【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第210回
2014/5/8
「GW連戦スタート」
J1第9節、徳島×新潟。
初めてポカスタ(鳴門市・ポカリスエットスタジアム)を訪ねたのだ。僕は徳島とは縁があって、20代の頃、タウン情報誌『あわわ』に連載を持っていた。同誌は現在、フリーマガジンに変貌しているが、当時は「徳島市内では『週刊文春』くらい売れている」(初代編集長・住友達也さん)とめちゃめちゃ勢いに乗っていた。思えば当コラムの原型っぽい遠隔地連載に僕はもうトライしてたことになる。但し、スポーツものじゃなかったなぁ。
徳島ヴォルティスというと大杉漣さんだ。大杉さんはすごい人で、『NONFIX』(フジテレビ)が日光アイスバックスを取り上げた回でナレーターを担当したんですよ。で、自宅でナレーション台本の下読みをしていて、貧乏ホッケーチームの奮闘努力に号泣してしまったそうだ。で、翌日、ファンクラブ会員申し込みのFAXが届いた。そしてアイスアリーナにもぶらっとひとりで姿を現す。それだけじゃなく『笑っていいとも!』出演時には、100人アンケートで「僕はこういういきさつで日光アイスバックスの会員になったんですが、アイスホッケーを生で見たことがある人?」とやってくれた。アイスバックスの営業担当は手を合わせてました。
大杉さんは徳島の出身で、かつ熱心なサッカーファン&現役プレーヤーだからヴォルティスをサポートするのは実に自然なことだ。僕は色んなスタジアムで大杉さんと出くわしている。一度、J2の草津×徳島(正田醤油スタジアム)で鉢合わせしたときはびっくりしたなぁ。「お、大杉さん!」って声かけたら向こうも「え、何で?」だって。だから本物ですよ。もちろん一般客としてチケットを買って見ていた。やっぱり何事も人を介して印象がつくられるから、僕は(住友達也、大杉漣って2人のおかげで)徳島にシンパシーを持ってますね。
で、「四国初のJ1」チームは試合前の時点で8連敗中、この日負けたら(延長戦が廃止された2003年以降の)J1開幕連敗のワースト記録「9」に並んでしまう状況だった。まぁ、ワーストタイまでは勘弁してもらって、単独の新記録のほうは次節、どうにか回避していただこう。新潟だって勝利に飢えてるところだ。勝って上位戦線に踏みとどまる必要がある。でも、心配だなぁ。こういうカードにからきし弱いんだよ。去年もホームで大分に敗れた。強きをくじき、弱きを助けすぎる(?)傾向があるんだなぁ。
徳島とは今季、ナビスコ初戦(3月19日)で当たっている。その試合は鈴木武蔵の活躍もあり、あっさり退けている。その後はどうかというと、TVでここ何節かをチェックしたが、負けが続いてちょっと萎縮してるというか、心理的ダメージがあるようだ。サッカーはメンタルの部分が大きいから、怖気づいたら本来の良さまでが消えてなくなる。逆に新潟サイドから言えばここがつけ目だ。圧力をかけ続けること。「引いて守る相手を崩す→こじ開ける」という課題に今日こそ答えを出したい。ちなみにこの日、田中亜土夢がスタメンを外れた。成岡翔が右サイドハーフに入り、ボランチは小泉慶がリーグ戦初スタメン。
試合。力の差は感じたなぁ。徳島やっぱり余裕がない。武蔵がこの日も「徳島キラー」ぶり(?)を発揮し、先制ゴールを決め、追加点ゴール(レオ・シルバの芸術的FKゴール!)のきっかけをつくる。アレだなぁ、たぶん武蔵のスピードが想定外なんだな。特に前半はバタバタになってくれた。新潟は自らリズムをつくり、練習試合のように攻め立てる。
が、後半は徳島がふっ切れた。やっぱりサッカーはメンタルだね。「何点取られて負けても同じだ、行くしかない」という気迫。ポカスタの徳島サポはこの姿を待っていたのだと思う。ホーム初ゴールは「後半44分、濱田(武)の右足シュートがポストを強襲し、跳ね返ったところを衛藤(裕)が体を倒しながら左足でシュート。最後に李栄直が頭でコースを変えてネットに突き刺した」(『徳島新聞』翌日付スポーツ面より。カッコ内はえのきど)と皆で挙げたもの。
でも、新潟の勝利は一度も揺るがなかった。ちょっと審判の判定に泣かされた面があったが、チ-ムは冷静に対応する。2対1。スコア以上の完勝。10シーズン、J1で戦ってきた地方クラブの「先行ランナー」の意地だね。ついでに言うと6千強の観客のうち、1千人程度が新潟サポ。もう、素晴らしいとしか言いようがないです。
J1第10節、新潟×神戸。
中2日。「昭和の日」のホームゲーム。僕は文化放送の番組取材で西武ドームだった。西武池袋線の車中で、またまた元『週刊サッカーマガジン』編集長・平澤大輔さんから「こんにちは。本日もビッグスワンです。今日こそ勝ってほしい」とLINEが入る。ありゃ、平澤さん単身赴任なのにGW、新潟支社なんだ。平澤さんは今季3試合めの観戦で、前の2つはスコアレスドローだ。で、まだ俺、振るだけ振っといてご一緒してない。ただ着々と味方になってる感じが「今日こそ勝ってほしい」にうかがえるのだ。
で、平澤さんのLINEがなかなか良かった。「神戸の森岡が気になりまして、じっくり観察してみようと思います。マルキに対するアルビの守備も!」「イベント広場でキックターゲットに挑戦して、ビールもらいました(笑)。スタジアムでそんなことするの初めてなので、新鮮です! Jリーグって楽しいな!」。人生にサッカーを取り戻した幸福感にあふれている。振るだけ振ってみてよかった。
で、今回は1対1のドロー。速報をにらみながら「引き分けだね~」と送信すると、即座に「引き分けでしたけど、ものすごくいい試合でした。いろんな意味で。たくさんの要素が詰まったゲームをご堪能ください!」と返信が来る。どうやら試合終わって(最近知り合ったばかりの)アルビサポとサッカー談義が止まらなくなってるらしい。家に帰って録画再生するのが楽しみだった。
で、「ご堪能」したんですけどね。いっぺん「ご堪能」して、おりゃあケンゴ~、しかも空振りゴールゥ~?、と盛り上がってたら、平澤さんが更にレクチャーを送信してくれた。で、すぐにもう一度、録画を「ご堪能」し直す羽目になる。大変感心したんでこの試合については平澤メモを大胆採用しましょう。だってそのほうが読者のためになるもん。ま、平澤さんには飲み会おごって埋め合わせしますね。
「まずは前半の神戸が面白かったです。マルキ、ペドロ、小川がちょっとずつ動くタイミングをずらしながらの攻撃で、最後に森岡が出てくるという『時間差攻撃』でアルビの守備が大混乱!」「ここで前半は何とか持ちこたえたのが、結果的に勝ち点1の伏線になるわけです」「さて後半、柳下監督は選手の置き場所を変えてくるわけです。発熱のマツケンに代わって右サイドバックに入っていた大野君が、なれないポジションでラインを上げるのが遅れ、オフサイドを取りそびれていたので、本来のセンターバックへ」「代わってセンターにいた舞行龍が右サイドバックへ。これで最終ラインが安定しました」
「武蔵に代わって小林を投入。川又のワントップにして4-2-3-1のシステムにし、『3』が右からアトム、成岡、ヒデ、『2』が小林、レオシルバ。これがばっちりはまったんです」「まず成岡。『トシヤ2世』と言われただけあって、ここのポジションのほうが生きるなぁ。ゴール前に忍者みたいに入ってくるの、うまいんですよ」「で、武蔵と川又だと動きもプレースタイルもかぶるのでもどかしかったんだけど、これで前線の役割が整理されました」「そうなると物足りなく思うのがサイドバックの上がり。実はこれで観戦3戦目なのですが、ずっとジンスとヒデのコンビが合わないなぁ、と思っていたわけです」「ヒデが本職じゃないのもあって、ジンスが上がれない。上がってもいいパスが来ない。そんなとき、ヒデに代わって加藤を入れました。で、アトムが左MFへ。昨年の名コンビが復活するのです」
「またボランチに小林が入っていることで、パスにリズムを刻むことができるようになったんです。いわゆる『顔を出す』のがうまくて、受けたらすぐさばく。山口素弘さんみたいな感じだったなぁ」「1点は取られてしまって、そこでしゅんとしちゃうのがアルビの弱点かもですが、成岡に代わって達也が入ってからまた攻勢に」「武蔵には申し訳ないですけど、川又のワントップと達也のトップ下、左MFはヒデじゃなくてアトム、成岡はボランチでもMFでもいけるし、小林のリズム感もなかなかよかったので、次から柳下監督はどうするのか見ものです!」「僕はそんな感じで見てましたけど、柳下監督はまた別の考えでしょう。だからこそ次節が楽しみです。大中によれば、柳下監督が相手に合わせてシステムをいじるのはめったにないことだそうですので」
鈴木武蔵、岡本英也のファンはしょんぼりしないでほしい。これは平澤さんが言ってることで、サッカーに関する「絶対的な正解」などではない。てか、そういうものがないのがサッカーだ。ただ平澤さんさすがによく見えてるでしょ。柳下アルビ観戦たった3試合でこの解像度ですよ。僕も神戸戦の後半45分はひょっとしてチームの転回点になるかもなぁと思いました。
附記1、ね、平澤大輔ひっぱり込んで損はないでしょ。新潟日報の連載もご注目下さいね。
2、徳島楽しかったですね。僕ね、ポカスタへ向かう「ヴォルティスロード」っていうのかな、撫養川沿いの遊歩道で大阪から来たっていうGさん親娘(オレンジのレプリカユニ)と出くわして、一緒に春風のなか歩いたんですけど、空想上の「散歩道」ってあんな光景だな。ま、土地柄、「徳島ヴォルティス散歩道」かもわかんないけど。で、その晩の徳島市・阿波おどり会館、翌日の鳴門うずしお観潮船がもうアルビサポだらけで笑った。
3、ちなみに僕は「はやしのお好み焼」→「かまぼこ杉山でフィッシュかつ買い食い」で最高にヘラヘラしましたよ。散策中、「ヤラカス」という葬祭業者を発見。「ヤラカスシティホール」で通夜・葬儀・法要ってフツーのことらしい。
4、徳島市旅館組合・主催の「観戦したら徳島市内に泊まろう!」キャンペーンが圧巻だ。3月7日から12月6日まで加盟店に宿泊したお客さんに「2000円の金券」と「記念品」をもれなくプレゼント。金券は当日の宿泊料金や、宿での食事・おみやげ代にも使える。あとすごいのは宿泊を証明できるものを持ってると徳島市内(阿波おどり会館前)からポカスタまでの往復シャトルバスに無料で乗れるんだね。これ例えば、新潟でも五泉とかでやれる気がするなぁ。スポーツツーリズム作戦だね。
えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。 新潟日報で隔週火曜日に連載されている「新潟レッツゴー!」も好評を博している。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。
アルビレックス新潟からのお知らせコラム「えのきどいちろうのアルビレックス散歩道」は、アルビレックス新潟公式サイト『モバイルアルビレックス』で、先行展開をさせていただいております。更新は公式携帯サイトで毎週木曜日に掲載した内容を、翌週木曜日に公式PCサイトで掲載するスケジュールとなります。えのきどさんがサポーターと同じ目線で見て、感じた等身大のコラムは、試合の感動がさめる前に、ぜひ公式携帯サイトでご覧ください!
J1第9節、徳島×新潟。
初めてポカスタ(鳴門市・ポカリスエットスタジアム)を訪ねたのだ。僕は徳島とは縁があって、20代の頃、タウン情報誌『あわわ』に連載を持っていた。同誌は現在、フリーマガジンに変貌しているが、当時は「徳島市内では『週刊文春』くらい売れている」(初代編集長・住友達也さん)とめちゃめちゃ勢いに乗っていた。思えば当コラムの原型っぽい遠隔地連載に僕はもうトライしてたことになる。但し、スポーツものじゃなかったなぁ。
徳島ヴォルティスというと大杉漣さんだ。大杉さんはすごい人で、『NONFIX』(フジテレビ)が日光アイスバックスを取り上げた回でナレーターを担当したんですよ。で、自宅でナレーション台本の下読みをしていて、貧乏ホッケーチームの奮闘努力に号泣してしまったそうだ。で、翌日、ファンクラブ会員申し込みのFAXが届いた。そしてアイスアリーナにもぶらっとひとりで姿を現す。それだけじゃなく『笑っていいとも!』出演時には、100人アンケートで「僕はこういういきさつで日光アイスバックスの会員になったんですが、アイスホッケーを生で見たことがある人?」とやってくれた。アイスバックスの営業担当は手を合わせてました。
大杉さんは徳島の出身で、かつ熱心なサッカーファン&現役プレーヤーだからヴォルティスをサポートするのは実に自然なことだ。僕は色んなスタジアムで大杉さんと出くわしている。一度、J2の草津×徳島(正田醤油スタジアム)で鉢合わせしたときはびっくりしたなぁ。「お、大杉さん!」って声かけたら向こうも「え、何で?」だって。だから本物ですよ。もちろん一般客としてチケットを買って見ていた。やっぱり何事も人を介して印象がつくられるから、僕は(住友達也、大杉漣って2人のおかげで)徳島にシンパシーを持ってますね。
で、「四国初のJ1」チームは試合前の時点で8連敗中、この日負けたら(延長戦が廃止された2003年以降の)J1開幕連敗のワースト記録「9」に並んでしまう状況だった。まぁ、ワーストタイまでは勘弁してもらって、単独の新記録のほうは次節、どうにか回避していただこう。新潟だって勝利に飢えてるところだ。勝って上位戦線に踏みとどまる必要がある。でも、心配だなぁ。こういうカードにからきし弱いんだよ。去年もホームで大分に敗れた。強きをくじき、弱きを助けすぎる(?)傾向があるんだなぁ。
徳島とは今季、ナビスコ初戦(3月19日)で当たっている。その試合は鈴木武蔵の活躍もあり、あっさり退けている。その後はどうかというと、TVでここ何節かをチェックしたが、負けが続いてちょっと萎縮してるというか、心理的ダメージがあるようだ。サッカーはメンタルの部分が大きいから、怖気づいたら本来の良さまでが消えてなくなる。逆に新潟サイドから言えばここがつけ目だ。圧力をかけ続けること。「引いて守る相手を崩す→こじ開ける」という課題に今日こそ答えを出したい。ちなみにこの日、田中亜土夢がスタメンを外れた。成岡翔が右サイドハーフに入り、ボランチは小泉慶がリーグ戦初スタメン。
試合。力の差は感じたなぁ。徳島やっぱり余裕がない。武蔵がこの日も「徳島キラー」ぶり(?)を発揮し、先制ゴールを決め、追加点ゴール(レオ・シルバの芸術的FKゴール!)のきっかけをつくる。アレだなぁ、たぶん武蔵のスピードが想定外なんだな。特に前半はバタバタになってくれた。新潟は自らリズムをつくり、練習試合のように攻め立てる。
が、後半は徳島がふっ切れた。やっぱりサッカーはメンタルだね。「何点取られて負けても同じだ、行くしかない」という気迫。ポカスタの徳島サポはこの姿を待っていたのだと思う。ホーム初ゴールは「後半44分、濱田(武)の右足シュートがポストを強襲し、跳ね返ったところを衛藤(裕)が体を倒しながら左足でシュート。最後に李栄直が頭でコースを変えてネットに突き刺した」(『徳島新聞』翌日付スポーツ面より。カッコ内はえのきど)と皆で挙げたもの。
でも、新潟の勝利は一度も揺るがなかった。ちょっと審判の判定に泣かされた面があったが、チ-ムは冷静に対応する。2対1。スコア以上の完勝。10シーズン、J1で戦ってきた地方クラブの「先行ランナー」の意地だね。ついでに言うと6千強の観客のうち、1千人程度が新潟サポ。もう、素晴らしいとしか言いようがないです。
J1第10節、新潟×神戸。
中2日。「昭和の日」のホームゲーム。僕は文化放送の番組取材で西武ドームだった。西武池袋線の車中で、またまた元『週刊サッカーマガジン』編集長・平澤大輔さんから「こんにちは。本日もビッグスワンです。今日こそ勝ってほしい」とLINEが入る。ありゃ、平澤さん単身赴任なのにGW、新潟支社なんだ。平澤さんは今季3試合めの観戦で、前の2つはスコアレスドローだ。で、まだ俺、振るだけ振っといてご一緒してない。ただ着々と味方になってる感じが「今日こそ勝ってほしい」にうかがえるのだ。
で、平澤さんのLINEがなかなか良かった。「神戸の森岡が気になりまして、じっくり観察してみようと思います。マルキに対するアルビの守備も!」「イベント広場でキックターゲットに挑戦して、ビールもらいました(笑)。スタジアムでそんなことするの初めてなので、新鮮です! Jリーグって楽しいな!」。人生にサッカーを取り戻した幸福感にあふれている。振るだけ振ってみてよかった。
で、今回は1対1のドロー。速報をにらみながら「引き分けだね~」と送信すると、即座に「引き分けでしたけど、ものすごくいい試合でした。いろんな意味で。たくさんの要素が詰まったゲームをご堪能ください!」と返信が来る。どうやら試合終わって(最近知り合ったばかりの)アルビサポとサッカー談義が止まらなくなってるらしい。家に帰って録画再生するのが楽しみだった。
で、「ご堪能」したんですけどね。いっぺん「ご堪能」して、おりゃあケンゴ~、しかも空振りゴールゥ~?、と盛り上がってたら、平澤さんが更にレクチャーを送信してくれた。で、すぐにもう一度、録画を「ご堪能」し直す羽目になる。大変感心したんでこの試合については平澤メモを大胆採用しましょう。だってそのほうが読者のためになるもん。ま、平澤さんには飲み会おごって埋め合わせしますね。
「まずは前半の神戸が面白かったです。マルキ、ペドロ、小川がちょっとずつ動くタイミングをずらしながらの攻撃で、最後に森岡が出てくるという『時間差攻撃』でアルビの守備が大混乱!」「ここで前半は何とか持ちこたえたのが、結果的に勝ち点1の伏線になるわけです」「さて後半、柳下監督は選手の置き場所を変えてくるわけです。発熱のマツケンに代わって右サイドバックに入っていた大野君が、なれないポジションでラインを上げるのが遅れ、オフサイドを取りそびれていたので、本来のセンターバックへ」「代わってセンターにいた舞行龍が右サイドバックへ。これで最終ラインが安定しました」
「武蔵に代わって小林を投入。川又のワントップにして4-2-3-1のシステムにし、『3』が右からアトム、成岡、ヒデ、『2』が小林、レオシルバ。これがばっちりはまったんです」「まず成岡。『トシヤ2世』と言われただけあって、ここのポジションのほうが生きるなぁ。ゴール前に忍者みたいに入ってくるの、うまいんですよ」「で、武蔵と川又だと動きもプレースタイルもかぶるのでもどかしかったんだけど、これで前線の役割が整理されました」「そうなると物足りなく思うのがサイドバックの上がり。実はこれで観戦3戦目なのですが、ずっとジンスとヒデのコンビが合わないなぁ、と思っていたわけです」「ヒデが本職じゃないのもあって、ジンスが上がれない。上がってもいいパスが来ない。そんなとき、ヒデに代わって加藤を入れました。で、アトムが左MFへ。昨年の名コンビが復活するのです」
「またボランチに小林が入っていることで、パスにリズムを刻むことができるようになったんです。いわゆる『顔を出す』のがうまくて、受けたらすぐさばく。山口素弘さんみたいな感じだったなぁ」「1点は取られてしまって、そこでしゅんとしちゃうのがアルビの弱点かもですが、成岡に代わって達也が入ってからまた攻勢に」「武蔵には申し訳ないですけど、川又のワントップと達也のトップ下、左MFはヒデじゃなくてアトム、成岡はボランチでもMFでもいけるし、小林のリズム感もなかなかよかったので、次から柳下監督はどうするのか見ものです!」「僕はそんな感じで見てましたけど、柳下監督はまた別の考えでしょう。だからこそ次節が楽しみです。大中によれば、柳下監督が相手に合わせてシステムをいじるのはめったにないことだそうですので」
鈴木武蔵、岡本英也のファンはしょんぼりしないでほしい。これは平澤さんが言ってることで、サッカーに関する「絶対的な正解」などではない。てか、そういうものがないのがサッカーだ。ただ平澤さんさすがによく見えてるでしょ。柳下アルビ観戦たった3試合でこの解像度ですよ。僕も神戸戦の後半45分はひょっとしてチームの転回点になるかもなぁと思いました。
附記1、ね、平澤大輔ひっぱり込んで損はないでしょ。新潟日報の連載もご注目下さいね。
2、徳島楽しかったですね。僕ね、ポカスタへ向かう「ヴォルティスロード」っていうのかな、撫養川沿いの遊歩道で大阪から来たっていうGさん親娘(オレンジのレプリカユニ)と出くわして、一緒に春風のなか歩いたんですけど、空想上の「散歩道」ってあんな光景だな。ま、土地柄、「徳島ヴォルティス散歩道」かもわかんないけど。で、その晩の徳島市・阿波おどり会館、翌日の鳴門うずしお観潮船がもうアルビサポだらけで笑った。
3、ちなみに僕は「はやしのお好み焼」→「かまぼこ杉山でフィッシュかつ買い食い」で最高にヘラヘラしましたよ。散策中、「ヤラカス」という葬祭業者を発見。「ヤラカスシティホール」で通夜・葬儀・法要ってフツーのことらしい。
4、徳島市旅館組合・主催の「観戦したら徳島市内に泊まろう!」キャンペーンが圧巻だ。3月7日から12月6日まで加盟店に宿泊したお客さんに「2000円の金券」と「記念品」をもれなくプレゼント。金券は当日の宿泊料金や、宿での食事・おみやげ代にも使える。あとすごいのは宿泊を証明できるものを持ってると徳島市内(阿波おどり会館前)からポカスタまでの往復シャトルバスに無料で乗れるんだね。これ例えば、新潟でも五泉とかでやれる気がするなぁ。スポーツツーリズム作戦だね。
えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。 新潟日報で隔週火曜日に連載されている「新潟レッツゴー!」も好評を博している。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。
アルビレックス新潟からのお知らせコラム「えのきどいちろうのアルビレックス散歩道」は、アルビレックス新潟公式サイト『モバイルアルビレックス』で、先行展開をさせていただいております。更新は公式携帯サイトで毎週木曜日に掲載した内容を、翌週木曜日に公式PCサイトで掲載するスケジュールとなります。えのきどさんがサポーターと同じ目線で見て、感じた等身大のコラムは、試合の感動がさめる前に、ぜひ公式携帯サイトでご覧ください!
