【コラム】えのきどいちろうのアルビレックス散歩道 第180回
2013/7/25
「中断明け、再び中断へ?」
J1第16節、新潟×FC東京。
完敗。ちょっと意気消沈する試合。柏戦の劇的勝利を見て、ホームでこういう試合を重ねていけば必ず4万大観衆は戻ってくると思ったんだけどなぁ。報道を見て、雨のなか見に来てくれた新規ファンだっていたんじゃないか。「3連休だし、見に行ってみよう」みたいなことだ。まぁ、プロは例えば初めてサッカーを見る層、年にいっぺんだけ見る層を納得させないとダメだ。できればしびれてもらって、熱心なリピーターに成長してもらいたい。
僕が言いたいのはひとつ、アルビレックス新潟はそれができましたか? ということだけだ。新規ファンが呼び込めないスタジアムは勢いが出ない。常連だけの構成はどうしても雰囲気が内部的になったり、マンネリ化したりする。
勝負事だから負けることがあるのはしょうがないんだ。負けても、あれはすごかったという何かを人の心に残したい。いちばんシンプルなのは「ひたむきな姿」「あきらめない姿」だ。
だけど、この試合は時間が経つにつれ、チームがどんどん元気を失っていく感じに見えた。そりゃ、リーグ戦再開後、いきなりの過密日程だ。へばってもいるだろう。コンデション的には気温こそ低かったものの、湿度が80パーくらいあった。実際に「時間が経つにつれ、チームがどんどん元気を失って」いったのだろう。皮肉だったのは猛暑の首都圏から来たFC東京は、涼しかったとみえて最後まで集中を切らさなかったことだ。実際、僕も新潟駅で電車を降りた瞬間、涼しくて生き返る思いだった。
試合展開を言うと、開始10分までにセットプレー&PKで2失点(得点者・高橋秀人、渡邉千真)。もう、何か交通事故に立て続けに遭ったようなツキのなさだった。いきなりハンデをつけられたようななか、決定機はそれなりに作っていた。が、この日は敵GK・権田修一が素晴しく当たっていた。しのがれるうち、次第に新潟の攻めが迫力を欠いていく。
実はこの日、高校時代の同級生(ホーム&アウェー皆勤級のFC東京サポ)と中央区学校町通の大倉酒店で飲んだんだけど、「開始早々の2点」の受け取り方がFC東京サポ側ではぜんぜん違っていて面白かった。FC東京はここ最近、2点取って3失点して負けるような試合をしていたんだ。とにかく守りを不安がっていた。「開始早々の2点」は不吉に思えたようだ。ひとりのサポが「これ、1点返されたらどうなるかわかんないな」と言って、周囲に「皆、思ってるんだから口にするな!」とめっちゃ怒られる。アレですよ、言霊信仰。言ったことは何となく現実になっちゃう気がしますね。
その人にとって幸いなことに(もちろん新潟にとって残念なことに)、その言葉は現実化しなかったんだなぁ。同じ失敗を繰り返さないためにFC東京は守りの意識が最後まで高かった。
試合後の会見で、柳下正明監督は気持ちの面でスキがあった例として「試合が始まって1分ほどしか経ってないのに水を飲んでる選手がいる」と指摘。それは当の「新エース」の耳に届いているだろう。
僕らは次、彼がどんな姿を見せてくれるか楽しみにしよう。
J1第17節、湘南×新潟。
2週間で4試合という連戦のオーラス。この後、東アジアカップの中断期間に入るから、この試合がモノにできるかどうかは非常に大きい。両軍ともに言えることだが、疲れはある程度、織り込まざるを得ない。すんごく内容のあるサッカーというわけにもいかないだろう。もう勝負どころで結果が出せるかに尽きるんじゃないか。決定機を決めるのか逃すのか。
そしたらですね、川又堅碁が仕事をしてくれましたよ。ケンゴ遅ればせの七夕祭り(@平塚)。わっしょいわっしょい。いや、皆が体調的にきついとこで、点取ってラクにする。広島・佐藤寿人とか磐田・前田遼一とか、これまで他チームの「エースの仕事」をうらやましく思っていた読者もおられましょう。それをきっちりやる日本人FWが新潟にも出現した。
まぁ、サッカー的には危なっかしい試合で、湘南がフィニッシュであわててくれたり、不運だったりで大いに助かりました。だけど、この試合は結果が全てでしょう。この4連戦、勝ち点6は挙げておきたいところでした。そしてリーグ戦がもつれたときのために湘南は叩いておきたい。
今季17節終えて、「去年と大差ないではないか」「思ったほど勝ち点が伸ばせていない」と心配される向きもありましょう。決定的な違いは川又の存在です。チームに柱が通った。僕はこれから期待感ありますね。川又もチームも成長していくとこが見られるはずだ。
あ、前半で下がったレオ・シルバの状態が気になりますね。中断期間に入るのが不幸中の幸いだけど、大事に至らないといいです。ただ百戦練磨の本間勲がリザーブにいる有難みは感じましたね。三門雄大も普段より沢山のタスクを必死にこなしていた。
まぁ、とにかくいったん身体を休めて、夏場の戦いに備えましょう。今年は盆休み、新潟で試合ないんですよね。選手だけでなく、ファン、サポーターも身体が資本です。そろそろ土用の丑の日か。うなぎ食べたりしながら、リーグ戦再開を待ちましょう。
1、ま、書いたことに嘘偽りはないんですけど、正確に言うと本稿執筆の18日15時時点、リザーブ組が小平でFC東京戦やってるんですよね。まだ「いったん身体を休めて」じゃない。ちょうどキックオフ時刻ですね。この炎天下、皆、大丈夫かなぁ。
2、栗原広報も小平だし、このコラムのアップは遅くなる気がします。
3、個人的に今週は『glee』のフィン・ハドソン役を演じていたコリー・モンティスさんの訃報が大ショックでした。悲しすぎるなぁ。
えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。
アルビレックス新潟からのお知らせコラム「えのきどいちろうのアルビレックス散歩道」は、アルビレックス新潟公式サイト『モバイルアルビレックス』で、先行展開をさせていただいております。更新は公式携帯サイトで毎週木曜日に掲載した内容を、翌週木曜日に公式PCサイトで掲載するスケジュールとなります。えのきどさんがサポーターと同じ目線で見て、感じた等身大のコラムは、試合の感動が覚める前に、ぜひ公式携帯サイトでご覧ください!
J1第16節、新潟×FC東京。
完敗。ちょっと意気消沈する試合。柏戦の劇的勝利を見て、ホームでこういう試合を重ねていけば必ず4万大観衆は戻ってくると思ったんだけどなぁ。報道を見て、雨のなか見に来てくれた新規ファンだっていたんじゃないか。「3連休だし、見に行ってみよう」みたいなことだ。まぁ、プロは例えば初めてサッカーを見る層、年にいっぺんだけ見る層を納得させないとダメだ。できればしびれてもらって、熱心なリピーターに成長してもらいたい。
僕が言いたいのはひとつ、アルビレックス新潟はそれができましたか? ということだけだ。新規ファンが呼び込めないスタジアムは勢いが出ない。常連だけの構成はどうしても雰囲気が内部的になったり、マンネリ化したりする。
勝負事だから負けることがあるのはしょうがないんだ。負けても、あれはすごかったという何かを人の心に残したい。いちばんシンプルなのは「ひたむきな姿」「あきらめない姿」だ。
だけど、この試合は時間が経つにつれ、チームがどんどん元気を失っていく感じに見えた。そりゃ、リーグ戦再開後、いきなりの過密日程だ。へばってもいるだろう。コンデション的には気温こそ低かったものの、湿度が80パーくらいあった。実際に「時間が経つにつれ、チームがどんどん元気を失って」いったのだろう。皮肉だったのは猛暑の首都圏から来たFC東京は、涼しかったとみえて最後まで集中を切らさなかったことだ。実際、僕も新潟駅で電車を降りた瞬間、涼しくて生き返る思いだった。
試合展開を言うと、開始10分までにセットプレー&PKで2失点(得点者・高橋秀人、渡邉千真)。もう、何か交通事故に立て続けに遭ったようなツキのなさだった。いきなりハンデをつけられたようななか、決定機はそれなりに作っていた。が、この日は敵GK・権田修一が素晴しく当たっていた。しのがれるうち、次第に新潟の攻めが迫力を欠いていく。
実はこの日、高校時代の同級生(ホーム&アウェー皆勤級のFC東京サポ)と中央区学校町通の大倉酒店で飲んだんだけど、「開始早々の2点」の受け取り方がFC東京サポ側ではぜんぜん違っていて面白かった。FC東京はここ最近、2点取って3失点して負けるような試合をしていたんだ。とにかく守りを不安がっていた。「開始早々の2点」は不吉に思えたようだ。ひとりのサポが「これ、1点返されたらどうなるかわかんないな」と言って、周囲に「皆、思ってるんだから口にするな!」とめっちゃ怒られる。アレですよ、言霊信仰。言ったことは何となく現実になっちゃう気がしますね。
その人にとって幸いなことに(もちろん新潟にとって残念なことに)、その言葉は現実化しなかったんだなぁ。同じ失敗を繰り返さないためにFC東京は守りの意識が最後まで高かった。
試合後の会見で、柳下正明監督は気持ちの面でスキがあった例として「試合が始まって1分ほどしか経ってないのに水を飲んでる選手がいる」と指摘。それは当の「新エース」の耳に届いているだろう。
僕らは次、彼がどんな姿を見せてくれるか楽しみにしよう。
J1第17節、湘南×新潟。
2週間で4試合という連戦のオーラス。この後、東アジアカップの中断期間に入るから、この試合がモノにできるかどうかは非常に大きい。両軍ともに言えることだが、疲れはある程度、織り込まざるを得ない。すんごく内容のあるサッカーというわけにもいかないだろう。もう勝負どころで結果が出せるかに尽きるんじゃないか。決定機を決めるのか逃すのか。
そしたらですね、川又堅碁が仕事をしてくれましたよ。ケンゴ遅ればせの七夕祭り(@平塚)。わっしょいわっしょい。いや、皆が体調的にきついとこで、点取ってラクにする。広島・佐藤寿人とか磐田・前田遼一とか、これまで他チームの「エースの仕事」をうらやましく思っていた読者もおられましょう。それをきっちりやる日本人FWが新潟にも出現した。
まぁ、サッカー的には危なっかしい試合で、湘南がフィニッシュであわててくれたり、不運だったりで大いに助かりました。だけど、この試合は結果が全てでしょう。この4連戦、勝ち点6は挙げておきたいところでした。そしてリーグ戦がもつれたときのために湘南は叩いておきたい。
今季17節終えて、「去年と大差ないではないか」「思ったほど勝ち点が伸ばせていない」と心配される向きもありましょう。決定的な違いは川又の存在です。チームに柱が通った。僕はこれから期待感ありますね。川又もチームも成長していくとこが見られるはずだ。
あ、前半で下がったレオ・シルバの状態が気になりますね。中断期間に入るのが不幸中の幸いだけど、大事に至らないといいです。ただ百戦練磨の本間勲がリザーブにいる有難みは感じましたね。三門雄大も普段より沢山のタスクを必死にこなしていた。
まぁ、とにかくいったん身体を休めて、夏場の戦いに備えましょう。今年は盆休み、新潟で試合ないんですよね。選手だけでなく、ファン、サポーターも身体が資本です。そろそろ土用の丑の日か。うなぎ食べたりしながら、リーグ戦再開を待ちましょう。
1、ま、書いたことに嘘偽りはないんですけど、正確に言うと本稿執筆の18日15時時点、リザーブ組が小平でFC東京戦やってるんですよね。まだ「いったん身体を休めて」じゃない。ちょうどキックオフ時刻ですね。この炎天下、皆、大丈夫かなぁ。
2、栗原広報も小平だし、このコラムのアップは遅くなる気がします。
3、個人的に今週は『glee』のフィン・ハドソン役を演じていたコリー・モンティスさんの訃報が大ショックでした。悲しすぎるなぁ。
えのきどいちろう
1959/8/13生 秋田県出身。中央大学経済学部卒。コラムニスト。
大学時代に仲間と創刊した『中大パンチ』をきっかけに商業誌デビュー。以来、語りかけられるように書き出されるその文体で莫大な数の原稿を執筆し続ける。2002年日韓ワールドカップの開催前から開催期までスカイパーフェクTV!で連日放送された「ワールドカップジャーナル」のキャスターを務め、台本なしの生放送でサッカーを語り続け、その姿を日本中のサッカーファンが見守った。
アルビレックス新潟サポータースソングCD(2004年版)に掲載されたコラム「沼垂白山」や、msnでの当時の反町監督インタビューコラムなど、まさにサポーターと一緒の立ち位置で、見て、感じて、書いた文章はサポーターに多くの共感を得た。
著書に「サッカー茶柱観測所」(週刊サッカーマガジン連載)。
HC日光アイスバックスチームディレクターでもある。
アルビレックス新潟からのお知らせコラム「えのきどいちろうのアルビレックス散歩道」は、アルビレックス新潟公式サイト『モバイルアルビレックス』で、先行展開をさせていただいております。更新は公式携帯サイトで毎週木曜日に掲載した内容を、翌週木曜日に公式PCサイトで掲載するスケジュールとなります。えのきどさんがサポーターと同じ目線で見て、感じた等身大のコラムは、試合の感動が覚める前に、ぜひ公式携帯サイトでご覧ください!
