【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第6回

2009/4/16
「カンコーは菅公(菅原道真公)だ」


 J1第5節「京都×新潟」。試合終了後、しばらくフリーズして、それから猛然とノートパソコンで調べものを始めた。ひかりTVのモニターでは京都・パウリーニョのヒーローインタビューが行われている。僕はろくすっぽ聞いてない。

 京都サンガの「×」ってマークのユニホームは何だ? 自分で言うのもアレだが、僕は人一倍、ちょっとしたことが気になる性質である。今シーズンはピッチサイドの「スポーツ弁当」という広告板にもひきつけられている。どんな弁当かと興味津々だ。調べたらJリーグのオフィシャル・スポンサー「HottoMotto」の新ラインナップだった。

 京都公式サイトをチェックしたら、サンガのユニホームは「CW-X lab.」というワコールのやってるスポーツブランドであることが判明した。おぉ、これは面白いことだと思って、それからJ1、J2全クラブのユニホーム・サプライヤー調査にかかる。楽しくなった。全公式サイトにアクセス。カターレ富山の「ファンクラブ」のとこ、クリックすると「ぬりえ」が出ますよ。ユニホーム・サプライヤーで感動したのはファジアーノ岡山の「尾崎商事」、これは「カンコー学生服」で知られる学生服・体操服のメーカーなのだ。

 で、京都と岡山には共通点があった。ワコールも尾崎商事も言わば御当地サプライヤーなのだ。知らなかったが、ワコールは京都、尾崎商事は岡山に本社がある。こういうユニホーム・サプライヤーのパターンは、以前は考えられなかった気がする。

 まぁ、もちろんこういうのは何が正解だという話ではない。「アディダス」でフットボール・カルチャーを体現する新潟も正解(何よりステータス感がある)、一方、「OZAKI」という目新しいロゴを胸にJに乗り込んできた岡山も正解。
とりあえず、ひと通りの調査を終えてノートパソコンを閉じた。色々と納得。
 
で、新潟負けた。
けんめいに遠まわりしてみたが、負けに直面せざるを得ない。負けたかー。終盤、チャンスあったんだけどなー。
 新潟負けた。まぁ、このまま無敗でシーズンを終えるとは思ってなかったから、負けたって仕方ないのだが、そうですか負けましたか。そうですかそうですか。

 まず、条件が悪かった。
1、マルシオ欠場
2、序盤で失点する展開
快調に走りだした「09モデル・アルビレックス」が負けるパターンは何だろうと、実は考えてはみていた。1は当然、想定される。ナビスコカップで矢野、ペドロがいなかったときも苦しい戦いだった。マルシオはやはり、特別な選手だ。それはここ何年言われてきた「新潟はブラジル人頼みのチーム」という意味よりも、今のチームの絶妙のバランスの心臓部に位置する選手だから、という意味合いが強い。2は例えば大分戦をイメージして欲しい。あるいはナビスコ・磐田戦。守りの固いチーム、引いて守るチーム相手に序盤、失点したら現状、打開は難しい。

 つまり、新潟はマルシオ欠場の時点で、120パーセントの集中力を持って試合に入らなければならなかった。それが何となくボンヤリした入りだった。前半、なかなかエンジンがかからない。中盤でボールを失っては、やりくりをつける連続。

 又、京都がうまく戦った。3ラインの危機管理が的確。それに前節・鹿島戦(逆転負け)の反省から、終盤になっても意思統一が乱れない。柳沢敦、佐藤勇人を欠く陣容を思えば、知将・加藤久監督、会心の勝利だ。用兵面ではシジクレイのボランチ起用がヒットだなぁ。終盤の混戦で3枚めのセンターバックの役も果たした。戦術面ではサイドを上げさせることで、新潟のサイド攻撃のバランスを崩した。これは久さんに宿題をもらったよ。


えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。


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