【第4回】「組み立てと崩しの間」

2018/8/14
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3月11日に想うこと

3月11日の第3節・京都サンガF.C.戦もビッグスワンで観戦しました。寒かったですね(笑)。『まさかこの寒さが来るか』とビックリしましたが、後半の最終盤は応援にも熱が入って、いいムードで闘えていたんじゃないかと思います。来場は14,239人でしたが、スタジアムに来ていただけるのは本当にありがたいことだと思います。もちろん、これから暖かくなるのでもっと来ていただきたいです!

3月11日は、東日本大震災のことを触れないわけにはいきません。僕は高2の冬、3年生になる前でした。ちょうど2種登録をするということで、メディカルチェックのために医療センターに行っていたんです。大きな揺れを感じて、テレビを付けてあ然としたことを覚えています。

自分の病気とリンクするわけではないのですが、いつ何が起こるかは分かりません。もちろんとても悲しい出来事ではあったのですが、起きてしまったことに対して、色々な方々の温かさを僕は感じました。3月11日にJリーグが試合を開催すること、各会場で想いをはせたり、何かしらのアクションをすることは、各々では小さなものかもしれませんが、被災された方々の力になり得るものだと思います。スポーツには力があると僕は思います。

フラットな起用、モチベーションは高いはず

先週は7日にルヴァンカップ・仙台戦、そして11日にJ2リーグ・京都戦が行われました。ルヴァンカップは少しだけしか見られていないのですが、祥郎が結構がんばっていたみたいですね(笑)。

そして何人かが京都戦のメンバーにラインナップされました。ルヴァンカップでアピールをすれば、次のメンバーに入れる、試合に絡むチャンスが出てくると監督が示してくれたと思います。フラットな眼で評価してもらえていると思いますし、選手たちは高いモチベーションで臨めているんじゃないかと思います。

そのひとりがルヴァンから連続出場したゴメスですね。珍しいですけれど、最後は足をつって、なんとか動こうと思い切り腕を振っていました。京都戦では前半終了間際に何度も動き直すことができる、ゴメスのいいところが出たプレーがありました。元々身体能力やスピードに特長がある選手じゃないですけれど、運動量を活かしながら相手の嫌がるところに連続して顔を出し続けられるのが彼の良さです。

「組み立てと崩しの間」

スタメンはズミさんが戻ってきましたが、サイドハーフに起用されました。どちらかと言うと中央に入ってひとりのFWと絡んで、もうひとりのFWが左に流れてボールを受ける機会が増えました。2人のFWとサイドハーフが流動的に動いていたんじゃないかと思います。その一方、カワくんが動き過ぎというか、左に流れ過ぎて持ち前のゴール中央での鋭さ、突破や裏を狙う動きが薄れたようにも感じました。もう少しカワくんのストロングを見たかったなという部分もあります。

僕は、いま新潟がやっているのは、変なことがなければそれほど失点をするサッカーじゃないと思います。守備については手応えを感じられていると思うんですが、欲を言えば全体で前に進んでいけたらいい。今はまだ、後ろと前の距離感が少し開いているので、特に前半はタテパスにサポートが上手く入らず、奪われることがありました。試合を進めることで距離感のバランスは改善されていくので、選手たちで話し合っていければと思います。

よく「組み立て」「崩し」と言いますが、「組み立ての先、崩しの前」というか(笑)。「組み立てと崩しの間」で、それが後ろと前の選手の距離感につながってきます。そこがもうちょっと上手くつながると、崩しでも迫力があって、前に人数をかけられる攻撃を仕掛けられると思っています。

前節の反省から改善していた京都

前節、京都が福岡と対戦したゲームを見ていて、明らかにボランチの脇が空いていたんですね。3番の宮城選手の脇を、とにかく福岡に使われていた。そこから福岡はサイドの駒野選手に出して、いいようにやっていました。『どう改善していくのか』が試合前に注目したポイントで、『ボランチの脇は締めてくるだろう』と思っていました。

実際、京都は前節出場していた11湯澤選手から、8重廣選手を起用しました。まずは守備でボランチの両脇を固めながら、上手くボールを奪ったら前に進もうという意図だったと思います。そういう意味では、京都は前節の反省を活かしていたのかなと思います。

新潟は前半に限っては、ボランチとサイドハーフ、サイドバックの選手で横に回している状況が続いていました。それは京都がフレッシュな状態で守備ができていたこともあります。いい距離感でチャレンジ&カバーができていて、中をうかがう機会が少なかったと思います。そういう中でもタテパスを入れて引き出して、相手の5枚の中盤に対してタテの段差を付けたり、宮城選手の両脇に潜り込むことができればと見ていました。

すると後半はだんだんタテパスが入るようになって、前、後ろと段差を付けられていました。ボランチの両脇、ボランチと前の選手の間に顔を出してボールを受けて、うかがおうとする意志が、チームからすごく伝わりました。そうすると相手も中を締めざるを得なくて、安田さんやゴメスが行けるきっかけにもなっていました。失わないために横、横もありますが、いい位置に入り込んでいくことで、後半は狙いとする攻撃ができていたと思います。

新潟のゴールは「ザ・矢野貴章」です(笑)

そんな中で生まれた先制点はCKから。あれはやはりというか、「ザ・矢野貴章」です(笑)。高すぎです。あんなプレーをされたらお手上げです。

相手はゾーンで守っていました。貴章さんとマンツーマンだったら、もう少し別の展開もあったかもしれませんが、あの球質で、あの貴章さんの飛び込みをされたら誰でも無理だと思います。攻めあぐねている状況で、セットプレーで1点を取れるのは大きなこと。貴章さんの強みだし、チームの強みにもなると思います。流れじゃなくても点が取れるのは、これから何度も訪れるキツい試合でも、いいパターンになってくれると思います。

失点にあった伏線、マサルくんの貢献

その4分後の失点には、色々な伏線があったと感じています。わざと闘莉王選手がオフサイドポジションにいて、アルビの選手は蹴られるタイミングまでなるべくオフサイドポジションを下げたくないですが、駆け引きの中で先に動いてしまった。なおかつ決めた染谷選手が、新潟が動いた前のスペースに入って触ってきました。

失点の前にも、闘莉王選手に一回危ないチャンスを作られているんですが、それはジュフンが少しマークを離していました。ブロックされているわけじゃなく外しているので、もう一度責任を持って、いい位置取りをしつつ相手をマークできるようにしておかなければいけません。

ただ、その中でもマサルくんが試合の入りで2回、決定機を阻止しています。闘莉王選手のシュートや、マイナスに入れられたところに足を出したり。マサルくんの守備意識は、前のシーズン以上に高いものがあると思いますし、僕は改めて頼もしいなと感じています。運動量が豊富なこともありますし、最後まで守れる位置にいるのがマサルくんの良さ。献身的な新潟の10番だな、と感じています。

相手が嫌がることを徹底できれば

スタンドから観て気付いた点ですが、相手の6本多選手がすごくマサルくんに食い付いていたイメージがありました。それを見てか、貴章さんが何回か本多選手の裏を狙っていたんですが、本多選手はそれでもマサルくんに食い付き気味だったんですよね。それならもっと徹底的に裏を突いて、本多選手の前への食い付きを止めるやり方もあったかなと思います。

そこを狙うことで闘莉王選手が引きずられて、京都の守備の中心をゴール前からおびき出すこともできたかもしれません。そのしたたかさを、ゲームの中でみんなが共有して出せれば面白かったとも感じました。マリノスなら中澤選手ですが、守備で中心となる選手がいるチームは、『どう引きずり出すか』が有効だと思います。ただ、今回はなかなか闘莉王選手も出てきませんでしたね。そこは京都もチームとして修正しているんだと思います。

サポーターの意志で選手を動かせるのがビッグスワン

新潟は後半途中から、ターレスが出場しました。パワー系でありながら足元も繊細さを持っていて、すごく可能性を感じます。いちファンだったらすごくワクワクしますよね。ジュフンがCKから惜しいヘディングシュートを放ったものも、ターレスが上手く触って流してくれました。これからもっとコンディションがフィットしてくれば面白いし、怖い選手になると思います。

あの場面、僕はスタジアムの雰囲気にしびれました。サポーターがすごく盛り上がって、「あぁ、この流れなら得点が入るかもしれない」と。サポーターと選手が一体になって、「行くぞ!」という意志をサポーター側から選手たちに伝えてくれたような瞬間だったと思います。

それは僕が小学生や中学生の時に、スタジアムで観ていて感じたものでした。エジミウソンがいて、マルシオがいて、というワクワク感を久々に味わうことができたようでした。それはピッチにいる選手も感じるものだと思います。

もちろん試合をするのは選手ですから、選手主導という見方はあるかもしれません。でも、サポーターの意図や、意志で選手が動かせるすごさも新潟にはあると思います。引き続きサポーターにはチャンスだと思ったら、周りからもっと声援を送ってあげてほしいと思います。

交代からも感じた鈴木監督のメッセージ

京都戦、僕は鈴木監督の選手交代に強いメッセージを感じました。ルヴァンの疲れもあるかもしれませんが、ゴメスが最後に失速気味になって、小屋松選手に何度かやられる場面がありました。監督はすぐに安田選手を左に置いて、川口を右に入れましたが、その采配には『なるほどなぁ』と感じました。まずは失点をしない、勝点を積み上げる意思をしっかり選手に伝えたのは、すごく大きいと思います。

「勝ちを焦って点を取りに行くために前の選手を」じゃなく、まずはチームの基盤にある守備。そういう“水のモレ”を、すぐ防ぐのは長いリーグ戦ではすごく大事だと思います。あの場面、点を取りに行こうと気持ちがはやる雰囲気だったと思うんですが、その決断のすごみ。『常に客観的なんだ』と感じさせられました。

選手心理はポジティブでは

守備はある程度手応えを感じていると思います。試合を終えて、「危なかった。負けなくて良かったな」という感じではなく、「あとは得点を取れば勝てるんだ」という心理だと思うので、ポジティブじゃないかと。

守備に不安を残しながら勝てなかったものと、「攻撃で点を取れなかったから勝てなかったんだ」となるのでは、持つ意味合いが変わってきます。次に向かう不安要素も違います。去年はどうしても失点が多くて、「点を取られるから勝てないんだ」と選手は意識していたんじゃないでしょうか。

いまは失点をしないことを前提にしつつ、得点を決め切れない課題があります。それは前向き、ポジティブだと感じます。シーズン当初に掲げられた、「まずはしっかり守備を構築する」ことは積み上げられていると思います。

ルヴァンFC東京戦、J2横浜FC戦へ

中2日で明日はもうルヴァンカップ・FC東京戦です。選手としては誰にでもチャンスがあるのは高いモチベーションでできるはず。半面、リーグとルヴァンカップで気持ちが分かれてしまってはもったいない。ルヴァンの先に、リーグ戦での出場があれば、もっと選手たちは意欲を燃やすでしょうし、きっかけにしようと奮起するはずです。

17日に対戦する横浜FCには、イバという攻撃の中心選手がいます。ひとりだけで対応するとピンチになる可能性もありますので、うまくセンターバックとボランチで連携できればいいと思います。それプラス、もうひとりのボランチの位置関係や、サイドハーフの絞り、スペースのカバーが大事にもなります。ボランチだけじゃなく、全体でいい位置を取れたら。

横浜FCが開幕で松本山雅FCと対戦したゲームも見ましたが、どんなにマークをしていても何回かチャンスを作ってきます。それに、イバは事故的なところをすごく狙っている印象があります。それがストライカーなのかもしれませんね。ジュフンは高さも足元にも強さを持っていますし、カンペーさんがカバーをしてというバランスは向上しているので、集中して対応をしてもらいたいと思います。


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