【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第179回
2013/7/18
「サッカーが帰ってきた」
J1第14節、新潟×柏。
1ヶ月に及ぶ中断期間、ちゃんと息してましたか? お待たせしました。アルビレックス イズ バック! もう、ぼんやり土曜のTVを眺めてなくていいんだ。土曜日、予定ないと何かリズム狂うよね。勝てば天国、負ければ地獄の日々が帰ってきた。勝負に身をやつす人生が帰ってきた。クラスメイトに冷やかされ、会社の同僚に笑われても、こればっかりはやめられないね。生きることをやめられないのと同じだ。
オーイエス、「こればっかりはやめられない」を絵に描いたような試合だった。前半、柏がひと足早く実戦を積んでる強みだね、鋭い攻めを見せた。ヒヤッとする場面が何度もあったけど、最後のところでGK・東口順昭が防ぐ。ヒガシはこの試合が実に9ヶ月ぶりのスタメン復帰だ。もう、これだけでご飯おかわりいけます。去年、残留争い只中での負傷欠場がどんなにつらかったか。そもそも去年の負傷は、ケガから復帰してやっと本調子をつかんだタイミングだった。東口は卒業できたと思ったリハビリをまた一から始めなきゃならなかった。
僕なんか東口が試合前、練習で登場した段階で泣けて、もうこれはドラマだなぁと思ったんだね。そしたらドラマはもっと要素過多だった。前半、田中達也がボールの直撃を受けて早々とゲームアウトする。脳しんとうだ。チームは移籍したブルーノ・ロペスに続いて、頼れるFWを失った形だ。緊急事態、メーデーメーデー! 岡本英也がIN、川又堅碁と2トップを組む。
そうしたら後半は根性見せましたね~。まず、新エース・川又が後半4分、ヘディングの先制弾! ケンゴ夏祭りを再開後も継続してくれる。そこから柏が2得点(工藤壮人、クレオ)で逆転。うわ、きっついなと思ったら、後半43分、三門雄大→レオ・シルバ→田中亜土夢のスーパーなカウンター! 更にロスタイム、亜土夢→岡本のしびれる決勝ゴール! 劇的な勝利にビッグスワンは酔いしれた。
新潟の3得点全てがファインゴールだったけれど、この日の殊勲第一は亜土夢ではないか。1ゴール1アシストという結果も文句ないが、左足で決めた豪快な同点ゴールが素晴しかった。亜土夢はこの日、何本か打ってるんだよね。打つ度に少しずつ感覚がピタッと合っていくのがわかった。
あと岡本英也のゴール感覚はどうだ! 出場機会が限られるなかできっちり仕事をしている。この日の決勝ゴールも「形を持ってる」印象だねぇ。新潟は達也OUTという緊急事態を逆に生かしてしまった。
試合後、柳下正明監督は「自信」という言葉を使う。最後まで走り切り、勝てたことはチームに自信になるだろう。中断明け、カレンダーはいきなり連戦が続く。最初の試合が取れるかどうかは大きい。さぁ、勢いにのって行こう!
J1第15節、磐田×新潟。
柏戦の逆目が出た感じの試合。悔しいなぁ。磐田は前節から関塚隆・新監督が采配をふるって、これで1勝1分、チーム再建に手応えをつかんだ。磐田は4月以来の勝利らしい。読者も経験あると思うけど、サポーターはトンネルのなかで生活してるような息苦しさだったろう。芸風として新潟はそういう相手にからきし弱い。「敵に塩をおくる」故事ってそういう意味じゃなかったと思うが、どうも相手を助けてしまうなぁ。
が、先手を取ったのは新潟だった。前半27分、亜土夢のFK(直接入りそうだった!)を川又が押し込む。このコンスタントなゴール奪取が「エース」の仕事だ。脳しんとうの競技規定でこの日、欠場した田中達也の分も「エース」は働かなきゃいけない。苦しいとき、困ったときにそいつの背中を見て、皆、勇気をとり戻すのが「エース」という存在だ。
この試合は五分に渡りあった結果、敗れた(柏戦は五分に渡りあった結果、勝利した)ものなので、新潟が下を向く必要はない。こういうこともある。まぁ、しかし磐田がこの試合に懸けるものの大きさは伝わってきた。今、この機会を逃したらもう浮上できないと全員が思っている。迫力があった。対戦相手としては、実に厄介な敵だった。
関塚さんの打つ手も当たったなぁ。ペク・ソンドン入れたのも効いたし、前田遼一→金園英学も決まった。去年、柳下監督がやって来て、電撃的に打つ手がハマッた感じだったじゃないか。こういうのが大事なのだ。運命を変えるには、皆が別の運命を信じなきゃならないんだ。
後半、どんどん出てくる磐田を見ながら、これが引き分けられたら新潟も大したもんだけどなぁと思った。が、やられた。中断明けは競り勝って、競り負けたわけだ。ポジティブに考えよう。ケンゴはゴール量産体制だし、順調に行けば、次はフレッシュな達也が使える。
附記1、柏戦はホーム2勝めなんですよね。やっぱり勝つと皆、顔が輝く。ホームで勝つのがいちばんの集客策ですね。FC東京戦も頑張りましょう。
2、と、まぁ言うけど、アルビ×新潟日報×『GIANT KILLING』のコラボ企画「GIANT ORANGE PROJECT」は素晴しかった。『モーニング』広告もテンション上がりました。
3、しかし、考えたらこの後、短期間に2戦やって再び東アジアカップの中断なんですよね。しまった、柏戦を単独で取り上げるべきだったか。代表もケンゴや三門呼んでくんないかなぁ。そろそろ代表ネタ書きたいっす~。
えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。
アルビレックス新潟からのお知らせコラム「えのきどいちろうのアルビレックス散歩道」は、アルビレックス新潟公式サイト『モバイルアルビレックス』で、先行展開をさせていただいております。更新は公式携帯サイトで毎週木曜日に掲載した内容を、翌週木曜日に公式PCサイトで掲載するスケジュールとなります。えのきどさんがサポーターと同じ目線で見て、感じた等身大のコラムは、試合の感動が覚める前に、ぜひ公式携帯サイトでご覧ください!
J1第14節、新潟×柏。
1ヶ月に及ぶ中断期間、ちゃんと息してましたか? お待たせしました。アルビレックス イズ バック! もう、ぼんやり土曜のTVを眺めてなくていいんだ。土曜日、予定ないと何かリズム狂うよね。勝てば天国、負ければ地獄の日々が帰ってきた。勝負に身をやつす人生が帰ってきた。クラスメイトに冷やかされ、会社の同僚に笑われても、こればっかりはやめられないね。生きることをやめられないのと同じだ。
オーイエス、「こればっかりはやめられない」を絵に描いたような試合だった。前半、柏がひと足早く実戦を積んでる強みだね、鋭い攻めを見せた。ヒヤッとする場面が何度もあったけど、最後のところでGK・東口順昭が防ぐ。ヒガシはこの試合が実に9ヶ月ぶりのスタメン復帰だ。もう、これだけでご飯おかわりいけます。去年、残留争い只中での負傷欠場がどんなにつらかったか。そもそも去年の負傷は、ケガから復帰してやっと本調子をつかんだタイミングだった。東口は卒業できたと思ったリハビリをまた一から始めなきゃならなかった。
僕なんか東口が試合前、練習で登場した段階で泣けて、もうこれはドラマだなぁと思ったんだね。そしたらドラマはもっと要素過多だった。前半、田中達也がボールの直撃を受けて早々とゲームアウトする。脳しんとうだ。チームは移籍したブルーノ・ロペスに続いて、頼れるFWを失った形だ。緊急事態、メーデーメーデー! 岡本英也がIN、川又堅碁と2トップを組む。
そうしたら後半は根性見せましたね~。まず、新エース・川又が後半4分、ヘディングの先制弾! ケンゴ夏祭りを再開後も継続してくれる。そこから柏が2得点(工藤壮人、クレオ)で逆転。うわ、きっついなと思ったら、後半43分、三門雄大→レオ・シルバ→田中亜土夢のスーパーなカウンター! 更にロスタイム、亜土夢→岡本のしびれる決勝ゴール! 劇的な勝利にビッグスワンは酔いしれた。
新潟の3得点全てがファインゴールだったけれど、この日の殊勲第一は亜土夢ではないか。1ゴール1アシストという結果も文句ないが、左足で決めた豪快な同点ゴールが素晴しかった。亜土夢はこの日、何本か打ってるんだよね。打つ度に少しずつ感覚がピタッと合っていくのがわかった。
あと岡本英也のゴール感覚はどうだ! 出場機会が限られるなかできっちり仕事をしている。この日の決勝ゴールも「形を持ってる」印象だねぇ。新潟は達也OUTという緊急事態を逆に生かしてしまった。
試合後、柳下正明監督は「自信」という言葉を使う。最後まで走り切り、勝てたことはチームに自信になるだろう。中断明け、カレンダーはいきなり連戦が続く。最初の試合が取れるかどうかは大きい。さぁ、勢いにのって行こう!
J1第15節、磐田×新潟。
柏戦の逆目が出た感じの試合。悔しいなぁ。磐田は前節から関塚隆・新監督が采配をふるって、これで1勝1分、チーム再建に手応えをつかんだ。磐田は4月以来の勝利らしい。読者も経験あると思うけど、サポーターはトンネルのなかで生活してるような息苦しさだったろう。芸風として新潟はそういう相手にからきし弱い。「敵に塩をおくる」故事ってそういう意味じゃなかったと思うが、どうも相手を助けてしまうなぁ。
が、先手を取ったのは新潟だった。前半27分、亜土夢のFK(直接入りそうだった!)を川又が押し込む。このコンスタントなゴール奪取が「エース」の仕事だ。脳しんとうの競技規定でこの日、欠場した田中達也の分も「エース」は働かなきゃいけない。苦しいとき、困ったときにそいつの背中を見て、皆、勇気をとり戻すのが「エース」という存在だ。
この試合は五分に渡りあった結果、敗れた(柏戦は五分に渡りあった結果、勝利した)ものなので、新潟が下を向く必要はない。こういうこともある。まぁ、しかし磐田がこの試合に懸けるものの大きさは伝わってきた。今、この機会を逃したらもう浮上できないと全員が思っている。迫力があった。対戦相手としては、実に厄介な敵だった。
関塚さんの打つ手も当たったなぁ。ペク・ソンドン入れたのも効いたし、前田遼一→金園英学も決まった。去年、柳下監督がやって来て、電撃的に打つ手がハマッた感じだったじゃないか。こういうのが大事なのだ。運命を変えるには、皆が別の運命を信じなきゃならないんだ。
後半、どんどん出てくる磐田を見ながら、これが引き分けられたら新潟も大したもんだけどなぁと思った。が、やられた。中断明けは競り勝って、競り負けたわけだ。ポジティブに考えよう。ケンゴはゴール量産体制だし、順調に行けば、次はフレッシュな達也が使える。
附記1、柏戦はホーム2勝めなんですよね。やっぱり勝つと皆、顔が輝く。ホームで勝つのがいちばんの集客策ですね。FC東京戦も頑張りましょう。
2、と、まぁ言うけど、アルビ×新潟日報×『GIANT KILLING』のコラボ企画「GIANT ORANGE PROJECT」は素晴しかった。『モーニング』広告もテンション上がりました。
3、しかし、考えたらこの後、短期間に2戦やって再び東アジアカップの中断なんですよね。しまった、柏戦を単独で取り上げるべきだったか。代表もケンゴや三門呼んでくんないかなぁ。そろそろ代表ネタ書きたいっす~。
えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。
アルビレックス新潟からのお知らせコラム「えのきどいちろうのアルビレックス散歩道」は、アルビレックス新潟公式サイト『モバイルアルビレックス』で、先行展開をさせていただいております。更新は公式携帯サイトで毎週木曜日に掲載した内容を、翌週木曜日に公式PCサイトで掲載するスケジュールとなります。えのきどさんがサポーターと同じ目線で見て、感じた等身大のコラムは、試合の感動が覚める前に、ぜひ公式携帯サイトでご覧ください!
