【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第119回(後編)

2011/12/1
 だけどガンバも必死だった。そこから2点返したからね(得点者はどちらも川西翔太)。後半はサッカーの醍醐味にあふれたスリリングな攻防の連続だった。まぁ、欲を言えば何故、リードしたまま勝ち切れなかったのかというポイントは残る。新潟の終盤失点、「潟る」現象は(いつもより少し早めの時間帯ながら)止められなかった。中2日のコンディションだ。気持ちだけじゃ限度があったのだとも言えるだろう。

 有明海で泥んこになって何を争うのか忘れてしまったが、「潟リンピック」新潟県代表じゃないんだからいい加減に「潟る」のはやめてほしいと思う。これ、半分に減ったらわりと上位の方へ顔を出してるよ。メンタルの要素が大きいことだが、必ず戦術的に(つまり、サッカーの次元で)解析できると思う。これ、来季の宿題だよ。それか「潟リンピック」にアルビから選手を出すこと。

 その後、斯界の最高峰「チョモランマ先生」に「潟らないためにどうしたらいいのでしょう?」と相談のお電話をしたことがあった。「チョモランマ先生」は多忙の上、そもそも言葉数が少ないタイプなので「ポジション」と言ったきり、プープーッと電話が切れてしまった。一を聞いて十を知る読者がいたら教えていただきたい。「チョモランマ先生」は最高峰すぎて僕にはよくわからないのだ。

 ともあれ、最高に楽しいサッカーだった。2対2のドローという結果は新潟には残留確定を、ガンバには優勝戦線からの後退をもたらした。だけど、そういう話とは別に、実に純度の高いサッカーを見た気がする。雨は本降りに近いけれど、気分は爽快。僕はアルビはやっぱりいいチームだなぁと思った。


附記1、そして西野さんのガンバもいいチームだなぁと思ったんですが、報道によると西野ガンバは今年で見納めみたいですね。10年チームを率いて黄金時代を築いたのはJでは突出した偉業です。ガンバサポは優勝で花道を飾ってもらいたいでしょう。ま、ここで新潟と当たったのを不運と思っていただく方向で(笑)。

2、てか、この後、甲府にも名古屋にもそう思っていただくのが基本方針です。以前書いたことがありますね。将棋の米長邦雄。相手にとってこの一局に(昇格降格等の)浮沈がかかり、こちらはそうではない対戦こそ「名人戦より必死になる」べきものです。僕は直接、米長さんから「そうしないと勝利の女神にそっぽを向かれる」と聞いた。ちなみに米長さんの見解では勝負事の神様はやっぱり女神さまだそうです。「勝利の女神はユーモアと謙虚さを好む」というのが、元名人の持論です。

3、サイン会は沢山の方に来ていただいてありがとうございました。何かこう、皆さん旧知の間柄みたいな感じで、「えのきどさん、試合終わったら飲みに行こうよ」ってニュアンスなんですよね。「あんたとは気が合うからいっぺんじっくり話したいんだ」的な。まぁ、来年もあるからそういう機会あるといいですね。ただ俺、下戸だからウーロン茶ですよ。

4、そうだ、次節・甲府戦、僕は「旅えっさ」の東京発バスツアーを利用します。本持ってたら(あくまで個人的に)アレしますよ。いや、新潟交通的にサイン会が特典みたいな感じじゃなく。


えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。

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