【第9回】局面でありながら、つながりでもある
2018/8/14

レディース・千葉戦を観戦しました(今季2回目)
先週末に市陸で行われたレディースの千葉戦を観戦に行きました。用事があって後半からの観戦だったのですが、チャンスも多くあって盛り上がりました。FWの佐伯選手が裏を狙って再三チャンスを作っていましたね。試合はPKで先制して、「今シーズン初勝利か」と思われましたが、試合終了間際にCKからの流れから失点して引き分け。優位に進めている中で試合をどう締めるか、またフィニッシュの質を高めて相手の息の根を止めるかを、チームとして統一し、全体で高めていきたいんじゃないかと感じます。
僕は前回観戦させてもらった時から、着実な積み上げを感じました。守備は集中を切らさず、キャプテンの(中村)楓さんと(久保田)麻友さんのCBが、ボールが入ってくるところも潰せていました。いい守備からいい攻撃、という意図をすごく感じました。
それ以上に試合を見て感じるのは、レディースの選手たちが試合を戦う上での献身性だったり、体を張るプレーです。自然と拍手や声援を送りたくなりましたし、スタジアムで試合観戦する方々も、熱くなるものがあるのではないでしょうか?
応援してもらえることを表現して、何かが始まる
レディースは、現状トップチームのように全員がプロ、という集団ではないと思います。でも、サッカーにかける想いや、どういう気持ちで向き合っているかが試合を通して伝わってきて、「本当に価値あるものを見せてもらったな」と感じました。
その姿勢は競技レベルに関係なく、参考になるものだと思います。ボールパーソンをしていたのはアカデミー(U-15)の選手たちでしたが、プレーだけではなく、そういう部分も注目してほしい。「まず応援してもらえるだけのことを自分たちが表現して、何かが始まる」。レディースだけではなく、トップからアカデミーまですべてがそうだと思いますし、それが見られる環境、触れられる環境にあるのは新潟ならでは。今後も日程が合えば、会場に観戦に行きたいと思いますし、ぜひ皆さんも足をはこんでいただければと思います。
4-4-2の布陣を敷いた栃木戦
トップチームは翌15日にアウェイで栃木SCとの対戦でした。まず、アウェイのグリスタには、ホームよりも多くの新潟サポーターが駆けつけてくださっていました。本当に感謝しかありませんし、選手たちは分かっていると思いますが、当たり前のことではありません。改めてこういった環境を作ってくださる方々のために、勝ちを見せることもありますが、どう戦って熱くなってもらうかが大事だと感じました。
新潟は熊本、岡山での3バックから、4-4-2の布陣を敷きました。ここ2戦で試行錯誤し、戸惑いも感じられた流れを断ち切るためにも、キャンプから取り組んでいる4バックで、「まずは守備からしっかり。安定した守備から相手とどう戦うか」を明確にしたと思います。
もうひとつは、栃木が9大黒選手のような上手い選手はいますが、直近2試合よりも特徴的な選手を活かそうとする相手ではなかった点もあると思います。4バックにしても、相手に嫌な部分を突かれて不利になる戦いにはならない、という読みがあったのではないでしょうか。
大きな問題はなかったが、スキを感じた守備
実際に今回の試合、流れの中では4バックでの守備に大きな問題はなかったと思います。CBに入った広瀬君は前への強さが際立っていましたし、前線の起点である25ペチュニク選手に厳しく行ったり、要所で選手たちの良さが出ていました。4バックに戻して完全に攻略されての敗戦であれば、相当ダメージは大きかったと思いますが、そうではありませんでした。まだまだ改善はできますし、前は見えていると僕は思います。
ただ、選手たちは強い気持ちを持っていたとは思いますが、まだ守備ではスキを感じる場面がありました。たとえば前半14分。栃木5ヘニキ選手が安田さんの裏に走って、スローイン一発でピンチになりかけた場面です。裏に走った選手に誰が付いていくのかをハッキリと、かつ共有するべきでした。
事前に栃木がロングスローを飛ばすことは確認されていたのでは。にも関わらずそうした状況を招いてしまったことは、準備と集中を問われるものだったのではないかと感じます。また、一度そうしたことが起きた時に、どういう声がけや雰囲気を作り直せるかも、90分を進めるうえでは大きなポイントであると僕は思います。
カンペーさんがいなくても
今節は最終ラインにカンペーさんがいませんでした。ドシッと構えて、的確なコーチングや立ち居振る舞いができるカンペーさんは、存在だけで安定感が違います。でも、そういったちょっとしたスキや雰囲気を感じ、修正できるカンペーさんがいなくても、「ちょっと集中できていない、ピリッとさせよう」と感じて、誰がそう振る舞えるか。もちろん全員がそうなれば、不用意な失点は生まれないんじゃないでしょうか。
厳しいですが、「誰かが出ていないから」という言い訳は通用しないし、責任を持ったプレーが僕たちには求められています。規律を重んじて、チームの空気を感じ、発信できる選手が、J1昇格の為にドンドン生まれてこなければいけません。
得点パターンを磨きに磨いていた栃木
2失点を含め、ピンチは流れの中ではない、ロングスローやCKからのプレーでした。「これからボールが入ります」と、明らかに認識できるプレーから、何度もピンチを作られてしまった。19服部選手がターゲットになり、大黒選手が反応してゴールを狙う。スタジアム観戦した方も、DAZNで試合を見た方も、この形だけだったのは分かると思います。
ただ、栃木は、ロングスローからチャンスを作り、得点を狙うプレーを磨きに磨いているのも明らかでした。その部分に関しては栃木の方が技術は高い。そういうチームに、マークに対応する選手だけでなんとか対応を、というのは非常に難しいと思います。もちろんはね返せれば一番ですが、競る選手はどうしても出たボールと動く選手に合わせたリアクションになるので、確率は低くなります。それが貴章さんであっても、です。
サッカーは複数のスポーツであり、連携のスポーツ
服部選手にいいジャンプをさせないために、周囲の選手たちが助けられること。走り込むタイミングで体をぶつけたり、スペースに入り込んで邪魔をしてみたり。どうしたら嫌がるのか、考えながら対応できていたのかどうか。マークに付く選手はもちろんですが、周辺もどういうことを考えて、ピンチを招くことなく対応できるかを話して感じながらやらないといけないと思います。
1対1と言いながら、サッカーは11対11。複数のスポーツであり、連携のスポーツです。
僕はいま、U-18で練習をしていますが、「ひとつの局面を、ひとつの局面としか見られない」ことがあります。局面でありながら、つながりでもあることを理解するのが、サッカーにおいては大事なんだとつくづく感じます。
感覚は錆びない。大黒選手の凄み
栃木では、得点を決めた大黒選手の凄みを改めて感じさせられました。DFの立場から言わせてもらうと、本当に嫌な相手です。守備は原則として、相手とゴールの間にポジションするので、遠くに大黒選手を置かなければいけません。でも、大黒選手は自分が考えているものと違うタイミングで、しかもワンタッチで常に狙っている。DFとしてはすり減るし、脅威だったと思います。
得点の場面もそうでしたが、サッカーはボールが主役なので、選手もそちらに目が行きがちです。でも、大黒選手はそれに固執せず、ワンタッチでゴールを狙える位置にポジションを取り続けていますよね。自分がどうプレーしたら相手の脅威になり得るかを理解してプレーできているし、その質にこだわり抜いているな、と。年齢を重ねて、体力的にはピーク時より劣っているかもしれませんが、ゴールを奪うタイミングやスペース認識という感覚は錆びていません。長く活躍する理由がよく分かります。
カワくんにしかできない方法でチームを救ってほしい
一方、カワくんは栃木戦ではシュート0本に終わりました。シュートだけではなく、カワくんの特長であるゴール前の鋭さや背後への抜け出しを、なかなか出せる場面がありませんでした。いつも明るく、優しいカワくんですが、その人柄から「なんとかこの状況を打開したい」と強く思っているはず。だからこそ、ボールを受けてチームを助けようとしているんじゃないかな、と僕は推測しています。
でも、相手にとっては逆に怖さが薄れているんじゃないかと。新潟にはズミさんやマサルくんなど、ボールに絡める選手がいますが、最終的にゴールを取れるのは、カワくんや貴章さんしかいない。僕はそう思っています。一撃必殺のスナイパーのようなミドルシュートや、相手の前に入る力強いドリブル、スキを突いてのワンタッチシュート。チーム、サポーターを含めてアルビレックスは、そういうプレーでゴールを決めてほしいと思っているし、そういったカワくんにしかできない方法で、チームを救ってほしいと思います。
個性を上乗せして、僕らは強くなっていく
「2失点後だから」と言われるかもしれませんが、栃木戦の終盤、ゴールに迫る猛攻を見せられたのは、次節に向けてもうひとつの明るい材料であると思います。特に交代した選手が、自分の持っている特徴を上手くチームに還元していました。新太は動きながら間に顔を出していましたし、達也さんは抜け出しや、時間を使いながらのプレーで攻撃の厚みを持たせる部分。個々の良さを表現しつつ、チームが機能した部分はポジティブなんじゃないかと。
規律の話は前述しましたが、それだけをやっているのであれば、コンピュータと同じです。もともとの新潟のスタイルを貫きながら、いまの選手が、それぞれの個性を活かしながら上乗せをしていかないといけない。いつか見たアルビレックスを追いかけているわけじゃなく、今をより強くしていくか。それがサッカーの醍醐味であり、そうすることで、もっと強い新潟になると、僕は思っています。
結果を受け止めなければいけない
3連敗という結果と現状は、強大なプレッシャーが圧し掛かってはいないかもしれませんが、逆に言えば、深刻になってもらわないといけないところもある(笑)。常に反対を言われるのが、結果を出していないチームであり、プロスポーツです。ただ、いま自分たちは結果をしっかり受け止めなければいけないことだけは確かだと思います。
J3から今季J2昇格した栃木や、対戦した時点では下位にいた熊本。そして、上がっていくためには叩かなければいけなかった岡山。どこも、練り上げた戦いで向かってきましたし、J2の厳しさを体感した3連敗だったと率直に感じます。「まだある」なんて思っていたら、間違いなくズルズル行くでしょうし、受け止めや気持ちの整理は大事になってきます。
筑波の降格に、自分が感じたこと
いまのチームのプレッシャーと、比べることはできないかもしれませんが、僕も筑波大学で降格と昇格を経験しました。大学3年の時に経験した降格は、個人的に今の新潟と、すごく似ている状況だと思います。筑波はそれまで一度も二部に降格したことがなくて、選手や、関係者も含めて、「落ちるわけがないだろう」と。1学年上には、いま川崎フロンターレで活躍している選手もいました。そういう環境に甘えているというか、緩んだ雰囲気が間違いなくあったと思います。
今にして思えば、「不満を出し切れなかったな」と。負けている状況で、不満を出すことがいいことではないかもしれませんが、ちょっとした問題を、その場で解決することができず、ズルズル引きずっていった結果でした。言えなかったのは、チームとしての塊がなかったこともありますが、「まだ何節あるから」という気持ちの余裕もどこかにありました。同じようにならないために、改善しなければいけないことだと思います。
正直、最初の段階で変われれば、降格まで行くことはなかったと思うのですが、気付いた時にはどうしようもない状況というか。何をしても遅い状況になっていました。1点取られればオドオドするし、1点勝っていてもオドオドしていた(笑)。早いうちに手を打つ、悪い流れを払しょくするのが大事だと思います。それは誰かがやってくれるわけじゃない。「俺が」という選手が出てきてくれると信じています。
ルヴァン仙台戦には意味がある。大宮戦は今後を占う
明日はルヴァン・仙台戦です。いま、仙台はJ1リーグでもすごく調子がいいです。それは、練習でサブ、スタメンとも充実していることを表していると思います。仙台はすごくハードワークしますが、新潟もそういうサッカーを志向している中では食らいついていく必要があります。
仙台を上回れるだけの規律、激しさを出していければ、リーグ戦にも間違いなくプラスになります。僕は明日は、なかなか試合に絡んでいない選手たちが、これまでリーグで試合に出ている選手たちにメッセージを伝えられる、すごく意味のある試合になり得ると思っています。自分もビッグスワンでの観戦をすごく楽しみにしています。
そして22日は大宮戦。大宮もJ2リーグで苦しんでいますね。どういう展開になるか、まだ予想できないですが、大宮の選手陣容を見ると、個々の能力は際立っています。それは新潟を上回っているという評価もあるかもしれませんが、それは諸刃の剣で、良さでもあるし、弱点にもなり得る。大宮の選手に気持ち良くプレーさせないために、激しさや規律を持って立ち向かっていけるかを見たいです。両チームにとって、これからを占う大事な一戦になると思います。