軍、1本もシュートがなかったくらいだが、これは新潟の試合だ。又、オリンピック予選召集で酒井高徳、鈴木大輔欠場のところを内田、菊地がばりばりやっていた。特に菊地は(今季のガンバがカウンター狙いなので)超目立った。
得点は前半ロスタイム。カウンター気味に田中亜土夢に入れて、戻したところで三門雄大のミドル炸裂! 雨のビッグスワンがどっかーんと沸騰する。ゴールの後はみんな並んでゆりかごのパフォーマンス。このチームが死んだ? 1ミリもそんな気配ないじゃん。まぁ、天皇杯の敗戦は各々、本当に思うところあったのだと思う。それがあらわれた前半だった。これも又、生身の人間がやってることだなぁと思う。サッカーは奥が深いね。
後半もいい感じが続く。ガンバは選手を2枚代え、途中でシステムを3バックにする等、手を施してくるが、新潟の高い集中が切れない。それどころか3バックにしてあいまいになったキム・スンヨンのウラを亜土夢が狙っていた。ライン際をタテに送り、村上がしぶとくクロスを入れる。それが後半25分、ブルーノ・ロペスのヘディングゴールに結びつく。2点先制! ガンバの足元が崩れ、優勝が遠ざかっていく。
−後編に続く−