【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第170回
2013/5/16
「ケンゴ祭り」
J1第9節、清水×新潟。
GWシリーズ第2弾、憲法記念日のアウェー戦だ。快晴の日本平はくっきり富士山も見えて気分爽快。プレス受付でもらったエスパルスのマッチデープログラム、ゴトビ監督の文章に笑ってしまった。
「ゴールデンウィークに、ゴールデンなファン、サポーターと一緒に、ゴールデンなパフォーマンスを発揮し、今日もゴールデンな結果を出していきたいと思います!」(『フロム・マネージャー』より)
思えば去年、柳下さんに監督が代わって、試合後の会見で「(監督とチームの)ハネムーン期間」という名言を残したのもゴトビ監督だった。出身地のイランよりも国籍を持つアメリカっぽいジョークのセンスを感じる。まぁ、エスパルスは開幕からしばらく苦戦したが、4月は無敗(公式戦4勝2分)の好調ぶりだ。「今日もゴールデンな結果を」のノリノリ加減にそれを読み取るべきか。
で、試合は前半、清水の寄せが早くて難儀だった。試合後の柳下さんのコメントにあるようにこっちも「少し前に急ぎすぎたり、落ち着きがなかったり」したのかもしれないが、攻めが最後まで作れない。両軍ともにプレッシングサッカーなので目まぐるしかった。互角のつばぜり合いが続いたが、強いて言えば清水に分があっただろうか。
それが後半になって一転する。柳下さんは「エスパルスの選手が少し止まっているように見えた」と語る。新潟の入りは非常に良くて、後半7分には川又堅碁の待望の「J1リーグ戦初ゴール」が生まれる。俺、記者席なのに「来たぁぁーっ」と絶叫していたよ。右サイドからクロスを供給した川口尚紀のセンスも最高、競り勝って決めたケンゴの強さも最高。気持ちのゴールだよね。チームのムードがグッと上がった。
6分後(後半13分)、成岡翔がセカンドボールを落ち着いて決めて、「スタメン時のFWで2点先行」(正確にはこの時点で成岡はMFに下がっていたが)という、いやもう、こっちが「ゴールデンな結果」でしょう。だけど、とにかくケンゴだよ。ケンゴのゴールはチーム全体がもたらしたもので、その一瞬だけ切り取るのでなく、これまで費やしてきた時間だったり、試合自体の流れを考慮に入れなきゃいけないと思う。思うけど、一瞬は偉大だ。空気を変えてしまう。一体、あんなにチームを上げてしまえるゴールって何だろうか。
後半39分にセットプレーから失点(得点者・平岡康裕)し、守備面の課題を持ち越すことになったが、はるばる日本平まで出かけた「ゴールデンなファン、サポーター」は大満足だったろう。待望の「ケンゴ劇場」が幕を開けたのだ。
J1第10節、新潟×甲府。
さぁ、そうなるとホームの観客にも「ケンゴ劇場」をお披露目せずばなるまい。こどもの日の振替休日、5月6日はGW最終日だ。川中島ダービーとカードもいい。ビッグスワンは試合前から期待感に包まれた。僕は『プレビュー』誌に(清水戦の前の〆切だったが)「ケンゴ劇場」のことを書いた。一昨年、何度も繰り返した「はんにゃむ~ほんにゃむ~」の予言を書いた。今日、決めるであ~ろ~う。
試合は完全な新潟ペース。90分通じて主導権を握ったといっていい。が、先に失点してしまう(前半23分、得点者・佐々木翔)。折から降りだした雨が不安なムードをあおる。又、このパターンか。いい感じで攻めても決めきれず、わずかなスキを突かれて失点するのか。「あのとき決めていれば」と振り返るしかないのか。
その空気を川又堅碁が変えた。後半10分、田中亜土夢が左サイドからクロス、土屋征夫に競り勝ったケンゴが2試合連続ゴール! もう、今まで決まらなかったほうが不思議に思えるナイスヘディングだ。スタジアムはお祭り騒ぎになる。わっしょいわっしょい、ケンゴ祭りだ。この試合もらった。
そしたら、もらわなかったんだね。もらい損ね。もう最後までもらいそうな雰囲気あったんだけどなぁ。もらっちゃっていいと思いますよ。もらっちゃって新潟県内では誰も困らない。
だから、この試合は「勝ち切れなかった」ことが反省材料だね。誰よりもそのことは川又堅碁が試合後、コメントしている。ただこれまでずっとヤキモキさせてきたホームの観客に、ケンゴがひとつ恩返しできた。ホントに素晴しい出来事だね。
開幕戦以来の課題「試合のペースを握っても勝ち切れない」は依然、クリアできていない。初の連勝の機会を逃がしてしまった。まぁ、それはそうなんだけどね、僕はケンゴがきっかけをつかんだことを前向きにとらえたい。チームはだんだん良くなってるよ。
附記1、清水戦は「くれよんバスツアー」参加者の方、大変でしたね。GWは渋滞が読めないからすんごい余裕を持って出発&到着だった。日本平でキックオフまで半日くらい待ったんですよね? 快晴でマジよかった。わっしょいわっしょい。
2、甲府戦は雨予報のせいもあって3万人に届かずでした。GWの動員もっと欲しいですね。清水に勝って、川中島ダービーはもっと行く気がしてたんだけどな。わっしょいわっしょい。
3、ここから中断期間までがすごい大事です。勝ち点を伸ばしておきたい。わっしょいわっしょい。
えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。
アルビレックス新潟からのお知らせコラム「えのきどいちろうのアルビレックス散歩道」は、アルビレックス新潟公式サイト『モバイルアルビレックス』で、先行展開をさせていただいております。更新は公式携帯サイトで毎週木曜日に掲載した内容を、翌週木曜日に公式PCサイトで掲載するスケジュールとなります。えのきどさんがサポーターと同じ目線で見て、感じた等身大のコラムは、試合の感動が覚める前に、ぜひ公式携帯サイトでご覧ください!
J1第9節、清水×新潟。
GWシリーズ第2弾、憲法記念日のアウェー戦だ。快晴の日本平はくっきり富士山も見えて気分爽快。プレス受付でもらったエスパルスのマッチデープログラム、ゴトビ監督の文章に笑ってしまった。
「ゴールデンウィークに、ゴールデンなファン、サポーターと一緒に、ゴールデンなパフォーマンスを発揮し、今日もゴールデンな結果を出していきたいと思います!」(『フロム・マネージャー』より)
思えば去年、柳下さんに監督が代わって、試合後の会見で「(監督とチームの)ハネムーン期間」という名言を残したのもゴトビ監督だった。出身地のイランよりも国籍を持つアメリカっぽいジョークのセンスを感じる。まぁ、エスパルスは開幕からしばらく苦戦したが、4月は無敗(公式戦4勝2分)の好調ぶりだ。「今日もゴールデンな結果を」のノリノリ加減にそれを読み取るべきか。
で、試合は前半、清水の寄せが早くて難儀だった。試合後の柳下さんのコメントにあるようにこっちも「少し前に急ぎすぎたり、落ち着きがなかったり」したのかもしれないが、攻めが最後まで作れない。両軍ともにプレッシングサッカーなので目まぐるしかった。互角のつばぜり合いが続いたが、強いて言えば清水に分があっただろうか。
それが後半になって一転する。柳下さんは「エスパルスの選手が少し止まっているように見えた」と語る。新潟の入りは非常に良くて、後半7分には川又堅碁の待望の「J1リーグ戦初ゴール」が生まれる。俺、記者席なのに「来たぁぁーっ」と絶叫していたよ。右サイドからクロスを供給した川口尚紀のセンスも最高、競り勝って決めたケンゴの強さも最高。気持ちのゴールだよね。チームのムードがグッと上がった。
6分後(後半13分)、成岡翔がセカンドボールを落ち着いて決めて、「スタメン時のFWで2点先行」(正確にはこの時点で成岡はMFに下がっていたが)という、いやもう、こっちが「ゴールデンな結果」でしょう。だけど、とにかくケンゴだよ。ケンゴのゴールはチーム全体がもたらしたもので、その一瞬だけ切り取るのでなく、これまで費やしてきた時間だったり、試合自体の流れを考慮に入れなきゃいけないと思う。思うけど、一瞬は偉大だ。空気を変えてしまう。一体、あんなにチームを上げてしまえるゴールって何だろうか。
後半39分にセットプレーから失点(得点者・平岡康裕)し、守備面の課題を持ち越すことになったが、はるばる日本平まで出かけた「ゴールデンなファン、サポーター」は大満足だったろう。待望の「ケンゴ劇場」が幕を開けたのだ。
J1第10節、新潟×甲府。
さぁ、そうなるとホームの観客にも「ケンゴ劇場」をお披露目せずばなるまい。こどもの日の振替休日、5月6日はGW最終日だ。川中島ダービーとカードもいい。ビッグスワンは試合前から期待感に包まれた。僕は『プレビュー』誌に(清水戦の前の〆切だったが)「ケンゴ劇場」のことを書いた。一昨年、何度も繰り返した「はんにゃむ~ほんにゃむ~」の予言を書いた。今日、決めるであ~ろ~う。
試合は完全な新潟ペース。90分通じて主導権を握ったといっていい。が、先に失点してしまう(前半23分、得点者・佐々木翔)。折から降りだした雨が不安なムードをあおる。又、このパターンか。いい感じで攻めても決めきれず、わずかなスキを突かれて失点するのか。「あのとき決めていれば」と振り返るしかないのか。
その空気を川又堅碁が変えた。後半10分、田中亜土夢が左サイドからクロス、土屋征夫に競り勝ったケンゴが2試合連続ゴール! もう、今まで決まらなかったほうが不思議に思えるナイスヘディングだ。スタジアムはお祭り騒ぎになる。わっしょいわっしょい、ケンゴ祭りだ。この試合もらった。
そしたら、もらわなかったんだね。もらい損ね。もう最後までもらいそうな雰囲気あったんだけどなぁ。もらっちゃっていいと思いますよ。もらっちゃって新潟県内では誰も困らない。
だから、この試合は「勝ち切れなかった」ことが反省材料だね。誰よりもそのことは川又堅碁が試合後、コメントしている。ただこれまでずっとヤキモキさせてきたホームの観客に、ケンゴがひとつ恩返しできた。ホントに素晴しい出来事だね。
開幕戦以来の課題「試合のペースを握っても勝ち切れない」は依然、クリアできていない。初の連勝の機会を逃がしてしまった。まぁ、それはそうなんだけどね、僕はケンゴがきっかけをつかんだことを前向きにとらえたい。チームはだんだん良くなってるよ。
附記1、清水戦は「くれよんバスツアー」参加者の方、大変でしたね。GWは渋滞が読めないからすんごい余裕を持って出発&到着だった。日本平でキックオフまで半日くらい待ったんですよね? 快晴でマジよかった。わっしょいわっしょい。
2、甲府戦は雨予報のせいもあって3万人に届かずでした。GWの動員もっと欲しいですね。清水に勝って、川中島ダービーはもっと行く気がしてたんだけどな。わっしょいわっしょい。
3、ここから中断期間までがすごい大事です。勝ち点を伸ばしておきたい。わっしょいわっしょい。
えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。
アルビレックス新潟からのお知らせコラム「えのきどいちろうのアルビレックス散歩道」は、アルビレックス新潟公式サイト『モバイルアルビレックス』で、先行展開をさせていただいております。更新は公式携帯サイトで毎週木曜日に掲載した内容を、翌週木曜日に公式PCサイトで掲載するスケジュールとなります。えのきどさんがサポーターと同じ目線で見て、感じた等身大のコラムは、試合の感動が覚める前に、ぜひ公式携帯サイトでご覧ください!
