【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第121回(後編)

2011/12/15
 いつもの年より早々とアルビレックス新潟はシーズン全日程を終えた。正直なところ、よくJ1残留を果たしたと思う。それくらい内容が悪かった。チームとしては「ポスト・マルシオ」システムの完成形を構築できなかった。最終的には完全なカウンターサッカーに特化した。それは実質、相手まかせのサッカーということになる。クラブとしては最終節、きわきわで残留を決めた08年シーズン以来の苦戦だった。最終節終えてのカタルシスだけを言えば08年より低調ではないか。

 そういうアウトラインはアウトラインでわかっている。クラブ編成スタッフ、現場の首脳陣には今季の不面目をきちんと検証してもらいたい。補強のどこが足りなかったか。あそこまでケガ人が重なったのは何故か。戦えない選手はいなかったか。

 けれど、試合録画を見る僕の目は結局、選手の姿を探している。誰ひとりとして見捨てる気にならない。よくやったな、おつかれさんと声をかけたい。ま、録画画面に声はかけないんだけど。あと新潟の選手が画面に映らない。

 読者よ、しばらくお別れのときが来た。苦しいシーズンだったけれど、みんながいたから持ちこたえられたと思うのは、たぶんチームが感じているのと同じ感想だ。それどころか、みんながいたから楽しかった。今年は震災もあって、本当にサッカーなんて見られるのかと思ったなぁ。がんばろう。前を向こう。僕は震災直後と同じ言葉をここに記したい。

 もしかすると来年はこんなもんじゃないかもしれない。確実に「降格候補」からのスタートになるだろう。僕はつきあうよ。みんながいるから平気だ。面白いじゃん、そこからかきまわしてくのがアルビレックス新潟だ。今週言いたいことはたったひとつ。ぜってー勝とう!


附記1、個人的にはエイヤードの小早川史子さんが亡くなって、それがきっかけのようになり田中亜土夢が本格化するという思い出深いシーズンでした。お盆にお別れ会したときに田中亜土夢選手も参加してくれたんですが、「(山形戦のFKは)本当に小早川さんが入れてくれたと思っています」とスピーチしてくれて、これは泣けたです。てか小早川、そういうことならもっと入れてくれよと思ったり。

2、今週、テレビ新潟のアルビ特集ニュースにほんのちょっと出たんですよ。「4万人動員復活の処方戦はあるか?」みたいな企画。これは同社報道部の笹川忍さんという、J2時代からアルビを追ってて、もちろんシーズンパスも毎年買ってるというテレビマンの思い入れ&危機感から出たものです。ま、「えっ、あれ捨ててそこを生かす?」的なコメント出す側特有の感想もないことはないんですけど(笑)、あぁいうハートのある人が地元にいてアルビは幸せだと思いました。

3、すっかり来春までお別れモードですけど、実は「2011Jリーグアウォーズ」の前に時間をいただいて、黒崎久志監督インタビューを収録しました。じっくりお話をうかがうのは初めてです。すごく面白いですよ。詳しくは知らないけど近々アップされる予定(木曜・コラムの日なのかなぁ?)です。


えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。

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