【第3回】チームが個人を活かせれば、チームの力も大きくなる

2018/8/14
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ホーム開幕戦、皆さんに挨拶をして

ホーム開幕となる松本山雅戦の試合前に、ご来場のサポーターの皆さんにご挨拶する時間を作ってもらいました。サポーターの皆さんから闘病中に支えていただいたという思いは本当に強くて、今回JA全農にいがたさんからもご協力をいただいたんですが、しっかり自分の思い、感謝を伝えられたと思います。またここから、もうひと頑張りして、今度はピッチに立って感謝をしたいとも思い直しました。

試合開催時にピッチレベルから見渡したビッグスワンは、広いし、サポーターのオレンジの層を見て、「やっぱりいいなぁ」と懐かしい部分もありました。よりサッカーをやりたくなって、「もう一回こういう風景を見るんだ」という一種のモチベーションにもつながりました。

アルビレッジでのミニゲーム

天気も良かったですね。最近はアルビレッジでのリハビリを外でやっていたので、ニット帽をかぶっているところと、そうじゃないところで日焼けもしました。アカデミーのコーチや、リハビリのレディース選手たちと一緒にミニゲームもやって、楽しいです。「おまえ、下手だな~」と、よく奥さん(奥山アカデミーダイレクター)に言われるんですけれど(笑)。

遊びの要素かもしれないんですけれど、そういう中でも駆け引きを楽しめます。今後復帰した時にプラスになればいいなと。奥さんたちは本当に今でも上手いんです(笑)。いきなり速い球をビシッと通されて、「さすがだな…」と感じますね。やっていて面白いです。アカデミーのスタッフやトップの(渡辺)基治さんが一緒にゲームをしているのは、このクラブの良さだと思います。

最近はジュニアユースの練習にも参加させてもらっているんですが、「当時の自分があんな感じだったかな」と思いながら。トレーニングに参加させてもらっている立場ですが、ちょっとした刺激を与えられればいいかなと思っています。

貴章さんの良さがすごく出た松本山雅戦

松本山雅戦は1-1の引き分けでした。ゲーム全体を振り返っての感想は「負けなくて良かったな」というのが正直な思いです。どちらかと言えば山雅の方にチャンスが多かったのは試合後のスタッツを見ても分かります。枠内シュートが2本対8本くらいだったと思いますが、見ている方々も、危ない場面は新潟の方が多かった印象を持たれているんじゃないでしょうか。

前節からはズミさんや広瀬くんが外れました。前線に関しては貴章さんが入って高さが出て、この間の試合でも言いましたが、高さとダイナミックさ、速い攻撃ができるようになりました。それはポジティブな面で、セットプレーでも貴章さんがいるかいないかは大きな要素です。得点も貴章さんが決めて、良さがすごく出た試合でした。

逆にズミさんが出なかったことによって、つなぎ役というか、相手のサッカーに上手くハメられた。ちょっと大きく蹴り出す場面が増えたり、FWとMFをつなぐ役割がなかなかできず、相手にペースを握られすぎたように感じました。

善朗くんは、大輔と同じ気持ちの強さがある

もうひとり、高木善朗くんが先発で出場しました。クロスの精度も非常に高いですし、この間も言いましたが、スライディングだったり泥くさいプレーもできます。見ていて面白かったし、ナイスプレーだったんじゃないかと思います。

弟の大輔(現レノファ山口FC所属)はU-17ワールドカップの時に一緒だったんですけれど、似たような気持ちの強さを感じます。大輔も気が強くて、僕からすると2つ年下だったんですが、物怖じすることがなくて、いい意味で気を遣わない。負けん気の強い選手でしたが、そういうものを善朗くんからも感じられました。

ゴールは完璧

得点はその善朗くんから貴章さんが決めたものでした。まず、もともと貴章さんと競り合って勝てる人ってなかなかいないと思うんですが(笑)、ヨーイドンで競ったら、普通のDFだったら負けてしまう。それプラス、善朗くんが左サイドからインスイング、ゴールに向かっていく低めのいいボールが入ったことがあります。貴章さんが先に触りやすい、DFからは遠いボールで貴章さんにも有利でした。

試合を見ていて、結構クロスを外から放ってはじかれる場面が多かったと思うんですが、あの時に関して言うと、まずカワくんがニアに入っています。20番だったと思うんですが、相手の選手を引き連れて、そのスペースに貴章さんが入ってきて、さらにその後ろからマサルくんも入っていました。

それ以外のクロスの場面は、人が入れ替わらないまま、「上げて、個人個人で勝負」という感じだったのですが、選手が相手を動かして、かつパワーを持って入っていくことができていました。あのワンプレーは完璧だったと思いますし、あれをもっと増やせれば、もっとチャンスが増えてきます。今後の課題は、その入り方の質、どういう入り方で、どういうボールを送るかを追求できれば、相手はもっと嫌だと思います。

相手のDFにとってはダメージがあります。「あれは無理だ」と(笑)。後半にも安田さんから貴章さんに、という場面がありましたが、「それは無理だろう、そりゃDF負けるわ」という感じでした。貴章さんがいることで、周りも活きるだろうし、貴章さん自身も得点を取るチャンスが出てきます。その質、バリエーションを増やせれば、もっと嫌です。相手がクリアしたとしても、苦し紛れのものなので、拾って二次攻撃、三次攻撃につながって押し込める状況につながっていきます。続けていけば面白いと思います。

相手にハメられた要因は

とはいえ、全体としては相手の松本山雅にハメられたという印象を持ったのは、先ほども言った通りです。その原因として、まず中盤で数的優位を作り出せませんでした。距離感の問題かも、人数の配置の問題かもしれませんが、なかなか中で相手の5-3-2、中盤の3の三角形を崩せませんでした。その付近でボールをもらって、相手を動かしながら攻められなかったのが主導権を握れなかった要因だったように思います。

サイドバックが持った時に、FWとサイドハーフ、ボランチとの距離感も遠くて、ボールがサイドバックから入った時に孤立して奪われて、なおかつボールを出したサイドバックの選手が少し高い位置を取っているために後ろのスペースを使われる展開も多くあったかなと思います。その距離感をどうするか、パスを出す時の位置関係が定まってくれば、もうちょっと攻撃を組み立てながらも相手の反撃を阻止できるように変わってくると思います。

攻撃をしながらリスク管理をする。新潟はDAZNのアタッキングゾーンのパーセンテージを見ると、左が40%、真ん中が46%、右が14%なんです。圧倒的に右が少ないし、山雅からしたら、左サイドからすごく攻めています。そう考えると、川口のサイドがなかなか攻撃としてうまく機能していなかったのかなと感じます。

チームで川口の良さを出していきたい

川口はもともと攻撃で良さをすごく出すタイプだと思います。もうちょっと上手く彼の良さを出していければ、相手から自分たちの右サイドの攻撃を受ける回数も少なくなってきます。彼の良さをチームとして理解して出していければ、もっと面白くて力強いサッカーになると思います。

まだまだ川口は出し切れていない部分があると思います。というのも要所で1対1の場面が出てくると、相手に勝つし、『川口らしいな』と思わせてくれるプレーがあるんです。その頻度を増やしてほしいし、チームとしても川口の1対1を増やせるように、サイドハーフ、ボランチ、センターバックのサポートも欠かせません。チームとして個人を活かせれば、さらにチームの力も大きくなるんじゃないかと感じます。

守備はこれからもっと良くなる

後半、松本は大きな選手に代えて外国人の8番(セルジーニョ)と10番(工藤)が入りました。比較的前半はボランチが相手の3枚の選手を見ることができていたのですが、今度は4人になって、少し対応が後手に回り出しました。相手に上手く入り込まれるところがあったので、実際にピッチで選手がどう感じていたかは分かりませんが、そこを試合中に修正していけたら、もう少し落ち着けていたのかもしれません。

守備はこれからもっと良くなると思います。実際に公式戦でやってみないと分からないことって、本当にたくさんあるんですよね。前回も言いましたが、最初に悪いものを出す、出し切るくらい出てしまえば、あとは改善するだけです。そういう意味では特徴のある山雅と早い段階でやれたのは、今後に向けてすごくいい材料だったんじゃないかと思います。

ルヴァン開幕、週末はJ2京都戦

今週の水曜日はYBCルヴァンカップが開幕します。日程はすごくハードですけれど、J1クラブ、カテゴリーがひとつ上のチームとやれるのは、選手にとっては間違いなく高いモチベーションになります。違った意味で上手さをすごく感じる相手だと思います。J2は球際がすごく強調されますが、J1ではその球際に強く行くがあまり、反転されたり、したたかさを持っている選手が多くいます。その駆け引きを意識しながらやっていけたらいいと思います。

試合にずっと出ている選手にとっては、もしかするとすごくキツいかもしれません。そこをどう戦っていくかは分かりませんが、選手が変わっていくのであれば問題はありません。日曜日はもう一度ホームで京都戦。一発がある選手が多いので、気を抜くことができない相手、という印象です。前回は闘莉王選手がCBで出ていましたが、終盤に前にポジションを変えてきたりすることも考えると、早いうちに先制しておきたいです。

集中して体を寄せたり、クロスを上げさせないことが大事になると思います。山雅の時もそうですが、「誰をマークしなければいけないか」。得点を取るのはもしかするとFWかもしれませんが、その前のパサー、出す側をどう抑えるかも大事になると思います。この前の試合なら工藤、セルジーニョ。京都戦でも、疲れた時にパスをどんどん出してくる選手がいると思うので、そこをチーム全体でうまく抑えていければと注目しています。


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