【第6回】クラブへの強い想いを持つ僕らが
2018/8/14

ハードな3月ですが、養えた試合勘
3月21日は愛媛FC戦、25日は徳島戦が開催されました。改めてですが、3月は7試合! ただ、以前も言ったように、今のところリーグでチャンスが巡ってこない選手にとって、ルヴァン杯はJ1というレベルの高い選手と戦えるいい機会でした。厳しいスケジュールでしたが、そうした強い相手を経験し、いいイメージで試合と練習が行えていたんじゃないかと思います。
入り方を間違えてしまった愛媛戦
愛媛FC戦は、今シーズンで一番寒かったですね…(苦笑)。前節の横浜FC戦がとてもいい内容での勝利でしたが、サッカーは本当に難しいです。「新潟が同じ状況に陥り得る」と話しましたが、新潟はちょっと入り方を間違えてしまったように感じます。
愛媛は前線から積極的にプレッシャーを仕掛けてきて、攻撃ではサイドを広く使い、そこを起点に攻撃を組み立ててきました。新潟は上手く試合を進めることができず、ボールを保持しても、相手のプレッシャーを受けて横や後ろのパスが目立ちました。苦しい状況でボールを手放してしまうばかりか、圧力がかかっているため、さらに愛媛にスピードを出させてしまう展開になりました。自分たちでリズムを崩してしまったように思います。
厄介だった愛媛のウイングバック
もちろん、ボールを動かすこと自体が悪いわけではありません。ただ、プレッシャーの中でサイドに追い込まれると、自分の経験上ですが、愛媛のウイングバックが厄介だったんじゃないかと。横、横とつながってサイドバックに入ると、普段ならタテにボールを入れることができるんですが、プレッシャーがかかった状態だと、相手のウイングバックは自分(サイドバック)の前にいるんですよね。
こうなると、普段は入れられるタテのコースを切られているので、中に蹴るしかない。選択としてはFWへのクサビか、ボランチ、あるいは後ろのセンターバック。相手は狙いやすく、より圧力をかけやすくなったんじゃないかと思います。
自分たちの良さを知ること
相手の状況を見ながら、距離感を調整できればいいですが、時期的なものもあります。そういう段階まで構築するのは時間を要します。変にチャレンジして、バランスが崩れては元も子もない。相手との間にいいタイミングでサポートしたり、いい距離感を個人で作り出せるズミさんが今回は外れたので、チームとして統一ができず、サポートも遠くボールを失う場面が多くなりました。
今後も同じような布陣や対策を、新潟に講じてくることは考えられます。まず守備では、改めてですが、ボールを出す側にしっかり“フタ”をすること。プレッシャーのかけ方や方向付けも、中の選手から伝えられれば、一気に逆サイドに展開されることなく、ワンサイドで相手の攻撃を進ませることができると思います。
攻撃では、苦しい状況に陥っても新潟には貴章さんがいます。貴章さんに合わせて、前から来る相手の裏を狙うことで、一度は引っくり返すことができます。流れが悪くても、相手陣内でプレーして、押し返すことが今の新潟はできると思います。自分たちのどこに良さがあり、強みを持った選手をどう活かすか。上手くいかない試合、苦しい試合はこれからもリーグ戦にはあると思います。そうした時、最悪でも引き分けで試合を終えられるかも、今後J1復帰を目指す上では大切だと思います。
それにしてもタカくんは燃えていましたね(笑)。「やってやるぞ」という意志が見えていたし、先ほど言った、愛媛がウイングバックを配置する良さは、特にタカくんサイドから上手くハマっていました。逆サイドの開いた選手に対して、タカくんから正確なキックが届いていて、愛媛の良さをやらせ過ぎたような印象はあります。タカくんの質のいいキックを久々に見られました。
徳島は見ていて面白いサッカー
徳島戦です。徳島に対しては、ボールを大事にしつつ、特に守備に強い印象を受けました。それも奪われた瞬間です。その瞬間、人数をかけて囲んでボールを奪い切り、マイボールを散らして保持し続ける。リアクションではなく、自分たちが主体的にボールを保持し、その結果勝点3を目指す。見ていて面白いサッカーだし、チームだと思っていました。
試合の中で何度もフォーメーションを変えた徳島ですが、立ち上がりは愛媛同様、3バックでスタートさせ、中盤に多くの選手を配置してきました。徳島のキープレーヤーである8岩尾選手がボールを中盤の底でボールを散らし、リズムを作っていましたが、新潟はFWがタテ関係になって岩尾選手をけん制したり、ボランチの1枚が前に出ることで、徳島の配給の要を消そうと努力していました。
でも、徳島はどの選手もしっかりボールを扱いながら、新潟の中盤やDFラインの前で上手く連携し、攻撃を優位に進めてきました。DAZNのスタッツでは、ボール支配率もパス本数も、徳島が上回りました。ボールを保持し、大切にする攻撃は新潟より質の高いものだったかもしれませんし、そこは真摯(し)に受け止めなければならないと思います。押し込まれる展開が多くなり、新潟のストロングである安田さんの攻撃参加やクロスも、なかなか前節までのような、迫力ある攻撃に移ることができませんでした。
押し込まれても新潟が守り切れたのは
新潟は普段よりも守備の重心を後ろに置き、かつ全体が間延びしないように気を配っていました。サポーターの方々は、徳島に一方的に支配されているように感じたかもしれません。でも、新潟はその中でもタテパスこそ随所に入れられましたが、最後まで粘り強くやりきれていた。その要因として、センターバックの2人が集中してロングボールをはね返していたし、中のスペースを空けずにチャレンジ&カバーを繰り返していました。それに、(戸嶋)祥郎が辛い時に顔を出して、チームを助けていたこともあったんじゃないかと思います。
センターバックの原くん、ボランチの祥郎は、ルヴァン杯でいいプレーを見せていました。そう言えば原くんは、「わざと食いつかないようにしていた」とも試合後に話していましたね。あれだけボールを回されるとマークのズレも生まれがちなのですが、行き過ぎ、狙い過ぎることで、方向を変えられて3人目の選手を使われるのが、守備側では本当に危険なんですよね。それなら、DF間のスペースを作らせず、極力整ったラインで守備をした方がいい場合もある。そういう意図があったんじゃないでしょうか。
その一方、原くんは随所でしっかりインターセプトもしていました。その使い分けは、改めてレベルの高い選手だと感じさせられました。元々ボランチもできるので、周りとの連携も長けているし、足元も上手い。徳島に押し切らせなった、大きな貢献をしてくれたと思います。
祥郎には体力を分けてもらいたい(笑)
祥郎は彼の良さである、豊富な運動量と出足の速さを武器に、攻守でアグレッシブにプレーしていました。あれだけ動き回って、味方選手を助けてくれたらチームは本当に楽です。僕もリハビリをスタートさせていますが、やっぱり息が上がってしまい、思うように動けません。祥郎に体力を少し分けてもらいたいくらいです(笑)。
前日に「試合に出るの?」と聞いたら、僕にも「まぁチャンスがあれば…」と濁していました(笑)。このコラムの初回でも紹介しましたが、謙虚さを持ちながら、内に秘めるものも強いのが祥郎です。試合でファイトしている姿を見られたので、今後も面白い存在になるんじゃないかと。もちろん、ルヴァン杯に出ている他の選手たちの活躍にも、僕はずっと期待をしています。
守備に不安がない新潟だから、相手は怖い
さて、徳島戦は新潟が主導権を握られる状況でしたが、カワくんが大きなゴールを決めてくれました。ドリブルをしながら、大きなキックモーションもなく撃ったシュート。カワくんは足の振りが速いので、相手GKも反応が遅れた、いいシュートでした。どんなに苦しくても、一発があるチームって、ボールを保持している側からすると怖いものなんです。
カワくんだけじゃなく、貴章さんの高さ、クロスに入っての得点も。繰り返しですが、一発があるのは怖い(笑)。逆説的かも知れませんが、守備に不安がない新潟だからこそ、どのチームにも恐怖を与えられるんじゃないかと僕は思います。
主導権を握り続け、優位に進めることで相手が焦れるのを待っていたはずの徳島は、あの1点によって、ゲームプランが変わってしまったのでは。一方の新潟は、カワくんのゴールでスイッチが入ったというか、より集中して試合を進めていた。つくづくゴールって大きいなと思います。
新太が目標だったビッグスワンでプレー
もうひとり、ぜひ触れさせてほしいのが新太です。新太とは、ユースで僕が3年生の時に1年間だけ一緒にプレーしました。当時からガムシャラで負けん気が強かったですが、流通経済大の4年間で、さらにゴールへの嗅覚を高めて新潟に戻ってきました。
ゲームでもそういう“らしさ”を見せていましたが、途中出場で、ピッチに立っている選手にパワーを与えたり、「もう一回行くぞ」とメッセージを伝えられる選手はチームに必要です。サポーターの方々にも、そういうムードは感じてもらえると思うので、彼がそういう存在になってほしい。また十分資格があると思います。
クラブへの強い想いを抱いた僕らが
新太が試合後に更新したInstagram(arata402)では「小さい頃からビッグスワンにアルビの試合を観に行き、いつか自分もアルビのユニフォームを着て新潟サポーターの大声援の中でプレーしたいと思っていました!」と。この言葉に僕はとても共感するし、今後もアルビレックス新潟というクラブへ、このような強い想いを抱いた人間を輩出していく必要があると改めて感じました。
もしかしたら選手だけじゃなくてもいいかもしれません。現にエキップメントマネージャーのタマ(玉川皓太)や副務のかましゅう(鎌田秀平)が、スタッフとして活躍しているように。アルビレックス新潟のエンブレムを付けて活動することへの憧れを持ってもらえるように。
今いる僕らがアルビレックス新潟というクラブに誇りを持って、一生懸命戦って子どもたちに見せつけてやろう! これはサポーターの皆さんのチカラも必要不可欠です。僕や新太が夢を抱いたように、サポーターの皆さんの熱い応援の中でプレーすることが、子どもたちにとってどれほど大きな夢、目標となっていることか。サポーターの皆さんの応援、チカラもお借りしながら、アルビレックス新潟として新たな若き新潟の戦士を輩出していくことができればと思います。
勝った次の日のオフは気持ちがいい!
徳島戦は勝点3を取ることができました。ホームで勝てていなかったのは、サポーターの皆さんももどかしかったと思います。内容はどうあれ、しっかり体を張って勝点3をもぎ取ったのは明るい材料です。もちろん勝って反省も忘れずに。ボールを保持する相手に、どうプレスをかけ、ボールを奪うのか、ハッキリさせておくこともオフ明けのトレーニングなどで突き詰めていければいいですね。
連戦が終わってのオフは、正直ホッとします。それ以上に、勝った次の日がオフなのは、気持ちよく迎えられるものなんです(笑)。心も体もリフレッシュして、オフ明けを迎えられる。みんな、今日のオフは気持ちよく時間を使っていると思います(笑)。でも、そういうリフレッシュは選手にとって必要なことです。
次はキタジさんのいる熊本戦
4月1日のJ2リーグはロアッソ熊本戦。熊本と言えば、新潟で指導をしてもらったキタジさん(北嶋秀朗ヘッドコーチ)がいます。キタジさんはいつも前向きで、気持ちの切り替えがすごく上手です。だからこそ、あれだけ偉大な記録を残されたのかもしれません。それに、表情を読み取ったり、選手の思いを引き出してストレスを和らげてくれる存在でした。自分がちょっと落ち込んだ時にも、「どうした、何か元気ないじゃん」と声をかけてくれたんですよね。
サッカーに取り組む姿勢をキタジさんはすごく強調していました。そんな指導者がいる熊本だから、おそらく劣勢になっても、しっかりとしたメンタルで立ち向かってくるんじゃないかと思います。最後まで気を抜かず、集中していきたいですね。