【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第123回
2012/3/29
「話せば長いことになる」
J1第2節、新潟×大宮。
話せば長いことになる。すいません、聞いてくれますか。読者にとってはスワン開幕だ。上越市の地すべりのニュースを案じるなか、(いや、だからこそ地すべりなのかもしれないが)春がやってきた。僕は苫小牧だ。厳寒の只中。スタッフを務める日光アイスバックスがプレーオフファイナル初戦を迎えていた。どう言えばいいか、「アイスホッケー界の日本シリーズ」だ。前身の古河電工から数えて90年近く、初めて優勝を狙う戦いをしている。
申し訳ないがスワン開幕は皆にまかせた。必ず追いつくからここは北海道へ帯同させてくれ。そしてアイスバックスは初戦をとった。ベンチ脇で声を枯らして、アルビの大宮戦逆転負けは夜、ホテルへ戻り、NHK-BS『Jリーグタイム』で知る。あぁ、両方揃って勝ったら素晴らしかったのに。
問題は今週の散歩道をどうやって書くかだった。5泊6日北海道の長逗留でスカパーが見れない。作戦はないだろうか。と、天の配剤か、ナビスコ札幌戦が火曜日に組まれている。エイヤード・丸山さんが札幌に前泊することが判明。DVDに焼いて持ってきてくれるという。これは何とかなるぞ。月曜夜、最終便で到着する丸山さんを新千歳空港で出迎えることになった。もし同便に乗り合わせたアルビサポがいれば、もれなくえのきどいちろうがお出迎えだ。
苫小牧発20時45分の道南バスでマイナス5℃の国道を行く。夜のウトナイ湖近くは人影がない。空港も人がまばらだ。丸山さんが出てきて、JR千歳線・南千歳駅まで話しながら帰る。大宮戦の後、スワンはお通夜みたいな空気だった由。車内でDVDを受け取った。南千歳からは逆方向だ。丸山さんはナビスコ戦前夜の札幌へ、僕はファイナル第3戦の待つ苫小牧へ。
ところが宿へ帰って、そのDVDが読み込まれないのだ。部屋の再生機は停止してしまい、PCは「このDVDは空です」と無情なことを表示する。あせった。アイスバックス土田広報のPCに入れると「このソフトにはアクセス権がありません」とロックがかかってるっぽいことになってる。誰か大宮戦の録画持ってるやつはこの辺にいないのか。深夜の苫小牧で進退きわまった。心当たりが「コンサドーレ札幌」しかなかった。ほら、ナビスコで当たるからスカウティング用に録画してるでしょ。だけど知り合いがいない。三浦監督時代だったらなぁ。
考えに考えて、帰りの飛行機を木曜日(つまり今日!)の早朝便に変更した。Jスポーツの再放送(木曜朝8時半~)に賭ける。妻に録画予約を頼み、可能な限り早く帰宅し、見てすぐ書く。どうあっても夕方にはアルビ栗原広報に原稿を送る。明けて火曜・春分の日、アルビはナビスコで今季初勝利を挙げ、アイスバックスは惜敗する。揃わないなぁ。プレーオフファイナルの舞台は週末、日光へ移る。僕は札幌へ移動して、知り合いのアルビサポご夫妻と狸小路で晩ごはんだ。
アルビサポご夫妻は懐かしい09年シーズンのナビスコ広島戦で、アストラムライン車内で声をかけたKさん夫妻。「あなたたちはいつか魂の揺れるような試合に出会う」。大宮戦、札幌戦の感想を聞いた。アイスバックスは1勝2敗で苫小牧シリーズを終え、王手をかけられたのだが、アルビの初勝利に乾杯できるのは気持ちが切り替えられていい。
翌水曜日は午後いちで札幌ドームへ入り、NHK-BSのロケだった。29日夜放送の『開幕前夜祭/プロ野球を楽しむ12の方法』。オープン戦を見ながら、12球団12人のファンが思い出等を語る。僕は当然、日ハムファン代表だ。ま、経費NHKもちで日ハム×ソフトバンクのオープン戦見せてくれるというのだから有難い仕事なのだが、もうひとつ素晴らしいのは「なるべくホームの試合で」という指定があったこと。
話を決めたのはセミファイナルで韓国へ行く直前だけど、うまくすれば往復エアーNHKもちでファイナルへ行ける。もう、これは貧乏ホッケーチームの取締役として、フォア・ザ・チームに徹するしかない。ひとり分、浮くじゃないか。プレーオフ遠征費の算段がホントに大変だった。そこで(21日のロケなのに)17日入りで飛行機をとってもらう。もちろん、苫小牧&札幌前泊の宿代はこっちで持つ。皆様の受信料を不正に使用していません。
と、いう5泊6日だった。いや、波乱万丈。アルビレックス新潟、日光アイスバックス、北海道日本ハムファイターズという僕の好きな3チームがほぼ近所に集結する「惑星直列」状態。北海道での戦績はアルビ1勝、アイスバックス1勝2敗、ファイターズ1勝とトータル3勝2敗の勝ち越し。が、問題はそこではないんだ。当「散歩道」が問題としなければならないのは北海道の戦績ではなく、J1第2節・大宮戦なのだ。もう話が長くて忘れてるかもしれないが、この文章の冒頭、「J1第2節、新潟×大宮」と書いてあったでしょ。
ものすごくビミョーなところだ。僕はキンキンに冷えた苫小牧駅バスターミナルで道南バスを待つとき、既にそれに気づいていた。こんなにして見るのは負けた試合だ。事実、今、5時半起きして家に帰り着き、Jスポーツ録画を見終えてみると、これがこっぴどく負けている。マジですかという負け方だ。いや、前半良かった、あそこでもっと点をとっていればと言うのは簡単だ。僕も「ここまで自分も頑張ったんだ、うっかり勝ってないかな」と思いながら録画を見ていた。
負けてました。ラファエルがずどーん。カルリーニョスってボランチが素晴らしいね。あれは三門の足がとまって、つききれなくなって自由にやられたのか。まぁ、切り替えてナビスコ札幌戦に向かうしかないでしょう。相手もメンバーを落してくるだろうけど、ひとつ勝つことでムードが変わる気がします。勝つんじゃないのかなぁ。
附記1、しかし、黒河貴矢選手のケガは残念ですね。東口に続いて黒河じゃ、アルビは又もGK難のシーズン序盤です。オザーさん頑張れ。ヤスヒロ頑張れ。
2、狸小路でKさんご夫妻と意見がまとまったんですけど、小谷野素晴らしいですね。こんないい選手が鹿島に埋もれてたんだなぁ。試合に出ることでもっと潜在能力が発揮されると思います。てか、試合出ないと伸びない。新潟に来て運がひらけるんじゃないですか。
3、スワン開幕は雨とはいえ、「ホームの気迫」が伝わってきました。だからこそ勝ちたかった。ミシェウさんの「家庭の事情」が気がかりですね。
えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。
アルビレックス新潟からのお知らせコラム「えのきどいちろうのアルビレックス散歩道」は、アルビレックス新潟公式サイト『モバイルアルビレックス』で、先行展開をさせていただいております。更新は公式携帯サイトで毎週木曜日に掲載した内容を、翌週木曜日に公式PCサイトで掲載するスケジュールとなります。えのきどさんがサポーターと同じ目線で見て、感じた等身大のコラムは、試合の感動が覚める前に、ぜひ公式携帯サイトでご覧ください!
J1第2節、新潟×大宮。
話せば長いことになる。すいません、聞いてくれますか。読者にとってはスワン開幕だ。上越市の地すべりのニュースを案じるなか、(いや、だからこそ地すべりなのかもしれないが)春がやってきた。僕は苫小牧だ。厳寒の只中。スタッフを務める日光アイスバックスがプレーオフファイナル初戦を迎えていた。どう言えばいいか、「アイスホッケー界の日本シリーズ」だ。前身の古河電工から数えて90年近く、初めて優勝を狙う戦いをしている。
申し訳ないがスワン開幕は皆にまかせた。必ず追いつくからここは北海道へ帯同させてくれ。そしてアイスバックスは初戦をとった。ベンチ脇で声を枯らして、アルビの大宮戦逆転負けは夜、ホテルへ戻り、NHK-BS『Jリーグタイム』で知る。あぁ、両方揃って勝ったら素晴らしかったのに。
問題は今週の散歩道をどうやって書くかだった。5泊6日北海道の長逗留でスカパーが見れない。作戦はないだろうか。と、天の配剤か、ナビスコ札幌戦が火曜日に組まれている。エイヤード・丸山さんが札幌に前泊することが判明。DVDに焼いて持ってきてくれるという。これは何とかなるぞ。月曜夜、最終便で到着する丸山さんを新千歳空港で出迎えることになった。もし同便に乗り合わせたアルビサポがいれば、もれなくえのきどいちろうがお出迎えだ。
苫小牧発20時45分の道南バスでマイナス5℃の国道を行く。夜のウトナイ湖近くは人影がない。空港も人がまばらだ。丸山さんが出てきて、JR千歳線・南千歳駅まで話しながら帰る。大宮戦の後、スワンはお通夜みたいな空気だった由。車内でDVDを受け取った。南千歳からは逆方向だ。丸山さんはナビスコ戦前夜の札幌へ、僕はファイナル第3戦の待つ苫小牧へ。
ところが宿へ帰って、そのDVDが読み込まれないのだ。部屋の再生機は停止してしまい、PCは「このDVDは空です」と無情なことを表示する。あせった。アイスバックス土田広報のPCに入れると「このソフトにはアクセス権がありません」とロックがかかってるっぽいことになってる。誰か大宮戦の録画持ってるやつはこの辺にいないのか。深夜の苫小牧で進退きわまった。心当たりが「コンサドーレ札幌」しかなかった。ほら、ナビスコで当たるからスカウティング用に録画してるでしょ。だけど知り合いがいない。三浦監督時代だったらなぁ。
考えに考えて、帰りの飛行機を木曜日(つまり今日!)の早朝便に変更した。Jスポーツの再放送(木曜朝8時半~)に賭ける。妻に録画予約を頼み、可能な限り早く帰宅し、見てすぐ書く。どうあっても夕方にはアルビ栗原広報に原稿を送る。明けて火曜・春分の日、アルビはナビスコで今季初勝利を挙げ、アイスバックスは惜敗する。揃わないなぁ。プレーオフファイナルの舞台は週末、日光へ移る。僕は札幌へ移動して、知り合いのアルビサポご夫妻と狸小路で晩ごはんだ。
アルビサポご夫妻は懐かしい09年シーズンのナビスコ広島戦で、アストラムライン車内で声をかけたKさん夫妻。「あなたたちはいつか魂の揺れるような試合に出会う」。大宮戦、札幌戦の感想を聞いた。アイスバックスは1勝2敗で苫小牧シリーズを終え、王手をかけられたのだが、アルビの初勝利に乾杯できるのは気持ちが切り替えられていい。
翌水曜日は午後いちで札幌ドームへ入り、NHK-BSのロケだった。29日夜放送の『開幕前夜祭/プロ野球を楽しむ12の方法』。オープン戦を見ながら、12球団12人のファンが思い出等を語る。僕は当然、日ハムファン代表だ。ま、経費NHKもちで日ハム×ソフトバンクのオープン戦見せてくれるというのだから有難い仕事なのだが、もうひとつ素晴らしいのは「なるべくホームの試合で」という指定があったこと。
話を決めたのはセミファイナルで韓国へ行く直前だけど、うまくすれば往復エアーNHKもちでファイナルへ行ける。もう、これは貧乏ホッケーチームの取締役として、フォア・ザ・チームに徹するしかない。ひとり分、浮くじゃないか。プレーオフ遠征費の算段がホントに大変だった。そこで(21日のロケなのに)17日入りで飛行機をとってもらう。もちろん、苫小牧&札幌前泊の宿代はこっちで持つ。皆様の受信料を不正に使用していません。
と、いう5泊6日だった。いや、波乱万丈。アルビレックス新潟、日光アイスバックス、北海道日本ハムファイターズという僕の好きな3チームがほぼ近所に集結する「惑星直列」状態。北海道での戦績はアルビ1勝、アイスバックス1勝2敗、ファイターズ1勝とトータル3勝2敗の勝ち越し。が、問題はそこではないんだ。当「散歩道」が問題としなければならないのは北海道の戦績ではなく、J1第2節・大宮戦なのだ。もう話が長くて忘れてるかもしれないが、この文章の冒頭、「J1第2節、新潟×大宮」と書いてあったでしょ。
ものすごくビミョーなところだ。僕はキンキンに冷えた苫小牧駅バスターミナルで道南バスを待つとき、既にそれに気づいていた。こんなにして見るのは負けた試合だ。事実、今、5時半起きして家に帰り着き、Jスポーツ録画を見終えてみると、これがこっぴどく負けている。マジですかという負け方だ。いや、前半良かった、あそこでもっと点をとっていればと言うのは簡単だ。僕も「ここまで自分も頑張ったんだ、うっかり勝ってないかな」と思いながら録画を見ていた。
負けてました。ラファエルがずどーん。カルリーニョスってボランチが素晴らしいね。あれは三門の足がとまって、つききれなくなって自由にやられたのか。まぁ、切り替えてナビスコ札幌戦に向かうしかないでしょう。相手もメンバーを落してくるだろうけど、ひとつ勝つことでムードが変わる気がします。勝つんじゃないのかなぁ。
附記1、しかし、黒河貴矢選手のケガは残念ですね。東口に続いて黒河じゃ、アルビは又もGK難のシーズン序盤です。オザーさん頑張れ。ヤスヒロ頑張れ。
2、狸小路でKさんご夫妻と意見がまとまったんですけど、小谷野素晴らしいですね。こんないい選手が鹿島に埋もれてたんだなぁ。試合に出ることでもっと潜在能力が発揮されると思います。てか、試合出ないと伸びない。新潟に来て運がひらけるんじゃないですか。
3、スワン開幕は雨とはいえ、「ホームの気迫」が伝わってきました。だからこそ勝ちたかった。ミシェウさんの「家庭の事情」が気がかりですね。
えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。
アルビレックス新潟からのお知らせコラム「えのきどいちろうのアルビレックス散歩道」は、アルビレックス新潟公式サイト『モバイルアルビレックス』で、先行展開をさせていただいております。更新は公式携帯サイトで毎週木曜日に掲載した内容を、翌週木曜日に公式PCサイトで掲載するスケジュールとなります。えのきどさんがサポーターと同じ目線で見て、感じた等身大のコラムは、試合の感動が覚める前に、ぜひ公式携帯サイトでご覧ください!
