【第7回】自分たちが、自分たちの戦い方を決める
2018/8/14

レディース・浦和戦を観戦しました
先週末はJ2リーグがアウェイだったので、僕は3月31日のレディース・浦和レッズレディース戦を観戦に、新潟市陸上競技場に行きました。ちょっと意外かもしれませんが、実はレディースの試合を観戦したことはなかったんです。僕がユースの頃から在籍している大石(沙弥香)さんたちは当時から交流もあったし、アルビレッジでは「お、帰ってきたな!」と言われたりしたんですけれどね(笑)。
自分も小学生時代にプレーした小針レオレオサッカー少年団出身の2人、(高橋)智子と(唐橋)万結もよく知っています。年始に恒例となっているレオレオの初蹴りで顔を合わせますし、指導してもらったコーチが、僕が卒団した後に万結たちの年代を見ていたんですよね。だから近い存在で、レオレオに遊びに行くと、万結とボールを蹴ったりもしていました。その2人には、特にがんばってほしいと思います(笑)
レディース監督の山崎さんは、僕がJrユース3年の時に1年の担当をしていたので面識があります。大学時代も、山崎さんが産業能率大学で指導されていたので、挨拶をさせていただいたこともあって。だから今回新潟で再会できたのはとても嬉しかったです。指導者としては、練習で感じられたことを、ストレートに伝えてくれる印象があります。包み隠すことはないし、コミュニケーションも大事にしてくれるので、選手としてはとてもありがたいです。
レディースの試合は面白い。ぜひご来場ください!
試合は前半、新潟が真ん中で組み立てながら、サイドの上がりを使ってレッズ以上に惜しいシーンを作っていました。「これはいけるかな?」と思いましたが、後半、相手に選手交代があり、サイドを広く使いながら、FWの力強さを活かして試合を優位に進めてきました。押し込まれる状況が続いた中で、GKのファインセーブやPKストップもあり、応援している立場としてはヒヤヒヤしましたが(笑)、とても楽しむことができました。
残念ながら終盤に2点を失って、負けてはしまいましたが、戦いはこれから。男子と女子ではスピード感に違いがあるのは当たり前ですが、ちょっとしたボールの扱いや駆け引きは変わりません。それどころか、「上手いな!」とうならされるプレーや、体を張ったディフェンスなど、熱くなれるシーンもたくさんあるんです。面白いと感じてもらえると思いますので、ぜひレディースへの応援をよろしくお願いします!
全員が一致しきれなかった印象の熊本戦
トップチームは4月1日に熊本戦を戦いました。前節の徳島戦では、圧倒的にボールを保持されながらも、チームとして最後まで集中して戦い、勝利を手にすることができました。「チームとして、いまどういう状況にあり、どういうプレーをしなければならないか」。苦しい状況でも、ピッチの中で明確に理解していたように、試合を観戦していて感じました。
素晴らしい団結を活かした結果、徳島戦は勝利をつかみました。しかし、この熊本戦では、前節と裏腹に、「チームとして戦っている状況をどう感じ、どう試合を進めていくべきか」が、少し一致していないような印象を僕自身は感じました。皆さんはどう感じられたでしょうか。
3バックを採用した狙い
新潟は今節、3バックを採用しました。僕自身は、高さや強さを特長とする2人のFWや、スピードを活かしたウイングバックを擁する熊本に対応するには、良い布陣だったと思います。もちろん4-4-2でも守備はできますが、今季の公式戦ではウイングバックに幅を使われ、相手に起点を作られていました。自分たちもウイングバックを当てることで、起点を作らせず、思うような攻撃をやらせない意図もあったのではないかと感じました。
新潟も3バックにすることで、ポジティブな部分があったように思います。ひとつは安田さんが高い位置でボールを受けられる機会が多くなったこと。安田さんの仕掛けやクロスの精度は高いですし、新潟のひとつのストロングになっています。その安田さんを高い位置で攻撃に参加させられる配置になりました。ふたつめは、中盤に人数が多いので、ボールを動かす際に選択肢が多いのに加え、FW、トップ下2枚、ボランチ2枚と段差が最初からできているので、タテのズレを作りやすいこと。流動的にそのズレを使いながら、攻撃がしやすくなったように感じました。
ズミさんが入っての4-4-2では、ズミさんが意識的に動いて役目を果たしていましたが、今回の布陣では、自然にいいタテの段差を作れます。サポートの距離感も良く、選択肢があるので、ボールを上手くはこべる印象を持ちました。試合後のコメントを見ると、3バックは選手たちにとってもストレスではなかったのではないかと思います。
先を見据えて。新潟ならできるはず
今回の試合で3バックによる良さも見ることができました。結果は結果ですし、そこにはやり慣れていなかったり、期間が短いために上手くいかなかったところももちろんありました。ただ、新しいチャレンジをたった一度の結果で断念するのではなく、得た課題や反省点、また収穫をハッキリとさせる。トレーニングで精度を上げながら、長いJ2リーグを戦う新潟の、ひとつの選択肢として機能していくことを僕は期待したいと思います。
僕たちも分析して試合に臨みますが、一方では相手に対策をされた状況で、ゲームは始まります。自分たちの弱点を突かれた時に、武器がひとつだけなのか、もうひとつの選択肢があるかでは大きな違いがあると思います。戦いの幅が広がるのは、出場機会を求めたり、レベルアップのために選手もプラスに捉えていいこと。今年の新潟は、3バックでもいい戦いができると僕は感じています。勝負なので、次は勝って反省したいですけれど(笑)
ポイントとなった15分前後
サッカーではよく、「最初と最後の15分が大事」と言われます。新潟は立ち上がりとなる前半の15分は素晴らしかったと思います。貴章さんがGKにプレッシャーをかけて足に当てた場面や、カワくんが右サイドのDFにプレッシャーをかけました。こういったプレーで新潟は最初の主導権を握りました。
また、この試合大活躍する熊本の田中達也選手も、この時間帯は裏へのスペースをケアしながら足元でボールを受けさせ、ゴメスのプレッシャーで中に出させたボールをイソくんがカットする。相手の特長を消しながら、いい守備ができていました。主導権を握りながら、守備でも相手をコントロールできていた状況でした。
ところが、時間が経過するにつれて展開は変わり、相手がボールを持てる時間が増えていきました。それは新潟がしっかりプレスをかけられなかったこと、相手が新潟のプレッシャーに慣れてきたこと、両面あると思います。感じたのは、先に紹介したように、前の選手はDFやGKに迫るような場面もあり、プレスに行きたかったように感じましたが、ボランチや後ろの選手が連動できず、少しプレスを統一できませんでした。これによって自由にプレーするスペースと、判断する時間を与えてしまったのが、失点に関係していると僕は感じました。
失点の分析
1失点目は、ボール保持者にプレッシャーがかかっていない状況で、全体としてどこからプレスを掛けるのか曖昧になってしまいました。その状況で、前線から落ちてボールをもらう動きをしたFWに、DFが不用意に付いていってしまいました。チャレンジをすることも、またひとつの判断ですが、それにはカバーが必要です。チャレンジ&カバーもない関係で、フラッと前に出てしまい、空いたギャップを使われてしまった失点でした。
普段なら起こりえないことだと思います。2人のCBだったら、そういう軽率なことはなく、おそらく落ちたFWには、ボランチを動かすことで、パスコースを消せたんじゃないかと。ただ、あの時間はコミュニケーションが上手く取れなかったのか、落ちた相手に対応することができていない場面がその前にもありました。3バック、3枚のCBのようなイメージで、「他の2枚がいるから」という意識を持ってしまったのかもしれません。
2、3失点目は、サイドの選手の特長を出させてしまいました。あの時間帯は正直どっち付かずの展開で、前に行ったり後ろに行ったり、ウイングバックの上下動もありました。そうした中で、ゴメスが「ヨーイドン」で走ったら負ける相手に対して、並列してしまうような状況を意図せず作ってしまいました。
速い相手に対してどこをケアして、どこにボールを出させて守備をしなければいけないか。立ち上がりの15分は、それを実践できていました。チーム・個人どちらも、もっとハッキリ打ち出せれば、もう少し楽に左サイドは守れたし、裏を突かれることもなかったんじゃないかと思います。
自分たちが、自分たちの戦い方を決める
選手であれば分かることですが、前線からずっとプレッシャーをかけ続けることは、なかなか現実的ではありません。一度落ち着く時間も必要です。大事なのは、チームとしていまの状況を判断して、自分たちが団結した中で戦い方を決めていけるか。今後も、とても大切なことだと自分は感じています。
徳島戦のように圧倒的に保持され、「辛抱強く守りながら戦おう」とハッキリしていれば、特に意識することもないかもしれません。ただ、当然ですがそんな相手ばかりではありませんし、環境やさまざまな要因で大きく変化するのがサッカーです。繰り返しですが、チームとしていまを判断できてくれば、よりいっそう、成熟度は増すと思います。
チームの結束を弱めない
僕が試合で少し気になったのは、ミスが出た時に顔を上げて「あー」といった表情が多く見られたことです。熊本は暑さもあったでしょうし、自分たちのリズムが生まれない状況でメンタル的にも難しくなり、感情が出てしまうのはしょうがない部分はあるかもしれません。攻撃時も、出し手と受け手の疎通がどこか曖昧で、「そこに出すの?」「動かないの?」という感じが出ていました。
ただ、それによってチームとしての結束を弱めたり、切り替えを遅くしてしまうのはとてももったいないです。その雰囲気は伝染するものでもあります。徳島戦のように、どんなに厳しく劣勢でもチームとして集中を切らさずハードワークして勝利を手にできる。新潟の強みだし、生命線だと思います。毎試合、これだけは当たり前のように意識して試合に臨んでいきたいと思います。
メッセージとして伝えてくれたレオ
自分の意思をストレスではなく、メッセージで伝えることに長けていたのはレオ(・シルバ)です。ブラジル人で、上手とはいえ日本語も日本人並みとはいきませんでしたが、そのぶん「自分はどうしてほしいのか」「お前はどうするべきなのか」を、僕にもしっかり伝えてくれました。
根底にあるのは「勝つために、チームのために」。それを考えて、上手い日本語ではなかったかもしれませんが、時にジェスチャーもまじえてメッセージとして伝えてくれました。ピッチでは厳しくメッセージを伝えられることもありましたが、それが分かっていたからこそ、素直に尊敬することができましたし、レオの姿勢には感じるものがありました。
ルヴァン杯・横浜FM戦、J2・岡山戦に向けて
4月も新潟はハードなスケジュールで戦わなくてはいけません。まず明日はYBCルヴァン杯・横浜FM戦。どういうシステムで臨むかも分かりませんが、ここまでのルヴァン2試合を見ると、おそらく熊本戦に出場していなかった選手たちが中心に起用される可能性が強いでしょうか? 毎回言っていますが、チャンスが与えられ、かつ評価が明確にあるのが鈴木監督だと思います。アピールの場ですし、リーグ戦のメンバーに入った時を想定してやれるか、足りないと思うことを加えられるかが大事になるのではないかと思います。
岡山については僕もこれから勉強するのですが(笑)、人に聞いたところでは、岡山の選手はみんなマジメで役割をしっかり遂行する選手ばかりだと。実力がなくて首位に立てるはずもないので、強みを持った手強い相手だと思います。自分たちがJ1に戻るためには、単純ですが上にいるチームを叩いていかなければいけません。勝ちに行きましょう!