【第8回】実りある試合を重ねた先に、結果を求めて
2018/8/14

寒の戻り、皆さん体調は崩されていませんか
寒の戻りというか、先週は気温が低い日が続きました。僕は大丈夫でしたが、皆さんは体調を崩されていませんか? 特に試合をスタジアムで観戦された方々は大変なホーム2試合だったのではないかと思います。僕も現在、ある意味でサポーター的な目線で試合を追っていますが、この2試合はなかなか難しい時間が多かったと思います。ちょっと温かくなる瞬間がほしいですね(笑)。
ルヴァン・横浜FM戦は悪い試合だと思わない
4月4日のルヴァンカップ・横浜F・マリノス戦は1-3の敗戦に終わりました。ルヴァンは3試合目。ここまで1分1敗で勝ちが欲しいゲームではありました。ただ、負けはしましたが、球際の激しさや選手のテンションの高さを感じられ、僕個人としてはそこまで悪い試合だとは思いませんでした。
もちろんボールを簡単に失ったりした場面はありましたが、チーム全体のまとまりや、課題はハッキリ見えてきた試合。先のあるゲームだったんじゃないかと感じています。
積極的だった両サイドバック、岡本くんはすごい経験
(渡邊)泰基は2試合目で少し冷静にやれた部分もあったと思いますが、両サイドバックは積極的で、しっかり裏をカバーしながらも相手の足元に出たボールを奪いに行ったり、インターセプトをした場面もありました。双方の特長である推進力や対人の強さも見ることができて、明るい材料でした。
CBにはU-18の岡本くんがスタメン出場しましたね。すごい経験をしていると思います。正直、僕が高3の時は試合に出るなんて、想像することもできませんでした(笑)。チームがどういう状況で出たかは分かりませんが、退場こそしたものの、強さや厳しさも出せていたと思いますし、これからが楽しみです。クラブにとって未来がある選手だと思います。
得点に絡む仕事ができると証明したターレス
得点はターレスが前線で収めて、裏に走り込んだ善朗くんが冷静に決めたものでした。まず、ターレスが得点に絡める仕事ができると証明したことはポジティブですよね。どちらかと言うと善朗くんは、足元でボールを受けて、クロスや質の高いキックで仕事をするタイプだと思うのですが、裏を狙ってスプリントをして得点を決めたのは、新たな発見というか。「そういうこともできるんだ」と感じました。
チームが前進するためのポジティブな課題を挙げるなら、相手のプレッシャーがある中で、ちょっとだけ角度を変えてパスを入れ、もう一度サポートをするところでのズレ。ファーストタッチが上手くいかず寄せ切られたりする場面もありました。ボールをしっかり扱うこと。どういう角度でサポートして、もう一度ボールを受けるのか。意図がチームとしてできてくれば、もっと裏を狙えるチャンスもあると思います。
達也さんの抜け出しは二段階上を行っている
今回は達也さんが入って、裏を狙う動きが活性化されていたので、横浜は裏をケアせざるを得ない状況を強いられました。そうなると、手前が空いてくる。達也さんのいい抜け出しをはじめ、すごく“らしい”プレーが見られた試合でした。前半の最後は決めたかったですが(笑)。
達也さんは抜け出しの鋭さや、抜け方のタイミングが本当にすごい。長年の経験だと思いますが、他の選手よりも二段階くらい上を行っているんじゃないかと思います。すごく質の高い、相手DFラインとの駆け引きができている選手だと改めて感じます。
その特徴ですが、横に動きながら、本当に欲しいタイミングでタテにスピードを上げるんですよね。出し手としては、そのタイミングさえ見ていれば、「ここ」というものが動きの中で伝わってきます。フラフラと動いていて一気にタテを狙われるよりも、「このタイミング」が分かる。岡山戦でも、ジュフンからロングボールが送られた場面がありましたが、しっかり体を作って、そのスペースに欲しいという意思表示が見て取れました。出し手は本当に分かりやすいと思います。
疲れた時にどれだけ頭を働かせるか
横浜FM戦は後半3点を奪われて引っくり返されたので、見方によっては運動量が落ちたことが問題という指摘もあるかもしれません。前半に比べてプレスの質や強度が落ちるのは、後半、時間が進めば間違いなく起きることです。そこが改善できればもっと面白いサッカーができるとは思いますが、僕はそういう要素より、「疲れた時にどれだけ頭を働かせて、周囲と敵の位置やスペースを共有できるか」に焦点を当てたいと思います。
それにはもっと試合を重ねる必要があると思いますし、改善できる要素がある。コミュニケーションや共有が、後半にしたがって落ちてしまったことが、3失点、特にセットプレー以外の2失点では大きいんじゃないかと感じています。
流れでの2失点は、動いた相手に対してフラフラと付いていかず、どのポジションを守るべきなのか、どこに自分は戻らなければいけないのかをハッキリさせること。前述した敵の位置やスペースの共有をする。単純にもっと喋らないといけないし、それによって改善できることが大きいのではと思います。
ルヴァンでのプレーは大きなアピールになり得る
ルヴァンは1分2敗。リーグ戦を戦いながらなので、これまで同様にリーグで出場機会が限られている選手が、チャンスを得る流れになると思います。逆に、いまのチーム状況から考えれば、いいパフォーマンス、影響を与えられる選手は大きなアピールだし、チームにも明るい材料になり得ます。
横浜FM戦では選手たちの球際の激しさや、切り替えで守から攻に出て行く躍動感を見ることができました。僕は見ていて楽しかったし、課題があるにしても、ポジティブなものなので、「まだまだ楽しみだぞ」と感じました。次の仙台戦もみんなの頑張りに注目してほしいです。
実りある試合を重ねた先に、結果を求めて
岡山戦は率直に言って厳しいものになりました。首位の相手に勝てなかったり、J1復帰に大事だと言われる連敗をしない、という結果が達成できなかったこともありますが、「何もできずに負けてしまった」ほうが、選手たちの精神的なダメージは大きいんじゃないかと思います。
サポーターの皆さんから怒られるかもしれませんが、J2リーグは1位、2位が自動昇格。3位から6位までがJ1の16位を含めた昇格プレーオフに回ります。僕たちの目標はJ1復帰。1位2位に入ることがもちろん良いとは思いますが、最終的にはプレーオフで勝つまでが、J1の権利だと思います。
1位2位にこだわる必要がない、というわけではないんです。でも、目標はあくまでもJ1復帰です。僕が言いたいのは、連敗どうこうということではなく、実りのある試合を重ねていった結果として、J1昇格を求められたら良いと。だからこそ、今回は何もできなかったというメンタル的なショックが大きかったんじゃないかと感じます。
迷い、探りながらやっていた印象を受けた新潟
岡山戦も熊本戦と同様に3バックで臨みました。布陣ばかりに目を向けることは、大きな意味を持たないと思いますが、選手たちは少し迷いながら、探りながらやっているのではとも感じました。3バックの方がパスコースも多くなり、ボールが回るのではないかと前回コラムで言いましたが、配置ひとつで『どう動かなければいけないか』と、型に自分たちをハメてしまっているような。
『どこにいなければいけない』と、とらわれて過ぎているようにも映像を見て感じました。逆に岡山は長澤監督がコーチから数えると5年目で、やりたいことが整理されていて、「相手がどうしたら嫌がるか、どう自分たちは支配していきたいか」を明確に実行していました。どこに入ったら強くプレスに行くかもハッキリしていた。そこで上手くいけば、選手のメンタルも変わってきます。少し整理ができていなかった新潟に対して、気持ち的にも優位に立っていたことが、岡山が主導権を握り続けた要因だと感じます。
ズミさんのプレーにヒントがちりばめられていた
その点でも、ズミさんのプレーにはヒントがちりばめられていたと僕は思いました。やっぱり、ズミさんの復帰は、この日の新潟にとって一番大きなことだったんじゃないでしょうか。
ズミさんが入って、フォーメーションが変わったわけではないと思います。それでも、新潟には明らかに余裕が生まれ、ボールが循環し出しました。前半から、岡山はボール保持者に強くプレッシャーに行き、判断が遅れればさらに一歩前に出ることで、新潟はバックパスを強いられる場面が多くなっていました。
ズミさんは相手と相手の間に上手く入りながら、自分にボールが入ると少ないタッチ、たとえば貴章さんにワンタッチでタテに出したり。相手のプレッシャーを無力化したり、時に活かしながら自分たちがボール保持する時間を作っていました。ボールがなくてもいい場所にポジションし続けることで、潤滑油のような役割を果たしていました。まさにズミさんのすごさで、相手にとって厄介だったと思います。
いい伝染を広げることはできる
上手くいっていない時に、ひとつプレーを見せて、「あ、これは上手くいくんだ」と他の選手にも伝えられたんじゃないかと。だから、何回かズミさんがやったようなプレーをイソくんが見せて、いい影響が伝染しかけていたように僕は思いました。改めて、ズミさんの影響力の大きさを感じました。
ズミさんと同じような影響力を及ぼすのは簡単じゃないかもしれません。でも、自分ができるプレーを確実につなげることで、いい伝染を広げることはできるかもしれない。それはボールを持った時だけに限ることじゃないですし、守備でも球際の激しさ、切り替えの速さを見せて、「どうチームとして向かっていかなければいけないのか」をメッセージとして発信できる選手が、これからもっともっと増えていかなければいけないと思います。
「新潟を食ってやる」相手に、どういう姿勢で臨むか
J2の特徴ある、色々な策を講じてくる相手に、どう試合を進めていかなければいけないのかは、選手たち自身が発信していかないといけません。それが今後、最も大きな部分じゃないでしょうか。
今まで、新潟はどちらかと言うとチャレンジャー精神というか、「食ってやろう!」といった意識のもと、J1で闘ってきたと思います。それがうまく合致して、新潟の良さも出ていたと思いますが、今回、J2に落ちて、目の敵じゃないですが、「新潟を食ってやる!」とたくらむチームに、どういう姿勢で臨まなければいけないのか。間違えてしまうと、難しい試合になると改めて感じさせられました。
刺される前に刺せ
褒められた言葉ではないかもしれませんが、僕らがよく言われていたのは、「最初からナイフで刺しに行け。刺される前に刺せ」と。そういうメンタリティをずっと持ち続けられるか。相手が、「うわ、こんなに来るのかよ」となるくらい、一発いかなければいけないんじゃないかと思います。
今回、それを岡山は上手くできていたと思うんですよね。厳しく、多少ファウルっぽい、ファウルかもしれませんが仕掛けてきて、新潟の選手は「なんだよ!」となったかもしれない。結局、あのPKは少し遅れて足を出したとジャッジされたかもしれませんが、その前、その前のひとつひとつのプレーで先を越されていたのが、出足が遅れた部分につながったかもしれません。相手を傷つけることはあってはいけないですが、最初から姿勢を示さなければいけないと思います。
新潟はどういうチームなのか
僕は、新潟はそれができないとはまったく思っていません。僕たちは川崎フロンターレじゃない。ミスがあってもいい。でも、相手よりもユニフォームを汚して、相手よりも闘っているかどうか。その意味で、次の試合どういうパフォーマンスを見せてくれるか、しっかり見つめないといけないと思っています。もうひとつ。僕たちはサポーターと一緒に戦うわけですので、そういう人たちに示す必要があるんじゃないでしょうか。
次節対戦する栃木は、J3から昇格してきましたが、ひとつひとつの局面を戦って、突き詰めて勝点を積み重ねて成し遂げたチームだと思います。手強いチームだし、なおのこと強い気持ちで戦うことが大事だと思います。自分たちで自分たちを追い詰めることなく、しっかりチーム・クラブで肩を組み、一丸となっていきましょう!