【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第165回
2013/4/11
「最後のとこ」
J1第4節・新潟×浦和。
ビッグスワン寒かったね~。ダウンコート持ってけばよかった。試合後、完全に凍えてて指先の感覚が戻らない。あと関節や筋肉が固まって歩くのがギクシャクした。サッカーってかなり寒くても前半はもつんだよね。後半、身体が冷えきってからが寒い。試合終盤、マルシオに追加点とられたでしょう。気持ちの問題もあるけど、あそこからの時間帯が特につらかった。
評価が難しい試合だ。読者はどうご覧になりましたか? スコアは0対2。4節消化して勝ち点1は一応、最下位。よくありませんね。では、内容はどうだったかというと結構やれてた感じもある。押してた時間帯もあるんじゃないかなぁと思ってネットを見てみると、浦和の選手コメントでも持ち上げられてるし、何より敵サポが「新潟に支配された」なんてブログに書いてくれてる。
いいのか悪いのか。いいところは確かにあったと思うけれど、結果を見ると0対2で負けてるし、そんなもんを「いい」と言ってしまったらサッカーで「悪い」って一体、何だろうということにもなりかねないし。といって期待は持たせてくれる試合だったし、いやいや、期待を裏切られるシーンを見たし、うーん、どうなんだろうなぁ、という感じがありませんか?
僕の見解をいうと完敗です。ちょっと現時点ではどうにもならない差を感じた。善戦はしたと思います。もしかすると最善を尽くしたかもわかんない。いや、僕は浦和がいいチームになっててびっくりです。こりゃ今季の優勝候補だなぁ。バックアップも含め、メンバーが充実している。やろうとしてることに駒がいる。バランスがいい。過去見てきた浦和レッズでいちばん柔軟性を感じる。
まぁ、試合は要所を締められた感じですね。新潟は入りがすごく良くて、非常に可能性を感じたんだけど、逆にセットプレーで失点してしまう。で、浦和のリズムにもってかれる。立ち上がり、向こうがもっとあわててくれたら勝機があったんだけど、うまく行かないね。
だけど、新潟も本当に悪くなかった。前半はあっという間に過ぎたなぁ。それだけやり合ってたのが面白かったんだ。互角といえば互角。互角以上のとこもあった。いい位置で奪う。攻め込んで崩しにいく。まぁ、だからスコアだけじゃ伝わらないものもあったんだ。少なくともサッカーの魅力の一端は攻防のなかで示せていた。
足りなかったのはゴールだ。これはまぁ、ゴールチャンス自体が少ない試合だったんだけど、皆無ではなかった。決めていれば試合が動かせた。ブルーノ・ロペス砲は未だ不発だ。「サッカーの魅力」という話なら最大のものが示せていないのだ。
これはブルーノ本人も苦しいだろうが、チームも苦しい。フィニッシャーが決めることで攻撃は完成するからだ。この試合は田中達也が初めて古巣とぶつかる試合で、彼のゴールが注目された。たぶん浦和サポも槙野が先制し、達也が1点返し、原口が決勝点を決めるようなのが理想だったろう。だけど、達也はフィニッシャーの動きをしていない。フィニッシャーを助ける動きだ。
崩しの場面で「成岡巧いなぁ」と何度も思った。成岡は状態が上がっているね。あとレオ・シルバの奪取力が素晴しかった。ここにホットラインの予感がある。達也も含めてあとちょっとなんだよ。あとちょっとのところまで来ている。
まぁ、だけど最後のとこがね、浦和のほうが迫力あるんだよ。まぁ、敵の人数揃ってて、崩しにいくとするでしょ。大概の場合、バスケみたいな感じになるね。相手の外でまわして、ギャップを見つけようとする。誰かが深く入り込むタイミングを探る。これが勇気がないと火のついた爆弾を仲間内でまわしてるみたいになるよね。
爆弾を押しつけあっている。押しつける相手を探す。これは責任とらないってことだ。か、誰かに責任持ってもらいたいんだ。浦和は反射的に仕掛けにいくんだね。あ、結果、ゴールが決まるにしても決まらないにしてもだよ。勝負にいく。勝負にいく気マンマン。
そのマンマン感だなぁ、今、欲しい感覚は。誰も苦しんでるとこなんて見たくないでしょ。頑張ってないより頑張ってるほうがいいけど、頑張ってるとこが見どころって「善戦」でしかないじゃん。僕はね、サッカーって積極的なもんだと思うのよ。火のついた爆弾があるなら敵ゴールにぶち込むもんだと思うのよ。
「精度」を上げるみたいなイメージじゃないんだよなぁ。そりゃ「精度」も上がってほしいけど。何かそういうチマチマ微調整する感じじゃない。アッタッキングサードで意思を持って仕掛けにいくだけで、色々好転するんじゃなかろうか。という感想でした。
附記1、ナビスコカップ、セレッソ戦勝った~!! 敵に退場者が出て恵まれたとはいえ、とにかく今季初勝利ですね。逆転勝利ってとこもいい。岡本GJ!!
2、月が替わってツキも変わる。4月は逆襲ですよ。
3、前回あんなに書いたのに寝坊して海老家に行けませんでした。もう、僕は3月は振り返らない。
えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。
アルビレックス新潟からのお知らせコラム「えのきどいちろうのアルビレックス散歩道」は、アルビレックス新潟公式サイト『モバイルアルビレックス』で、先行展開をさせていただいております。更新は公式携帯サイトで毎週木曜日に掲載した内容を、翌週木曜日に公式PCサイトで掲載するスケジュールとなります。えのきどさんがサポーターと同じ目線で見て、感じた等身大のコラムは、試合の感動が覚める前に、ぜひ公式携帯サイトでご覧ください!

J1第4節・新潟×浦和。
ビッグスワン寒かったね~。ダウンコート持ってけばよかった。試合後、完全に凍えてて指先の感覚が戻らない。あと関節や筋肉が固まって歩くのがギクシャクした。サッカーってかなり寒くても前半はもつんだよね。後半、身体が冷えきってからが寒い。試合終盤、マルシオに追加点とられたでしょう。気持ちの問題もあるけど、あそこからの時間帯が特につらかった。
評価が難しい試合だ。読者はどうご覧になりましたか? スコアは0対2。4節消化して勝ち点1は一応、最下位。よくありませんね。では、内容はどうだったかというと結構やれてた感じもある。押してた時間帯もあるんじゃないかなぁと思ってネットを見てみると、浦和の選手コメントでも持ち上げられてるし、何より敵サポが「新潟に支配された」なんてブログに書いてくれてる。
いいのか悪いのか。いいところは確かにあったと思うけれど、結果を見ると0対2で負けてるし、そんなもんを「いい」と言ってしまったらサッカーで「悪い」って一体、何だろうということにもなりかねないし。といって期待は持たせてくれる試合だったし、いやいや、期待を裏切られるシーンを見たし、うーん、どうなんだろうなぁ、という感じがありませんか?
僕の見解をいうと完敗です。ちょっと現時点ではどうにもならない差を感じた。善戦はしたと思います。もしかすると最善を尽くしたかもわかんない。いや、僕は浦和がいいチームになっててびっくりです。こりゃ今季の優勝候補だなぁ。バックアップも含め、メンバーが充実している。やろうとしてることに駒がいる。バランスがいい。過去見てきた浦和レッズでいちばん柔軟性を感じる。
まぁ、試合は要所を締められた感じですね。新潟は入りがすごく良くて、非常に可能性を感じたんだけど、逆にセットプレーで失点してしまう。で、浦和のリズムにもってかれる。立ち上がり、向こうがもっとあわててくれたら勝機があったんだけど、うまく行かないね。
だけど、新潟も本当に悪くなかった。前半はあっという間に過ぎたなぁ。それだけやり合ってたのが面白かったんだ。互角といえば互角。互角以上のとこもあった。いい位置で奪う。攻め込んで崩しにいく。まぁ、だからスコアだけじゃ伝わらないものもあったんだ。少なくともサッカーの魅力の一端は攻防のなかで示せていた。
足りなかったのはゴールだ。これはまぁ、ゴールチャンス自体が少ない試合だったんだけど、皆無ではなかった。決めていれば試合が動かせた。ブルーノ・ロペス砲は未だ不発だ。「サッカーの魅力」という話なら最大のものが示せていないのだ。
これはブルーノ本人も苦しいだろうが、チームも苦しい。フィニッシャーが決めることで攻撃は完成するからだ。この試合は田中達也が初めて古巣とぶつかる試合で、彼のゴールが注目された。たぶん浦和サポも槙野が先制し、達也が1点返し、原口が決勝点を決めるようなのが理想だったろう。だけど、達也はフィニッシャーの動きをしていない。フィニッシャーを助ける動きだ。
崩しの場面で「成岡巧いなぁ」と何度も思った。成岡は状態が上がっているね。あとレオ・シルバの奪取力が素晴しかった。ここにホットラインの予感がある。達也も含めてあとちょっとなんだよ。あとちょっとのところまで来ている。
まぁ、だけど最後のとこがね、浦和のほうが迫力あるんだよ。まぁ、敵の人数揃ってて、崩しにいくとするでしょ。大概の場合、バスケみたいな感じになるね。相手の外でまわして、ギャップを見つけようとする。誰かが深く入り込むタイミングを探る。これが勇気がないと火のついた爆弾を仲間内でまわしてるみたいになるよね。
爆弾を押しつけあっている。押しつける相手を探す。これは責任とらないってことだ。か、誰かに責任持ってもらいたいんだ。浦和は反射的に仕掛けにいくんだね。あ、結果、ゴールが決まるにしても決まらないにしてもだよ。勝負にいく。勝負にいく気マンマン。
そのマンマン感だなぁ、今、欲しい感覚は。誰も苦しんでるとこなんて見たくないでしょ。頑張ってないより頑張ってるほうがいいけど、頑張ってるとこが見どころって「善戦」でしかないじゃん。僕はね、サッカーって積極的なもんだと思うのよ。火のついた爆弾があるなら敵ゴールにぶち込むもんだと思うのよ。
「精度」を上げるみたいなイメージじゃないんだよなぁ。そりゃ「精度」も上がってほしいけど。何かそういうチマチマ微調整する感じじゃない。アッタッキングサードで意思を持って仕掛けにいくだけで、色々好転するんじゃなかろうか。という感想でした。
附記1、ナビスコカップ、セレッソ戦勝った~!! 敵に退場者が出て恵まれたとはいえ、とにかく今季初勝利ですね。逆転勝利ってとこもいい。岡本GJ!!
2、月が替わってツキも変わる。4月は逆襲ですよ。
3、前回あんなに書いたのに寝坊して海老家に行けませんでした。もう、僕は3月は振り返らない。
えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。
アルビレックス新潟からのお知らせコラム「えのきどいちろうのアルビレックス散歩道」は、アルビレックス新潟公式サイト『モバイルアルビレックス』で、先行展開をさせていただいております。更新は公式携帯サイトで毎週木曜日に掲載した内容を、翌週木曜日に公式PCサイトで掲載するスケジュールとなります。えのきどさんがサポーターと同じ目線で見て、感じた等身大のコラムは、試合の感動が覚める前に、ぜひ公式携帯サイトでご覧ください!
