早川史哉の前を向いて歩こう 第38回・「自分たち以外」に振り回されすぎない

2018/11/13
photo
熊本の勝ちたい思いに、勝利が転がった

ここまで9戦負けなしという状況で臨んだ11月3日の熊本戦。この「負けなし」という状況は、チームのパフォーマンスを見れば妥当ですが、サッカーって勝ち続ける難しさが少なからずある競技だと僕は思います。

いつかは負けたり、引き分けが続くことも起こり得る。「いつかは来るものが、今回訪れたのかな」といった思いもあります。ただ、その一方、スキではないかもしれませんが、「熊本の勝ちたい思いに、最後は勝利が転がり込んでいったのかもしれない」と、試合を終えて自分は思いました。

少し軽率だった失点。今後のプラス材料に

1失点目と3失点目は、ボランチがボールを持った時に、背後が見えていない、保証されていないまま前を向き、そこを相手に取られて結果的にはゴールまで持って行かれました。ボールを取られた選手に目が行きがちですが、見える側の選手の声がけや、サポートの位置ひとつで、もしかしたら解決できる問題だったのかもしれません。

奪われた後の周囲の選手の対応も、一発で行き過ぎていて、「今のチームなら別の対応ができていたんじゃないか」と。失点は誰かひとりのものではないし、全体的に少し軽率なものになってしまったように思います。

チームにとって痛かったこの2失点は開始直後と試合終了間際。入り方、終わり方の大切さと、気持ちの持って行き方がいかに大事なのかという教訓にもなりました。もっともっと個人もチームもたくましくなるために、今後のプラス材料に転換していかなければいけませんね。

いつもの狙いを上手く突けなかった

この試合は、熊本が配置も活かしつつ、新潟に対する準備を感じさせられました。前半で言えば、サイドバックがボールを持った時に、普段チームが狙おうとする背後やサイド際を上手く突けませんでした。そこから後ろに下げたり、横につなぐことで、相手に守備をしやすくさせてしまったかなと。

今までの試合に比べると、セカンドを回収する確率や、回収できないにしても不利な状況に陥ることが多かった。選手たちの距離感、ちょっとした位置取りの部分もあいまいだった反省もあります。

熊本が新潟の良さを消しにかかった

特に顕著だったのは試合の入りで、相手のウイングバックが、新潟のサイドバックにボールが入った時にジャストでマークに来ていました。そういう相手に対して自分だったら。たとえば最初は、わざと深く、センターバックとフラットなラインでボールを回しても良かったかもしれません。それでも食い付いて来たら、中に一度入れつつ、サイドバックを内側に侵入させたり。

そうやって進めつつ、相手が変化してきたら、今度は自分たちが狙うべき本来の場所を狙えるかもしれない。言うのは簡単ですが、プレーで表現するのは難しいんですよね(笑)。とはいえ、相対的には熊本が新潟の良さを消しにかかり、それが奏功していた部分はあると思います。

「ちょっとずつ」を修正していく

これは守備でも言えることでした。熊本の布陣は両ウイングバックが外に貼り、頂点には1枚のFW。中にはボランチ2枚とトップ下2枚が配置されていました。その中の4枚が上手く段差や角度を付けることで、新潟本来のストロングである、「正面からボールにアタックして、次の対応につなげていく」を出しづらくなりました。

これによって、時間を作れなくなったり、配置を狂わされ、ちょっとずつズレたままアタックしてしまい、前に入られる場面がありました。真ん中の選手が、この「ちょっとずつ」を修正したり、どちらからプレスに行くかを状況に応じて決めることができれば、新潟に守備のリズムをもたらすことができたのではないかと思います。

ふりだしに戻せたのは、新潟に力がある証明

ただ、失点をしてもズルズルと行かずに、しっかりと前半が終わるまでにスコアを「ふりだし」に戻せたのは、現在の新潟に力がある証明だと思いました。また、個人の能力で得点ができるのは、選手のクオリティーの高さもうかがえます。チームとして上手く進められないことはどんなシーズンでもありますが、個で試合をリセットできるのは大きいし、結果チームを楽にしてくれますよね。

カワくんのゴールは、「よくあんなシュートが入るな」と。変態シュートですね(笑)。「そこから撃ったら、そこには行かないだろうな」というものが、行ってしまうのがカワくんなんですよね…。

でも、普段からちょっと難しそうな、ゴール場面のようなシュートも、カワくんはチャレンジしているんですよね。そういう意味では日頃チャレンジしていることが、試合に活きているんじゃないかと思います。

カウエの得点から、改めて感じたこと

また、カウエのゴールで感じたこと。あの場面は、泰基が背後にボールを落とし、それを拾った達さんが、ペナルティエリア横の深い場所からクロス。そのこぼれ球をカウエが決めました。新潟の良さって、そういった背後を狙ってボールを拾うプレーだったり、相手エリアに侵入してチャンスを作ることなんですよね。改めて、それができると得点になるんだ、と感じた次第です。

相手の守備が4枚であっても、5枚であっても。もちろんサッカーは相手あってのスポーツですから、狙うまでの位置取りや、経路などは変わってくるかもしれません。でも、狙うべき場所や、相手に嫌がられる場所を突き続ける。そのことだけは忘れてはいけないと思います。

「自分たち以外」に振り回されすぎない

さて、冒頭にも述べましたが、この試合の入りから、熊本はスライディングや厳しく体を入れに来ました。そのひとつひとつに、「勝ちたい、負けられないんだ」という意志の強さを感じました。一方、レフェリーどうこうを言うわけではないですが、ジャッジに新潟は振り回されてしまいました。

自分たちの価値観、基準で進めて、それが何か食い違った時にアジャストできなかった。熊本はそれすらも上手く味方に付けて、勢いに乗せて試合を進めたように思います。

「ちょっとずつ」と言いましたが、自分たち以外の要因に振り回されすぎたのも、そうした差を生んだ原因ではないかと思います。繰り返し言っていますが、主張やアピールは大事。同時に、試合の基準で正しく冷静なプレーをすることも。なかなか勝利を得られず苦しんでいた頃の課題も、見えてしまったように思います。すぐに改善できる部分だと思いますので、意識したいですね。

最初から最後まで高い意識と熱い闘志を

僕たちは来年こそ、チームが目指しているJ1昇格に向かっていかなければなりません。そのためには、最初から最後まで、高い意識と熱い闘志を持って戦っていかなければ。他の要因で右往左往してはいけないし、自分たちの判断力をベースに進めていきたいですよね。

それは選手たちだけじゃない。最後の苦しい時にはサポーターの皆さんの応援が必要です。サポーターの皆さんにとっても、持久力が問われる、大切なシーズンになるのではないかと思います。ぜひ、チーム、クラブと一緒に前に進んでもらえたらと思います。

熱い闘志という点では、熊本戦後の選手たちは、本当に悔しそうにしていました。決して、「しょうがない」と思っていないし、チームで許されていない。そう思うことが許されないのは、勝つ集団、強い集団になってきている表れだと僕は思います。

やりたいことをやり、勝点3を

次節はアウェイ最終戦となる徳島ヴォルティス戦。徳島はここのところ苦しんでいますが、ボールを大切に握って攻撃をしてくるチームです。自分たちはズレを作らず、正しいポジションからプレーすることが重要ですし、熊本戦はいい教訓になると思います。

ホームで勝った時は、勝ちこそすれ、相手に支配をされたゲームでしたよね。今度は自分たちがやりたいことをやりながら、勝点3を取りに行く。そんなゲームを見たいと思います。みんなで応援しましょう!



ユニフォームパートナー