【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第303回
2016/8/11
「青い提灯オレンジの提灯」
J1第6節(第2ステージ)、新潟×FC東京。
新潟駅に到着したらもわっと来た。東京より暑い。夜までに多少しのぎやすくなるだろうか。いよいよ「夏アルビ!」本番だ。花火も上がる。八色スイカもふるまわれる。この夏休みシリーズがJ1残留の成否のカギを握る。浮上するのか沈み込むのか。試合後は皆、青バージョンのガチャ提灯を点灯させてハッピーに家路につくのかその逆か。ちなみに僕がガチャッたら「野津田岳人」だった。ゴールのお告げですか?
FC東京サポも大集結していた。元々、新潟遠征はアクセスがいい。夏休みの小旅行に最適。が、今回は小旅行を楽しむどころじゃなかった。先週、成績不振により城福浩監督が電撃解任され、篠田善之コーチの昇格が決まった。FC東京もまた夏休みシリーズを最重要と位置づけていたのだ。今日、「篠田トーキョー」の初戦を落とせばガタガタになりかねない。大集結した青赤軍団は何が何でもチームを勝たせるつもりだ。
展開が予想しづらかった。篠田さんの采配如何でどのようにでもなる。FC東京は今季、勝負弱い。前任のフィッカデンティ監督が植えつけた「ウノゼロの守備哲学」が姿を消していた。新潟としては先制してあわてさせたい。たぶん向こうはガチで入ってくる。気持ちで負けないこと。球際で勝って先制点をもぎ取れば、大崩れもあり得る。間違いないのは「敵は不安」だということ。そして「いっしょうけんめい」だということ。
試合。ガツガツ来た。FC東京はそういうチームなんだな。タレントの豊富さで定評があるけれど、苦しいところで何を頼りにするかっていったら気持ちだ。やたらとファウルが多い。池内明彦主審がイエローを連発。前半からこれじゃ2枚目もらって退場する選手が出そうだ。ひょっとして後半は数的優位の状況が生まれるのか。新潟スタメンは前節・大宮戦とそっくり同じ。今回は勝ったチームをいじらなかった。
ハーフタイムの時点でスコアは0対0、高橋秀人にやられそうなシーンがあったが、何とか持ちこたえた。こういう試合を勝ち切らないといけない。後半の入りでもう一回ネジを巻きたいなぁ。FC東京のテンションがずっと落ちない。ふわっと入ったら危険だぞと思う。それはたぶん観客の多くが感じていたことじゃなかったかな。当然、吉田達磨監督もロッカーで指示している。「どんなときにも集中し続けよう」。
悪い予感が的中した。後半3分、東京FW・前田遼一のシュートをGK守田達弥が弾き、そのこぼれを東慶悟に決められてしまった形だ。ここはね、カバーリングのエアポケットが生じた。FC東京は人数をかけて殺到している。最初はムリキ、そのこぼれを前田、そのこぼれを東が打ってきた。このムリキのシュートを身体に当てて防いだ小泉慶がその後、足を止めて傍観してしまう。聖籠でやってる練習は一度シュートブロックに入ったらオッケーかもわかんないけど、実戦は違う。足を止めず東をつぶしに行くべきだった。
先に失点してしまった。そしたらFC東京がなりふり構わず守備を固めてきたんだね。穴熊。籠城戦。僕は敵ながらあっぱれだなと思ったよ。生き残る意志だ。格好なんか気にしてない。5バックで、かつ全員自陣に戻ってスペースを消す。新潟は完全にフタをされた。こうなると日本代表でもカンタンには打開できない。ダイレクトパスを2、3本つなぐような連携がほしい。そこまでのスキルはないんだなぁ。つないではつぶされ、つないではつぶされ…。
ただ(交代投入された)伊藤優汰のところは可能性があった。独特のドリブルで持ち込み、こじ開ける機会をつくった。優汰が持ったときだけ、歓声が上がる。あとは場内も淡々としていた。サポーターはチャントを歌い続けたけれど、ぶわぁっと燃え上がる感じには程遠い。なーんも起きないのだ。起きないだろうなと皆、思って見ている感じだ。
唐突だが僕は韓流ドラマが苦手だ。こうなるだろうなと思って、ジワジワその通りになっていくのに耐えるのが苦痛だ。変な言い方だが「道路に寝て時速7キロくらいのクルマにゆっくり轢(ひ)かれる」ようなイヤさなのだ。知人の女性編集者(韓流好き)に言わせると「そこがいいんじゃない!」なんだけどね。この試合後半の「フタをされて打開できない」はフラストレーションがたまった。
「今日はフリーキックが多く、テンポの生まれづらいゲームだった。ただうちとしてはチャンスのときの鋭さが足りなかった。リードを奪われた後、しっかり守られてしまった」(吉田達磨監督コメント)
本当にその通りなんだよ。達磨さんは「みんなが前向きにやってるし、成長している手応えはつかんでいる」とあくまでポジティブだが、第2ステージに入って1勝5敗。依然として足踏み状態が続いている。くー、爆発したいなぁ。「夏アルビ!」全開はまだかなぁ。
附記1、この日は競馬の関係とかで新潟市にぜんぜん宿なかったんですよ。会見取材もできぬまま、終電で長岡へ移動しました。長岡ではアルビ居酒屋「ごろえん」でかぐら南蛮やきそばを食べた。長岡泊のパターンも十分アリですね。ま、そのまま花火まで延泊できたら最高でしたけど。
2、今回の移動はずっと『レスターの奇跡』(ロブ・タナー著、イーストプレス刊)を読んでました。この本は早い話「レスターシティ散歩道」なんですよ。地元紙の記者が奇跡のシーズンを書き止めたものです。15-16シーズン開幕の時点では「ぎりぎり残留」のチームから「カンビアッソが抜けた」状態だったんですね。これはアルビにおけるレオ以上の精神的支柱ですよ。なのに補強は下部リーグ等から発掘してきた無名の選手ばかり(岡崎慎司がいちばん高い買い物だった!)。監督はかつてビッグクラブを指揮したとはいえ「成績不振のため、たった4試合でギリシャ代表監督を解任されたばかりのクラウディオ・ラニエリ」。ファンは「やる気あんのか?」ですよ。それが1年足らずで25万人の優勝パレードまで行くんだからなぁ。
3、リオ五輪代表メンバーに鈴木武蔵選手が追加登録されましたね。がんばれ武蔵! 関東エリアの方しか聴けないけど、僕は8日、文化放送のコロンビア戦特別編成(9時から中継開始まで)の出演が決まりました。
えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。 新潟日報で隔週火曜日に連載されている「新潟レッツゴー!」も好評を博している。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。
アルビレックス新潟からのお知らせコラム「えのきどいちろうのアルビレックス散歩道」は、アルビレックス新潟公式サイト『モバイルアルビレックス』で、先行展開をさせていただいております。更新は公式携帯サイトで毎週木曜日に掲載した内容を、翌週木曜日に公式PCサイトで掲載するスケジュールとなります。えのきどさんがサポーターと同じ目線で見て、感じた等身大のコラムは、試合の感動がさめる前に、ぜひ公式携帯サイトでご覧ください!

J1第6節(第2ステージ)、新潟×FC東京。
新潟駅に到着したらもわっと来た。東京より暑い。夜までに多少しのぎやすくなるだろうか。いよいよ「夏アルビ!」本番だ。花火も上がる。八色スイカもふるまわれる。この夏休みシリーズがJ1残留の成否のカギを握る。浮上するのか沈み込むのか。試合後は皆、青バージョンのガチャ提灯を点灯させてハッピーに家路につくのかその逆か。ちなみに僕がガチャッたら「野津田岳人」だった。ゴールのお告げですか?
FC東京サポも大集結していた。元々、新潟遠征はアクセスがいい。夏休みの小旅行に最適。が、今回は小旅行を楽しむどころじゃなかった。先週、成績不振により城福浩監督が電撃解任され、篠田善之コーチの昇格が決まった。FC東京もまた夏休みシリーズを最重要と位置づけていたのだ。今日、「篠田トーキョー」の初戦を落とせばガタガタになりかねない。大集結した青赤軍団は何が何でもチームを勝たせるつもりだ。
展開が予想しづらかった。篠田さんの采配如何でどのようにでもなる。FC東京は今季、勝負弱い。前任のフィッカデンティ監督が植えつけた「ウノゼロの守備哲学」が姿を消していた。新潟としては先制してあわてさせたい。たぶん向こうはガチで入ってくる。気持ちで負けないこと。球際で勝って先制点をもぎ取れば、大崩れもあり得る。間違いないのは「敵は不安」だということ。そして「いっしょうけんめい」だということ。
試合。ガツガツ来た。FC東京はそういうチームなんだな。タレントの豊富さで定評があるけれど、苦しいところで何を頼りにするかっていったら気持ちだ。やたらとファウルが多い。池内明彦主審がイエローを連発。前半からこれじゃ2枚目もらって退場する選手が出そうだ。ひょっとして後半は数的優位の状況が生まれるのか。新潟スタメンは前節・大宮戦とそっくり同じ。今回は勝ったチームをいじらなかった。
ハーフタイムの時点でスコアは0対0、高橋秀人にやられそうなシーンがあったが、何とか持ちこたえた。こういう試合を勝ち切らないといけない。後半の入りでもう一回ネジを巻きたいなぁ。FC東京のテンションがずっと落ちない。ふわっと入ったら危険だぞと思う。それはたぶん観客の多くが感じていたことじゃなかったかな。当然、吉田達磨監督もロッカーで指示している。「どんなときにも集中し続けよう」。
悪い予感が的中した。後半3分、東京FW・前田遼一のシュートをGK守田達弥が弾き、そのこぼれを東慶悟に決められてしまった形だ。ここはね、カバーリングのエアポケットが生じた。FC東京は人数をかけて殺到している。最初はムリキ、そのこぼれを前田、そのこぼれを東が打ってきた。このムリキのシュートを身体に当てて防いだ小泉慶がその後、足を止めて傍観してしまう。聖籠でやってる練習は一度シュートブロックに入ったらオッケーかもわかんないけど、実戦は違う。足を止めず東をつぶしに行くべきだった。
先に失点してしまった。そしたらFC東京がなりふり構わず守備を固めてきたんだね。穴熊。籠城戦。僕は敵ながらあっぱれだなと思ったよ。生き残る意志だ。格好なんか気にしてない。5バックで、かつ全員自陣に戻ってスペースを消す。新潟は完全にフタをされた。こうなると日本代表でもカンタンには打開できない。ダイレクトパスを2、3本つなぐような連携がほしい。そこまでのスキルはないんだなぁ。つないではつぶされ、つないではつぶされ…。
ただ(交代投入された)伊藤優汰のところは可能性があった。独特のドリブルで持ち込み、こじ開ける機会をつくった。優汰が持ったときだけ、歓声が上がる。あとは場内も淡々としていた。サポーターはチャントを歌い続けたけれど、ぶわぁっと燃え上がる感じには程遠い。なーんも起きないのだ。起きないだろうなと皆、思って見ている感じだ。
唐突だが僕は韓流ドラマが苦手だ。こうなるだろうなと思って、ジワジワその通りになっていくのに耐えるのが苦痛だ。変な言い方だが「道路に寝て時速7キロくらいのクルマにゆっくり轢(ひ)かれる」ようなイヤさなのだ。知人の女性編集者(韓流好き)に言わせると「そこがいいんじゃない!」なんだけどね。この試合後半の「フタをされて打開できない」はフラストレーションがたまった。
「今日はフリーキックが多く、テンポの生まれづらいゲームだった。ただうちとしてはチャンスのときの鋭さが足りなかった。リードを奪われた後、しっかり守られてしまった」(吉田達磨監督コメント)
本当にその通りなんだよ。達磨さんは「みんなが前向きにやってるし、成長している手応えはつかんでいる」とあくまでポジティブだが、第2ステージに入って1勝5敗。依然として足踏み状態が続いている。くー、爆発したいなぁ。「夏アルビ!」全開はまだかなぁ。
附記1、この日は競馬の関係とかで新潟市にぜんぜん宿なかったんですよ。会見取材もできぬまま、終電で長岡へ移動しました。長岡ではアルビ居酒屋「ごろえん」でかぐら南蛮やきそばを食べた。長岡泊のパターンも十分アリですね。ま、そのまま花火まで延泊できたら最高でしたけど。
2、今回の移動はずっと『レスターの奇跡』(ロブ・タナー著、イーストプレス刊)を読んでました。この本は早い話「レスターシティ散歩道」なんですよ。地元紙の記者が奇跡のシーズンを書き止めたものです。15-16シーズン開幕の時点では「ぎりぎり残留」のチームから「カンビアッソが抜けた」状態だったんですね。これはアルビにおけるレオ以上の精神的支柱ですよ。なのに補強は下部リーグ等から発掘してきた無名の選手ばかり(岡崎慎司がいちばん高い買い物だった!)。監督はかつてビッグクラブを指揮したとはいえ「成績不振のため、たった4試合でギリシャ代表監督を解任されたばかりのクラウディオ・ラニエリ」。ファンは「やる気あんのか?」ですよ。それが1年足らずで25万人の優勝パレードまで行くんだからなぁ。
3、リオ五輪代表メンバーに鈴木武蔵選手が追加登録されましたね。がんばれ武蔵! 関東エリアの方しか聴けないけど、僕は8日、文化放送のコロンビア戦特別編成(9時から中継開始まで)の出演が決まりました。
えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。 新潟日報で隔週火曜日に連載されている「新潟レッツゴー!」も好評を博している。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。
アルビレックス新潟からのお知らせコラム「えのきどいちろうのアルビレックス散歩道」は、アルビレックス新潟公式サイト『モバイルアルビレックス』で、先行展開をさせていただいております。更新は公式携帯サイトで毎週木曜日に掲載した内容を、翌週木曜日に公式PCサイトで掲載するスケジュールとなります。えのきどさんがサポーターと同じ目線で見て、感じた等身大のコラムは、試合の感動がさめる前に、ぜひ公式携帯サイトでご覧ください!
