【第11回】勝点3が、どれだけの良薬か
2018/8/14

選手たちの想いが伝わってきた立ち上がり
新潟にとっては4連敗の状況でレノファ山口FC戦を迎えました。好調・山口、しかもアウェイとはいえ、チームには勝利が求められていましたし、選手たちは大きなプレッシャーを感じていたと思います。でも、試合の立ち上がりから、みんなが球際にバシッと行けていて、以前にコラムでも話していた、「相手にやられる前にナイフで刺す」という気迫を感じました。選手たちがどういう想いでこのゲームに臨んでいたか、よく伝わってきました。
改善されていた守備バランス
まず、守備では適切なポジションを取り、ボールが出たところにいいスピード感で体を寄せ、相手を自由にさせませんでした。フィフティーフィフティーのボールにも体を張れたことで、新潟にボールが転がってきました。特に、セカンドボールを拾うことで、自分たちに流れを持ち込めたんじゃないでしょうか。
おそらく、チームは守備でどういうアプローチをするかを話し合い、練習で整理をして、この試合に入っていたと思います。守備バランスや対応は、4連敗をしていた時よりも組織されてできていました。加えて、『やらなければいけない』気持ちがプラスされて、試合を優位に進められたと思います。
そのセカンドボールの争いでは、先発で出場した新太が存在感を発揮しました。ボールを奪われても真っ先にプレスをかけたり、体を入れ直してマイボールにしたり。彼らしい、ガムシャラさや体の強さが活きていました。また、ズミさんも相手の攻撃的な選手にボールが入った時には、プレスバックして奪うシーンが何度かありました。新潟のいい時間は、両サイドハーフが守備の意識を持ちながら、攻撃にも関わっていましたね。
どこを目指すかが明確だった
新太は「前へ、前へ」という気持ちが強いので、チームとしても多少アバウトでも前へのチョイスがありました。これはマサルくんとカワくんの関係でも見られたことで、何回かボールを奪った後に、マサルくんからカワくんへ、裏を狙うボールが出ていました。それはカワくん、マサルくん双方の良さを出すことにもつながると思います。マサルくんは広い視野があり、チームメイトの動きを見逃さずパス出せる選手でもありますから。
奪われることを気にするのではなく、どこを目指すかを明確にすることができていました。そうした良さをどんどん強められれば、相手DFは自分たちが攻めていても、刃物を突きつけられているような感覚を与えられるのでは。守備でも相手を支配するような、新潟らしい怖さを出せるでしょうし、もっとリズムが生まれるんじゃないかと感じます。
新太の良さをもっと出せるかが楽しみ
持ち味を出した新太ですが、あとはラストの部分を磨いていけば、ゴールという結果も見えてくるんじゃないかと思います。自分でドリブルしてどうこう、ではなく、ゴール前の鋭さや泥臭さで勝負するタイプ。FWにパスが入った時に、もう一度ゴールに動き出せるのも特長なので、ズミさんやボランチが引き出して、新太が3人目で受けられるような形が出てくれば、もっと良さが前面に出てくるんじゃないでしょうか。それには新太が試合に出て、改善もし、要求もしないといけない。バリエーションを増やしていけるか、楽しみです。
山口戦翌日、僕はU-15に加わっての練習でした。その後に筋トレをしようとクラブハウスにいたら、トップチームが新潟に帰ってきて。新太はそのままクラブハウスに来て、リカバリーをしたり、体のケアに努めていました。そこで少し試合についての話もしました。
話していて、あいつはすごく得点が欲しいんだろうと思います。本人は試合に90分出られなかったことをすごく悔やんでいて、「足がつってしまった」ようなことを言っていました。コンディションはこれからどんどん上がっていくと思うので、また新太らしいプレーで、チームに貢献しつつ、あいつも求める結果を期待したいと思います。
みんなの良さがひとつひとつ出た先制点
16分の先制点は、左サイドでの相手スローインから。マサルくんがスライディングで相手からボールを奪ったのがひとつのポイントでした。見逃せないのが右サイドバックの原くんで、マイボールになりそうな時にはもう動き出していたんですよね。相手の動きよりも一歩早かったので、空いていたスペースを使うことができました。
少し新潟に流れがあったのは、マサルくんと接触した32丸岡選手が痛んで倒れていたこと。セカンドボールでポジションを取ったイソくんにボールが流れてきたのですが、本来守るべき丸岡選手がいませんでした。ただ、イソくんはすごく冷静にGKの位置を見ながら、巻いたシュートを決めたのはさすがだと感じました。みんなの良さがひとつひとつ出たゴールだったと思います。
シュート数20本
山口戦、公式記録では20本のシュートを記録しました。今まではシュートを撃てるのに撃っていなかったこともありますし、撃てる場所に行けていなかったこともあると思います。先ほども言ったように、今回は相手DFラインの裏を、多少アバウトでも狙う場面がありました。それによって相手DFが後ろに重心を持っていかざるを得ない状況になったのも、シュート数が増えたことにつながったのではと思います。
ボールを大事にするのももちろん大事なことで、どちらが正解、ということはないと思います。2つを上手く選択しながら、「この時間だから、どういう状況だから、このプレーを」。判断できたり、相手の流れを読めるようになると、2つが噛み合ってくるんじゃないかと。これから試合を見る中で、選手たちがどういうプレーを選択していくかも、見どころのひとつとして楽しめればと思います。
後半、相手に押し込まれた原因は
ただ、後半は逆に山口に押し込まれる時間が長くなりました。前半は新潟もフレッシュで、1stディフェンスでボールに行けていたのですが、後半、相手がリセットをした中で、1stの次、後ろのスペースが課題になったかなと思います。
1stを意識して、強く行くほど後ろのスペースはどうしても空いてきますが、山口はそのスペースに侵入しようとしたように思います。しっかりと連動して埋められなかったため、嫌なところにボールを付けられ、突破を許していました。1stに強く行く部分は持っていなければなりませんが、誰がカバーに入るのか。それに、もしかしたらゆっくりと構えて全体でタイミングを合わせる選択もあるかもしれません。
攻撃も守備も、常にひとつだけの武器で戦えるわけではありません。チーム・組織としての連係・連動した守備ができるか。後ろから声を出して、アクションが必要かを示していければと思います。
ミスはサッカーの魅力。どう慌てずできるか
64分の失点は、正直ひとつ前のプレーで普通にやっていれば起きることもないものだったと思います。何でもないところからミスが起きて、リズムは崩れていきますし、それがサッカーでもありますよね。
ミスが起きるのはサッカーの魅力のひとつ。そうした時に、どれだけ慌てず、辛抱強く守備ができるかが、問われていたと思います。その点では、小野瀬選手のドリブルへの対応にも、改善の余地はおおいにありました。あれだけ人数がいて、何回も切り返されてシュートを許すのは、軽いプレーだったのかなと思います。
山口が決め切れず、ふりだしに戻った流れ
ゲームは失点後に、逆転されてもおかしくない場面がありました。でも、そこで山口が決め切れなかったことで、もう一度流れが「ふりだし」に戻ったというか。山口にとっては大きな反省で、新潟は幸運にもリズムを取り戻すことができました。そこから、自分たちがリズムをつかむために何をするべきかが、ひとつの課題であると思っています。
今後も、得点後に失点を喫することはあります。どうやって流れを自分たちに引き寄せるかは、チームの共通理解があれば、前半のようないい流れに、もう一度引き込めるように変わってくるんじゃないでしょうか。失点から巻き返せず、ズルズルいく状況が連敗時は多かったので、そこから立て直すための策・方法を考えていければと思います。
交代選手が盛り返すきっかけに
後半、さらに新潟が盛り返すきっかけになったのは達也さん、貴章さん、善朗くんの交代出場選手でした。FWは、ターレスとカワくんの時は、どちらかと言えば横並びの関係だったのですが、達さんと貴章さんではハッキリと役割が決まりました。達さんはしっかりとボールを引き出し、1.5列目のところで細かく動いてボールを出し入れすることで、リズムを作ってくれました。
さらに、達さんが落としたボールからの展開を狙って貴章さんが裏を狙いに行ったり、サイドからのクロスにヘディングを狙いに行く。攻撃のパターンが、2人が入ることでできたのが、新潟の攻撃回数が増えていった一因でした。
感じたのは達さんのサッカーに対する深みというか。いくら目で見て分かっていても、試合に入って実践できるかが、サッカーでは本当に難しいんですよね。しかも、与えられた時間でチームにもたらすことができるのは経験の強み。そこにチームも乗っていければと思います。個人的に、2坪井選手とのマッチアップは熱くなりましたね(笑)。
善朗くんも、新太とはまた違った良さを出していましたね。以前も話していましたが、クロスの質やパス精度の高さを随所に出しました。新しく入った3人の良さを活かした結果、攻撃のリズムが上手く出ていました。
「きたぁぁぁ!」となったPK
最後のPKの場面は、「きたぁぁぁ!」と(笑)。ラストワンプレーですよ! 正直、守備としては軽率かな、と思いますが、僕はあそこでPKを取れたのは、「まだ新潟に勝利の女神が寄り添っている」と感じました。本当に乗っていない、調子の悪いチームだったら、ああいう場面でも笛を吹いてもらえなかったり、PKを蹴る選手が外したりするんですよね。そこは戦術うんぬんじゃないですが、明るいことだと思います。「まだ新潟は大丈夫」というワンシーンだったように感じます。
冒頭に言ったように、チームは4連敗の状況にありました。明るく振る舞おうと思っていても、結果は事実としてありますし、どうしても難しい部分はあったと思います。でも、試合後の選手たちのあんなに喜んでいる表情を見れば、どれだけ勝点3がチームにいい薬なのか、明るい材料なのかが分かりますよね。
新潟の良さは暑い中でも活きてくるはず
次は3日にアウェイ・金沢戦、そして6日にはホームで大分戦です。この流れに上手く乗っていければと思いますが、これからは気温も高くなったり、コンディションは難しくなってくると思います。
上手くフレッシュな選手を使ったり、チームとしてどういう守備をするかを共有するか。守備の連動や、いつ行くかをハッキリさせるかは暑い時期ほど大事になります。新潟の良さである球際やカウンターの強さは暑い中でも活きてくるはず。巻き返していきましょう!