【サッカーのチカラ 〜いま僕にできること、僕たちにできること(本間勲選手インタビュー・後編)〜】

2011/3/24
■2004年の新潟県中越地震のあと、それまでJ1に昇格して初の4連勝中だったチームは、とても苦しむことになりました

(地震翌日の10/24・セカンドステージ第10節[A]●1−3磐田、11/6・同12節[A]●3−6G大阪、11/10・同11節[N]●1−3柏、11/13・天皇杯4回戦[A]●2−3湘南 A=アウェー開催、N=国立競技場で開催)

「ホームでずっと試合ができない難しさを、あの時は本当に感じました。柏とのホームゲームを国立で開催というのは、実質アウェーでしたからね。ましてや、新潟からサポーターのみなさんが応援に来れるような状況でもなかったですし。そういう中でも、しっかり結果を出せればよかったんですけど……。

地震からほぼ1カ月後の、ホームゲーム再開となったFC東京戦は、みんなものすごくがんばっていた記憶があります。試合の最後は、普段なら絶対に足をつったりしない慎吾さん(鈴木慎吾選手、現京都)まで足がつって、それでもそのまま走ってて。チームは連敗中でしたけど、ホームで久しぶりに試合ができるということもあったし、何とかそこで結果を出して、新潟のみなさんに元気になっていただきたいという気持ちが何よりも強かった。みんな、そういう思いで、体が勝手に動いたんだと思います」

■震災地のJクラブとしての新潟を知るプレーヤーは、すでに本間選手だけになりました

「ただ、今回の地震はあまりにも被害が大きいですからね。僕たちは地震の後も聖籠で練習を続けることができましたが、仙台とか練習を再開する場所もあるのかどうか……。

僕らのときは食料も普通に入ってきていたし、ガソリンがなくなるということもなかった。仙台の大変さは、あのときの僕らとは比べものにならないと思います。

当時を振り返ると、僕らが被災地のみなさんから『試合、がんばって』と言っていただいたことが、本当に励みになりました。地震の直後は、なかなか結果を出せないで苦しい思いをしていましたが、地震で大変な思いをされているみなさんから声をかけていただくことで、『やっぱり、自分たちがやらなければ』という気持ちに改めてなりました。

そういう励ましの言葉をいただいて、毎日聖籠で練習をやって、久しぶりにホームで試合ができるというFC東京戦で結果を出せて。『やっと僕らも、少しはみんなを勇気付けることができたのかな』と、ホッとした気持ちが当時はありました」

■リーグの中断に伴い、チームも一時的に練習を休んでいます

「自分でやれることも限られますけど、できるだけコンディションを落とさないようにしたいです。聖籠のクラブハウスに行くんじゃなくて、新潟市内でジムに行って、筋トレだったり走ったりですね。ガソリンを使わないために全体練習が休みになったというところもあると思いますから。

シーズンが始まる前の時期よりも、今のほうが負荷も掛けられると思うので、しっかりコンディションを維持しておきたいですね。練習もフィジカルトレーニングから再開されると思うんですけど、そこでケガしたりコンディションを崩してしまったら出遅れてしまうし、チームにも迷惑を掛けてしまいますから」

■今シーズンは、例年とはまるで違った変則的なシーズンになることが予想されます。今年30歳となる本間選手は、この1年をどうプレーしていきたいと考えていますか

「シーズンに懸ける思いというのは、20代前半の頃と今とでは、やっぱり違います。正直なところ、今は『あと何回、自分は開幕を迎えられるのかな』というところですからね。今シーズンの試合数も減るかもしれないし、それを考えると、今まで以上に1試合1試合、大事にサッカーをやりたいです。それがすべてですね。サッカーをできる喜びを感じながら、1試合1試合プレーしたいですね」

■リーグが再開されれば、仙台、そして鹿島とも対戦します。本間選手にとって仙台のユアテックスタジアム、鹿島のカシマスタジアムは、どういうスタジアムですか

「どちらもサッカー専用で、雰囲気があるスタジアムです。ユアテックは仙台のサポーターだけではなく、新潟からもたくさんのサポーターが駆けつけてくれて、『アウェー感』、ダービーの雰囲気を感じることができる素晴らしいスタジアムですね。カシマは本当に大きなスタジアム。何度も優勝しているからこその伝統が感じられます。

ユアテックやカシマが、どの程度の被害を受けているのか、とても心配ですが、仙台でも鹿嶋でもアウェーゲームがあるわけですから、自分たちはそのときに良いサッカーができるよう、しっかり練習をしていかなければなりません」

■リーグ再開に向けて、今の気持ちを聞かせてください

「個人的にはこういう状況で、リーグ再開ということ自体、なかなか考えにくいところはあります。被災地の知り合いに電話をしたときも、『大丈夫だった?』とたずねることすらためらわれてしまうような、深刻な災害が起こった後の今の状況で……。

それでも、自分たちにはサッカーをする環境があるわけだし、見方によってはあらためて準備する時間ができたともいえる。福岡との開幕戦で、これからにつながる内容のあるサッカーをやれたのだから、さらに質の高いサッカーをするための準備をしていきたいです。もっといいサッカー、いいゲームができると思っています。スタジアムで再びサポーターのみなさんと会える瞬間を待ちながら、練習に打ち込んでいきたいと思っています」


【了】


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