【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第101回(後編)

2011/7/28
 ここからは守戦だ。急に清水が元気になった。僕は今年の清水がよくわからない。選手が大幅に入れ替わり、開幕早々は降格候補だと思った。その後、ゴトピ監督が奇手を打ち続けている。いや、「選手でさえ当日までどんなシステム&スタメンかわからない」と笑い話になっている。それでも星を拾ってまずまずのところにつけているのだ。中2日のこの試合は「前半、新潟にやらせて温存」だったのか。それとも敵に退場者が出てホントに元気になったのか。

 まぁ、新潟のプレスは確実に減じた。清水にとってはスペースが生まれた。清水の武器は小野伸二だ。後半になって売り出しの大前元紀もピッチに入っていた。新潟は防戦一方。それでも何とかはね返していたのだ。

 試合終盤、黒崎監督は賭けに出る。交代カードは鈴木退場の手当てで後半12分、川又OUT→千葉INの1枚を使っていた。2枚めは同31分、木暮OUT→チョ・ヨンチョルIN。まだこれは「前線でつっかけて後ろをラクにしてくれ」の意味を兼ねている。後半45分、亜土夢OUT→ミシェウIN。勝ちに行った。退場者の出たアウェーゲームで勝ちに行った。定跡なら「引き分け狙いのDF投入」だろう。僕はこのポジティブさはFW出身の監督さんならではだなぁと思う。

 それがハズれてしまった。同45分、高原のひと仕事だ。いやもう、最後の最後ですよ。あぁ、無情ですよ。試合後の会見で黒崎さんはこう語る。念のために言っとくが、これは歯切れが悪いのではなくて、煮えくり返るほど悔しいのだ。

 「10人でも勝ちに行ったというところが裏目に出てしまったのかなという部分はあると、結果的にはそういうところがあると思いました」(黒崎監督、会見にて)

 こういう話は結果論に傾きがちで、実際どうだったかはわからない。大野を入れてもドローで終われたかはわからないのだ。黒崎監督は自問自答を続けるだろう。あのとき、あれは最善策だったか。それを問い続けることが監督さんの仕事だ。

 だけど、僕は個人的には手堅い監督さんより、あそこでスーパーポジティブに行く黒崎さんが好きだ。そしてチームの雰囲気に合ってると思う。いや、「えのきど、問題はそうじゃなくてチームの勝ち点に合ってるかどうかだよ」と読者に叱られるかもしれないが。


附記1、この試合はスカパー観戦でした。現地へ行った人は概ね(敗戦にもかかわらず)、ダイスケ退場までの戦いぶりに好印象を持ったようです。だけど、そろそろ上昇気流に乗りたいですね。次節、川崎戦は不敗ジンクスの助けも借りて、上位食いと行きましょう。僕も青春18参戦します。

2、なでしこジャパンすっげーですね。阪口選手、上尾野辺選手おめでとう&ありがとう! 僕は感動とともに学んだです。絶対にあきらめちゃいけないんだね。僕なんか決勝戦、アメリカがリードする度に「ファイナリストってだけでも立派なことだし」とかつい邪念が頭をよぎってました。本当に勝つためにはそれじゃいけないんだな。

3、試合後、衛星画像のインタビューで阪口さんが「アルビのみんな、ありがとう」って言ったでしょ。あれはもちろん直接的にはアルビレディースの仲間たちへ向けてなんだけど、本質的な意味ではあなたに向けてのひと言ですよ。だってあなたは「アルビのみんな」じゃないですか。


えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。

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